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寿命を喰って進化する最弱モンスターに転生した俺、気づけば最強の捕食者になっていた  作者: トウザキ


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第1話 寿命を喰らう進化

――俺の寿命は、あと一年もないらしい。


【残り寿命:362日】


「は……?」


視界の端に浮かぶ数字を見て、思わず息を呑む。


いや、待て。

そもそも俺は――こんな場所にいたはずがない。


湿った土の匂い。薄暗い森。

こんな場所、知っているはずがない。


確か昨日まで、俺は――


「……あれ?」


思考が引っかかる。


会社に行っていた。

それは確かに覚えている。


理不尽な上司。終わらない仕事。

どうでもいい日常。


それなのに、それ以外が妙に曖昧だった。


顔が浮かばない。

名前もうまく思い出せない。


「なんだこれ……」


嫌な汗が滲む。


そして、その違和感以上に異常なのが――


「……小さすぎるだろ、俺」


水たまりに映った自分の姿だった。


丸い体。黒い皮膚。まともな手足もない。

どう見ても、雑魚モンスターだ。


「スライム以下じゃねぇか……」


現実逃避気味に呟きながらも、頭は妙に冷静だった。


いや、違う。

冷静すぎる。


普通なら、もっと混乱しているはずだ。

それなのに俺は、状況を受け入れている。


まるで――


「……こういうのに慣れてるみたいだな」


自分で言って、背筋が冷えた。


そのとき、頭の中に表示が浮かび上がる。


【固有スキル:《進化》】


・任意で進化可能

・進化には寿命を消費する


「寿命を消費……ふざけてるだろ」


思わず吐き捨てる。


普通は逆だ。

強くなるほど、生き延びるはずだ。


だがこれは違う。


強くなるほど、死に近づく。


視界の端の数字が、やけに現実味を帯びていた。


【残り寿命:362日】


「詰んでるじゃねぇか……」


呟きながら、周囲に目を向ける。


草むらが揺れ、遠くで何かが吠えている。

ここは明らかに、弱いものから死ぬ世界だった。


何もしなければどうなるかは、考えるまでもない。


「……一年も持たずに食われて終わり、か」


だったら――選択肢は一つだ。


【進化先候補】


・小型魔獣(消費寿命:30日)

・毒性スライム(消費寿命:45日)

・影潜み(消費寿命:60日)


「なるほどな……」


命を削って、可能性を買う。


外れを引けば、そのまま終わり。

当たりを引けば、生き延びる。


「クソみたいな仕様だな」


そう呟きながらも、口元がわずかに歪む。


嫌いじゃない、と思っている自分がいた。


理由は分からない。

それでも、この理不尽さに妙な納得があった。


まるで――最初から、この世界にいたかのように。


「……いや、そんなわけあるか」


小さく首を振り、思考を切り替える。


どうせ、このままでは死ぬ。

ならば――


「進化する」


【進化を開始しますか?】


→ YES


次の瞬間、全身に激痛が走った。


「あああああああっ!!」


骨が軋み、肉が引き裂かれる。

存在そのものが作り替えられていく感覚だった。


意識が何度も途切れかける。


やがて痛みが引いたとき、周囲は静まり返っていた。


ゆっくりと目を開く。


視界が高い。

体が軽い。

鋭い牙がある。


「……成功、か?」


そう呟いた直後、背後に気配を感じた。


反射的に振り向く。


そこにいたのは、巨大な捕食者だった。


牙と爪を備えた、明らかな上位存在。


(まずい)


そう理解したときには、すでに間合いに入られていた。


逃げ場はない。


だが、その瞬間――


【進化により新スキルを獲得】


《捕食適応》


「……は?」


思考が一瞬だけ止まり、すぐに回り始める。


状況は最悪だ。

それでも、不思議と恐怖はなかった。


むしろ――


「いいじゃねぇか」


この世界は単純だ。


強いものが生き、弱いものが死ぬ。


それだけの話だ。


ならば――


「全部、喰えばいい」


視界の端で、寿命の数字が静かに減少した。


【残り寿命:332日】


どうやら俺は、


命を削って生き延びる側になったらしい。

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