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12話 僕に決闘をさせるとか正気の沙汰じゃない

———Change Viewpoint———


 初戦は私とタンクの男。確か、ザムと名乗っていたかしら?

「本当に入らないのか? しっかり可愛がってやるぞ?」

「結構よ。私には既に恋人がいるもの」

「恋人、あのガキか?」

 ザムは頭を抱えている翫を指さした。

「違うわ。私なんかよりも強い人よ」

 面倒ね...さっさと終わらせてしまおう。

「早速、いいかしら?」

 私はレイピアを引き抜き、ザムに剣先を向けた。

「へっ、こっちはバケモノの攻撃も防ぎ切ってんだ。お前みたいな小娘に...」

ザクッ

「小娘に、その後に続く言葉は?」

 私はザムの足を払って転ばせた。今も自信たっぷりな表情をしている彼の顔に狙ってレイピアを投げ飛ばした。

 もちろん、手加減はしてるわよ。レイピアは右頬を掠めて地面に突き刺さっているもの。

「次はないわよ?」

 声を低くして伝えると、ザムは縮み上がってしまった。

 ...まだまだね。コイツも、私も。


———Change Viewpoint———


 次は私と魔法使いのクレドアさんの番。イアさんはあっという間に終わらせてしまったけど、私にも出来るかな?

「お嬢さん、棄権するなら今のうちですよ?」

 クレドアさんは優しく微笑んだ。正直言って気味が悪かった。だって。

「うわ~、偽善者がする笑顔だ…」

「…え?」

「私、嫌いなんですよね。そうやって表面は良い人でも中がどす黒い人。政治家ですか」

「ち、違います! 私は———」

「なら、私の質問に答えてください。あなたの友人が物事で大成功した場合、どうしますか?」

「それはもう『おめでとう』と伝えます。ただ…」

 クレドアさんは最後に余計な一言を付け加えた。

「運が良かっただけだと思いますけどね」

「24()

 あまりにも性格が悪すぎるセリフを吐いていたので、思わず24分トリルを放った。4発も発射した結果、最後の一つだけ被弾していた。軽い音を出してノーツが砕け散る。

「さ~て、とことんやっちゃいますか。BPMは~…257、およそ3分。あなたは捌けますか?」

 私は有無を言わせずに赤いノーツを発射していく。たまにロングや上げ下げ、空中維持なども盛り込んだ。

「は、早い…!」

 向こうも水の魔法で対抗してくる。でも、生成スピードが追いつけていない。BPM257はやりすぎかな…いや、これくらいはしないと私の気が済まない。

「ここ難関! ドラムロール通りにトリルしましょう!」

 この譜面を作った人に愚痴を言ってやりたい。

「グッ…きゃあ!」

 ノーツの勢いに負けて、クレドアさんが尻もちをついた。

「こ、降参です…」

「え~、まだ半分残ってますけど。リズムゲーマーとしては、最後まできっちりプレイしてもらいたいんですけど」

「む、無理です! あんなに早く見たこともない魔法を放つなんて…あなたは化けの皮を被っているのですか!?」

「え~っと…どちらかと言えば『化けの花』かな?」


———Change Viewpoint———


 あの二人は気にしていないだろうけど、僕らの周りには様子を見に来た野次馬たちが群がっている。多くの人の目がある中で…。

「あの二人は負けてしまったけど、ここで俺が勝てば、俺がここで勝てば! お前たちを勧誘できる!」

 パーティーリーダーのホウルド…だったかな?が訳の分からないことを言っていた。後付けのルールなんて卑怯だ。

「相手は弱そうなガキ一人。勝てるぞ!」

 と、ホウルドは腰に提げていた剣を向けてきた。

 …え、真剣? 斬られたらスパッとされる?

「エ、チョ、チョットマッテクダサイッ!」

「行くぞおおおっ!」

「ドゥワァ!!」

 僕は全力で左に飛んだ。今まで立っていた地面に真剣が突き刺さる。

「こっちはただの一般人ですから!」

「関係ねえ!」

 そんな簡単に意見をぶっ飛ばさないで…。

「そ、そうだ、98なら」

「そこっ!」

「ヌオワァ!」

 いきなり右に逸れたせいで、ポケットから取り出した98を落としてしまった。

 これ勧誘する意思ないでしょ!

「さあ、降参するか?」

「あ、あの、98の前に立たない方がいいですよ」

「何わけの分からんことを言ってる」

「それはお互い様ですがな!」

 ここで僕は気が付いた。今、ホウルドの背後で98が元のサイズに戻っていた。けれどそれに気付いていない。

 これはチャンスなんじゃないかな?

「…後ろを見てくださいよ」

「は、後ろ?」

 ホウルドは大人しく後ろを振り返った。

 ちょうどそこには、98のHIDヘッドライトがあった。

パッ!

「ぐわあああっっ! 目が…目がぁぁぁぁぁ!」

 HIDの強みである『明るさ』がこんな形で役に立つとは…。そして追い打ちと言わんばかりに98は…

フィイイイイ!!

「耳がぁぁぁぁぁ!!」

 警笛まで鳴らしていた。至近距離は耳に悪いゾ。僕はなんとなく予感はしていたから耳を塞いでいた。

 ホウルドは地面をのたうち回り、完全に戦闘不能な状態となっていた。

「じ、じゃあ僕らの勝ちってことで」

「お疲れさまでした~」

「二度と顔を見せないことね。…約束を破ったら容赦しないんだから」

 僕らはエストレラスのメンバーを置いて98に乗り込んだ。野次馬たちはそのうち去っていくだろうし放置でいいや。

 あ~、主電動機の音で癒されるぅ~。

 か、課題が多い…。

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