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寿命を喰って進化する最弱モンスターに転生した俺、気づけば最強の捕食者になっていた  作者: トウザキ


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第2話 初めての捕食

目の前には、巨大な捕食者。


低く唸る声。地面を踏みしめるたびに伝わる振動。

視線が合った瞬間、本能が理解する。


――勝てない。


距離は近い。逃げ場もない。

ほんの一瞬の遅れで、命が終わる位置だ。


それでも――


「……落ち着け」


自分でも不思議なくらい、思考は澄んでいた。


恐怖で固まるどころか、状況を整理している。


正面から戦っても無理。

なら、生き延びるにはどうするか。


答えは一つしかない。


「時間を稼ぐ」


地面を蹴る。


横へ、大きく跳んだ。


直後、さっきまでいた場所を巨大な爪が抉る。


(速い……!)


だが、見えないわけじゃない。


完全ではないが、“避ける”ことはできる。


そのまま森の奥へ走り出す。


木々の間を縫うように、全力で。


背後から重い足音が迫る。


振り切れない。


(このままじゃ、いずれ追いつかれる)


思考を回す。


逃げ続けても意味がない。

戦えば終わる。


なら――


視界の端に、小さく動く影が入る。


草むらの奥。

自分と同程度の大きさの獣が、こちらに気づいて身構えていた。


粗い毛並み。剥き出しの牙。

敵意は明確だが、さっきの相手ほどの圧はない。


(あれなら――間に合う)


進路をわずかに変える。


背後の捕食者を引き連れたまま、その獣へ一直線に突っ込む。


「ガァッ!?」


獣が驚き、体勢を崩す。


その隙を逃さず距離を詰める。


爪を振るう。


手応えは浅い。だが、体勢は崩れた。


(硬い……! でも――)


背後の気配が、すぐそこまで迫っている。


時間がない。


獣が反撃に牙を向けるより早く、首元へ噛みついた。


「ギャッ――!」


暴れる体を押さえ込み、力任せに締め上げる。


数秒後、抵抗が止まった。


その瞬間、頭の中に新しい表示が浮かび上がる。


【捕食が可能です】


「……これだ」


意味は分からない。


だが、直感で理解できる。


――今なら、取り込める。


背後の気配がさらに近づく。


迷っている時間はない。


「やるしかない……!」


倒れた獣に食らいつく。


その瞬間――


体の奥に、熱が流れ込んできた。


「っ……!?」


ただの捕食じゃない。


何かが、混ざる。


筋肉の使い方。踏み込みの感覚。

瞬間的に力を引き出す“動き”。


それが、一気に流れ込んでくる。


捕食適応アクセルを獲得】


短時間、身体能力を大幅に引き上げることができます


【寿命がわずかに回復しました】


視界の端の数字が変わる。


【残り寿命:336日】


「増えた……?」


わずかだが、確実に。


減るだけだった寿命が戻っている。


つまり――


「食えば、生き延びられる」


その理解が、恐怖を押し流した。


振り返る。


巨大な捕食者が、目前まで迫っていた。


だが、さっきとは違う。


体の奥に、新しい“力”がある。


「……試すしかないな」


地面を強く蹴る。


同時に、意識を集中させる。


――使う。


次の瞬間。


体が弾けたように動いた。


視界が流れる。

音が遠ざかる。


迫っていた爪が、はっきり見える。


(遅い……)


ギリギリまで引きつける。


そして、横へ跳ぶ。


爪が空を裂いた。


そのまま死角へ回り込み、爪を叩き込む。


だが――


(浅い……!)


分厚い皮膚に阻まれる。


ダメージはほとんど通っていない。


それでも構わない。


目的は倒すことじゃない。


「避け続ける……!」


距離を取る。


その瞬間、全身から力が抜けた。


膝が崩れそうになる。


(これ、長くは使えない……!)


再び捕食者が突っ込んでくる。


今度はさらに速い。


怒りで動きが荒くなっている。


「……っ!」


再度スキルを使おうとする。


だが、感覚が鈍い。


まだ戻っていない。


(連続では使えないか……)


なら――


「使える瞬間だけでいい」


木々の間を縫い、地形を利用して回避する。


幹を盾にする。

足場を変える。

無駄な動きを削る。


時間を稼ぐ。


そして――


(今だ)


スキルの感覚が戻る。


わずかだが、確実に。


捕食者が跳び上がる。


上からの押し潰し。


逃げ場はない。


「ここだ」


再び、瞬発強化。


世界が引き延ばされる。


迫る巨体。その軌道。


その“内側”へ踏み込む。


すれ違いざま、喉元へ爪を叩き込む。


浅い。だが狙い通り。


体勢を崩させ、そのまま転がるように離脱する。


背後で、激突音。


捕食者が勢いを殺しきれず、地面に叩きつけられた。


「はぁ……っ、はぁ……っ……」


息が荒れる。


体は限界に近い。


それでも――


「……生きてるな」


立っている。


それだけで十分だった。


捕食者がゆっくりと起き上がる。


まだ終わっていない。


だが、最初とは違う。


「勝てはしない……でも」


目を逸らさない。


「死なないことはできる」


森の奥へ駆け出す。


今度は、距離を取るために。


背後から咆哮が響いた。

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