9話 報酬系
先に言っておこう。僕の心配は杞憂に終わった。
「すみません! 今時間がある方はいらっしゃいますか!」
冒険者協会に着くなり、僕は叫んだ。
「ど、どうかされましたか?」
「その、バカでかい熊が現れて———」
そう言った瞬間、バン!とカウンター奥の扉が勢いよく開いた。
「お前ら! 今回こそアイツを倒すときだ! ボケっとせずに準備しろ!」
筋肉モリモリな男性の声掛けで、協会内の空気は一変した。
今から受けようとしていた依頼はそっちのけで、我先にと中から出ていこうとしている。
「で、場所は?」
「と、とりあえずこれに乗ってください。案内します」
「皆さんこちらのステップからご乗車くださ~い」
かなでさんが作ったタップの階段で、様々な冒険者たちが98に乗車していく。ほんと助かる。
「マジかよ…」
「俺が先に討伐してやるはずだったのに!!」
さっきの場所まで98を走らせると、背後からそんな声が聞こえてきた。
ちなみに今、冒険者たちは全員クハ側に乗車している。なのでクモハ側に誰もいないという状態になっている。普段ならそんなこと滅多にない。
「意外と早かったわね」
「全速力で走らせた…飛ばしたからだよ」
「でも、これだけの人手なら解体もすぐに済みそうね」
「やっぱり解体すの?」
「ええ、持ち運べるサイズの魔物なら協会に持ち込むの。アレみたいな大きな魔物は現地で解体するけれど」
「報酬ってどれくらいなんですかね?」
「多からず少なからず、ってところかしらね」
「それなら資金は大丈夫でしょう」
新世界で金欠とか嫌だよ…。
そんなことを思っていると、ガッチリと肩を掴まれた。
「アレジェリータに戻ったら話がある」
さっきの筋肉モリモリな男性だった。近いです怖いです。
「俺はヴェルファード。冒険者協会アレジェリータ支部の局長をしている」
アレジェリータに着くと、僕たち三人は冒険者協会の事務室に通された。
「早速なんだが…誰がトドメを刺したんだ?」
ザッ、と僕の両隣に立っていたかなでさんとイアさんが動いた気がした。見てみると、二人は後ろに後ずさっていた。
これあれか。『やりたい人は前に出て』って言われると自分たちは下がってやり過ごす手口か。
「お前か?」
「…自覚はないんですけどね」
まあ、二人は頑張ってくれたんだしから尻拭いくらいはやらないと。
ヴェルファードさんは僕が書いた冒険者登録の書類を眺めた。
「…魔道具を武器として使うのか。それでやったのか?」
「多分そうです。自分でも効果が分からないんですが…」
「なるほどな。先に礼を言っておこう。助かった」
ヴェルファードさんが語ったのは次のようなことだった。
・オフェルツァソ(あの黒熊の名前)はノーザンの森に住み着いた。
↓
・大けがをするブロンズ冒険者が増加した。
↓
・討伐をしようとしたが、一回だけ交戦したっきり現れなかった
↓
・討伐の目途が立たず、頭を抱えていた
「そうだったんですね…」
「ああ、これでブロンズ冒険者が大けがをして帰ってくることはなくなるはずだ」
「治療費はかなり高額なんですか?」
「一年分の生活費が吹っ飛んでいくことになるな」
/(^o^)\ナンテコッタイ
「ああ、治療費で思い出した。今回の報酬なんだが…」
お、かなでさんが気にしていた報酬の件だ。
「コレクションの報酬は金貨1枚、オフェルツァソのハンチングが金貨2,567枚、合計で金貨2,568枚だ」
「そ、そんなに!?」
金貨の枚数に反応したのはかなでさんではなくイアさんだった。
「イアさん、どうしたんですか?」
「普段ならもっと少ないのよ。金貨160枚くらいが妥当なのに」
「…あ~、それなんだが。とある貴族様が懸賞金を出しててな。その分が積もってこの枚数だ」
「そ、そうなのね。ごめんなさい、取り乱してしまったわ」
「で、どうする? この枚数だ、自分で持っておくのは大変だろう?」
「…預けることってできますか?」
例えば銀行みたいに。
「当たり前だ。どこにそんな大金を持ち歩くバカがいるんだ?」
じゃあなんでその質問したんですか。
「なら、預けることにします。手持ちで…いくらぐらいあればいいの?」
「そうね…金貨10枚さえあればなんとかなるはずよ」
「…だそうなので、金貨10枚以外は預金する形でお願いします」
「分かった。引き出すときはカウンターでしてくれ」
そうして、ヴェルファードさんとの面談は終わった。
終始、圧が凄かった。歴戦の冒険者だったんだろうな…。
<硬貨>
この新世界にも貨幣はある。
・鉄貨
・銅貨
・銀貨
・金貨
・大金貨
この五種類だ。
市場や服の値段を見ていると、銅貨1枚は1,000円、金貨1枚は10,000円ぐらいだと思う。あくまで推測だけど。
となると、今日だけで25,680,000円(四捨五入で2,600万円)分は稼いだことになる。
521系の製造費と比べるとまだまだナンデスワ。




