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15話 金失

「これが…」

 春風くんを途中で拾ってから三十分。僕らの目の前には巨大な山脈があり、そこにまるでダンジョンの入り口のような門があった。門番も四人体制で立っているので、ちょっと入りがたい雰囲気がある。

「ここがフィラデルディーヴォよ。ほら、ギルドカードを出して」

「ギルドカード…でありんすか?」

「あ、そうか忘れてた。春風くんってどの街にも行ってないんだよね?」

「あ~、まだどこも行ってないんでありんすよ…すいやせんね」

 仕方ないし、通行料を払うか。必要経費だと思えば少しは楽になる。


 街に入ると、かなりムシッとしていた。山の中にあるから空気があまり循環していないのと、鍛冶の蒸気があちこちで立ち上っているからだろう。

 ここで僕と春風くん、イアさんとかなでさんに分かれて別行動することになった。正直、武器を見たところで扱えるわけがない。だからこの選択は間違ってはいない。

「そういえば、花火ってどうしてあんなにカラフルなの?」

 フィラデルディーヴォを巡りながら、僕は春風くんに尋ねてみた。

「翫さんは『炎色反応』ってもんを知ってやすか?」

「なんだっけ…ああ、金属によって炎の色が変わるアレ?」

「大正解! 花火はあの反応をもろに活用してるんでさぁ」


・赤:ストロンチウムやリチウムの化合物

・青:銅の化合物

・黄:ナトリウムの化合物

・緑:バリウムの化合物

・紫:カリウムなど

・オレンジ:カルシウム


「なるほどねえ…ここ鉱山もすぐそこにあるみたいだから、もしかしたら現地調達できるかも?」

 遠くに大きな洞穴があり、ドワーフのような人たちがせわしなく出入りしていた。手には油がたっぷり入ったガラス容器があった。

「よくアルカリ金属が取るみてえでありんすね」

「え?」

「アルカリ金属は空気中の酸素や水分と触れるだけで爆発的に反応しちまうものが多々ありんす。鉄や銅はあんな量の油にドボンしちゃあ、逆に腐っていくもんなんでさぁ」

「へえ…」

 じゃあ逆に、ここは危険物がいっぱいだということだ。


———Change Viewpoint———


「ここよ」

 私はイアさん行きつけの工房に来ていた。そ、それなりにでかい。レンガ造りの建物からは熱気が伝わってきていた。

「こんにち——」

「バカヤロォ! 何回言やあ気が済むんだ!」

 扉を開けた瞬間、罵詈雑言が飛び出してきた。

 受付の前で、親方らしきドワーフが、まだ幼い少年を怒鳴りつけていた。日本だったらアウトな気がする。

「こんな柔いもんじゃダメなんだよ!」

 親方は地面にガラス容器を叩きつけた。中に入っていたのは金属の塊のようで、油が塗られているからかキラキラと輝いている。

「もっとマシなもん取ってこい! やり直しだ!」

「はい…!」

 少年はそのまま工房を飛び出していった。

「…おう、イアじゃねえか。すまんな、見苦しいところを見せた」

「別にいいのクエンチさん。気にしないわ。…さっきは何で怒ってたの?」

「これだよ」

 親方—クエンチさんはさっきの塊を手に取った。

「最近、質の良い鉄鉱石が手に入んなくてな…」

「そうなの? せっかくレイピアの製作依頼をしようと思っていたのに」

「いんや、予備で蓄えてある。それを使えば作れるぞ」

「そうなの? それなら…」

 イアさんとクエンチさんが商談しているのを横目に、私は塊を見ていた。

 この断面の輝き方、どこかで…。


———Change Viewpoint———


 春風くんが音を上げた。いよいよ暑さに耐えられなくなったらしい。

 僕らはフィラデルディーヴォを抜け出て、98で近くの湖まで移動した。木々が生い茂っていてマイナスイオンを感じる。

「あ~、生き返りんす~…」

 冷えた空気を循環させるためのフィンが動くと、春風くんも身体ごと移動する。扇風機か。

 その時、窓の外で小さな人影を見た。

「え、子供!?」

「そんな人影、見んせんでありんしたよ」

「…気のせいだったのかな」

「翫さん、寝てもようござりんすか?」

「いいよ。適当に簡易シート出して」

 僕も簡易シートを出して横になった。

 ああ、もう眠れてしまいs

パァァァァァンッ!!

「どひゃあっ!」

「うぇ!?」

 大きな音がして二人とも飛び起きた。眠気なんてどこか遠くへ行ってしまった。

 まさか、発砲? …イアさんの恋人がいる?

「…ちょっと様子見てみる?」

パァンッ!!

 また大きな音が聞こえた。

「見に行きんしょう」

 すぐに98をしまい、音がした方向へ走った。

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