表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロカシオン・マギ  作者: じょん-ドゥ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/24

第10話:変生の檻

 眩い光が収まったあと、

 私は恐る恐る目を開けた。

 そこには、私を囲んでいた

 あの怖い男たちの姿は、

 一人として残っていなかった。


「……え? みんなどこに……?」


 呆然とする私に、櫂さんは

 いつものさわやかな微笑みを浮かべ、

 ゆっくりと歩み寄ってきた。

 彼は膝をつくと、

 私の手首を縛る縄を、

 魔法でさらりと解いてくれた。


「大丈夫ですか、紬さん。

 怖い思いをさせてしまいましたね」


「櫂さん……なにが、どうなったの?

 あの人たちは……?」


 私の問いに、櫂さんは

 何も言わず、静かに床を指さした。

 冷たいコンクリートの上、

 先ほどまで男が立っていた場所に、

 小さな何かがうごめいている。


「……え、これって……」


 よく見ると、それは数匹の虫だった。

 甲虫のような、名もなき黒い虫たちが、

 力なく足を動かしている。


「きゃっ、虫……!? なんで!?」


「彼らには、少しの間だけ

 虫になってもらいました。

 言葉の通じない獣よりも、

 今の彼らにはお似合いの姿ですよ」


 櫂さんは平然と、

 まるで汚れ物を片付けた後のような

 清々しい口調で言った。


「……えっ、じゃあ、これが……あの人たち?」


「ええ。十分に反省ができれば、

 いずれ元に戻るでしょう。

 もっとも、虫の脳みそで反省ができるか、

 私にはわかりませんが」


 櫂さんは立ち上がり、

 私の肩を優しく抱き寄せた。

 その手の温もりとは対照的に、

 彼の言葉からは、

 やはり恐ろしいほどの欠落が透けて見えた。


「さあ、帰りましょう。

 新しいハーブティが、

 お店で待っていますよ」


 私は、足元で蠢く虫たちを

 踏まないように気をつけながら、

 櫂さんに支えられて倉庫を出た。

 中途半端な街の、静かな夜。

 魔法は救いにも、地獄にもなる。

 その真実を噛み締めながら、

 私は彼の隣を歩き続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ