第16話:最初の聞き取り
ブタの貯金箱を抱きしめる少女。
その必死な瞳と、櫂さんの冷徹な
商売人としての横顔。
居たたまれなくなった私が、
何か言葉をかけようとした時だった。
「――紬さん。出番ですよ」
「えっ? 私?」
櫂さんはスッと立ち上がると、
私にカウンターの席を譲った。
「お客様の本当の望みを聞き出す。
それが君の仕事だと、
お話ししたはずですが」
「……あ」
採用された時に提示された、
二つの役割。
『人の心』への歩み寄りと、
『善悪』の判断。
私は、震える少女の前に座った。
櫂さんは一歩下がり、
静かな目で見守っている。
「……お嬢さん、お名前は?」
「……ゆい。一年生です」
結衣ちゃんと名乗った彼女は、
なおも貯金箱を強く抱きしめている。
私は、彼女の手を優しく包んだ。
「結衣ちゃん。お母さんは、
どんなふうに具合が悪いの?
……魔法で治すには、
詳しく知る必要があるんだよ」
私がそう言うと、結衣ちゃんは
ポツリポツリと話し始めた。
お母さんが最近ずっと寝ていること。
お医者さんが難しい顔をしていること。
そして、自分ができることは、
この貯金箱を魔法に変えることだけ。
「……私が、いい子じゃなかったから。
お母さん、病気になっちゃったの」
そのあまりに純粋で、
あまりに切ない思い込みに、
私の胸が締め付けられた。
私は櫂さんを振り返った。
彼は何も言わず、
「続けなさい」と目で促してくる。
この子にとって、本当に必要な
「場所」は、一体どこにあるのか。
私は、自分の指に光る
二スロットの指輪を握りしめた。




