10話 忙しい一日の終わり
夕方になると、広場に屋台が出始めるようになった。イアさん曰く、この新世界では自炊は滅多にしないらしい。
「みんな、お金を払ってでも美味しいものが食べたいのよ」
そういう考えは日本にもある。高級すし店だとか焼肉だとか。
「これだけの金貨があれば、全部巡れそうですね」
「え、食べ切れるの?」
「なんとかなりますよ!」
かなでさんは鉄の胃袋をお持ちなようで…念のために、後で98のお手洗いを確認しておくか。あとエチケット袋も。
「なんでこうなるかな…」
「きっと、楽しくて疲れちゃったのよ」
僕は眠っているかなでさんを背負っていた。最後の屋台を巡って食べ終えた途端、糸が切れたように眠ってしまった。急に意識がなくなるものだから心配したよ。
「…My醤油ペイペイ二元論」
う~ん、言ってみても空回り。
「何それ?」
「空耳」
今晩は冒険者協会が運営している宿に泊まることとなった。しっかり二部屋空いていて、一つはイアさんとかなでさんが、もう一つは僕だけが部屋で過ごす。
「じゃあ、かなでさんのことよろしくね」
イアさんたちの部屋の前で、僕はかなでさんを背中から降ろした。
「はいはい。全く、世話が焼けるわね」
「でもまんざらでもなさそうに見えるけど?」
「…うるさい。おやすみ」
「……おやすみ」
イアさんたちが部屋に入ったのを確認して、僕は自分の部屋へ向かった。
部屋には必要最低限の家具とベッド、そして窓が二つあった。かなり質素な内装だ。
「こういうのでいいんだよ。豪華すぎるのは使うのを躊躇ってしまうし…」
前に出張で東京に行ったときとかそうだった。…そうか、あの時初めて人の姿になったミズハと会ったんだ。
もう、一年も前のこと…時間の流れは早いなあ。
…ふと、夜空を眺めたくなった。
「…月、別名『回る空うさぎ』。こっちだと神々しいなあ」
月は太陽の光を反射して輝いている。あれだけ眩しいということは、太陽の光を多く反射してるんだなあ。
「ミズハたちも同じ空を眺めているのかな…そうだ」
僕はポケットから98を取り出した。
「大きすぎないサイズ…40×50ぐらいに大きくなって」
そう言うと、98は想定通りのサイズに大きくなった。ちゃんと単位は『ミリメートル』で伝わったようだ。
「新世界に来てよかったと思えるのは、こうやって98と一緒に旅をできることなんだよね。線路に縛られず、思うままに移動できる。たまに無茶する…いや、もうしてるよね。そんなことが続くかもしれないけど、それでも一緒にいてくれる?」
【ma\y】
「…ありがと」
なんか、僕の心が通じた気がした。気のせいだろうけど。
ずっと更新されないままの楽曲一覧。
今更かもしれませんが、僕はあなたの曲を絶対に忘れません。
人生が終わったら、赤色のペンでペケをつけてもらえますか? どんなに鋭くたって構いませんよ。




