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女性が少ない世界でVTuberやります!  作者: ブル(犬川)


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閑話 しつこい女 〜エドヴィン〜



「あら、エドヴィンじゃない!」



買い物の帰りに1人で女子寮のホールを歩いていると厄介な女に出会ってしまった。

時々こうやって花美がいないときに声をかけてくる女がいる。

足元まである青いストレートヘアに白い肌に真っ赤な唇、胸や足を露出した紫のマーメイドドレスはよく見れば透けている。

7人程の男を連れているその女が声をかけてきたせいで、連れの男達から睨まれる。中にはニヤニヤと嗤っている者やジトッとした薄気味悪い視線を向けてくる者もいる。

不快で歪みそうになる顔を何とか無表情で保ち、目も合わせず歩く。



「貴方を私の夫にしてあげるわよ」

「結構です」

「遠慮しなくていいのよ。貴方みたいな優秀な男なら私の夫に相応しいわ」



早歩きで簡潔に答えるが女性はついてくる。断られているというのに全く気にしていない図太い女だ。

足を止めたり歩調に合わせてやると男達が道を塞いでくるから絶対に足を止めない。

そうやって道を塞いで邪魔し、すぐにこちらの腕に自分の腕を絡めようとしてくるのも気持ち悪い。

男共も睨みつけてくるなら止めろ!こっちが睨みつければ怯えてすぐ退くくせに腹が立つ。

この女は俺やアーヴァを見付けるとしつこく言い寄ってくるから気持ち悪い。

大和は全く言い寄られていないことから外国人ということで興味を引いたのかと最初は思った。

だが、他にも外国人を連れている者はいるがそちらには声をかけていない。

そのことから俺達が花美の父親の厳しい試験にパスしたと知って狙ってるんだと気付いた。

女性はVTuberになど興味ないだろうからどこかの男から聞いたのだろう。全く余計なことをしてくれた。

睨みつけてくる者が教えるとは思えないから、さっきから嗤っているこのガラの悪い男が伝えたんだろう。

優秀な男が欲しくなるのは女の性だからな。しつこくて嫌になる。

しかし、アーヴァは髭を生やしてから話しかけられなくなって羨ましい。

俺も伸ばそうかなと思ってしまう。それくらい気持ち悪い女だ。



「あんな女つまらないでしょう?セックスもさせてくれないのよね?

 私ならいつでも相手をしてあげるわよ」



媚びた目でねっとりと見詰められ鳥肌が立つ。

女は性交する前と後では大分性格が変わる。特に性交したばかりだと快楽に溺れ猿のように盛っている。

俺も身に覚えがありあまり人のことは言えないが……この女もその類だろう。



「性欲の塊の貴女と一緒にしないでくれますか?」



冷めた目で嘲笑を含んで言えば取り巻き達が殺気立つ。

お前らがいくら殺気立っても怖くも何ともないんだよ。だが一番腹が立つのはこの女だ。

「面白い冗談ね」と。こちらは本気で言ってるのに理解しない。

本当に女という生き物にはうんざりする。まともなのは花美だけ……いや、彼女の友人もまともではあるかと考えを改めた。

花美がセックスを知って快楽に溺れてくれたらどれほど幸せか、考えるだけでゾクゾクするがその他から向けられる性欲は気持ち悪いだけだ。

昔は言い寄って来る女と適度に遊んでいたのに、随分と変わったものだと自分でも驚く。

今は本当に花美以外には一切興味が湧かない。欲しいのは彼女だけだ。


「あんな女より私の方がいいのに」


そんな声を背後に階段を登る。

大して運動してない女は俺達の早歩きについて来れないからな。特に階段は。









「お帰りなさいエドヴィン!」

「ただいま戻りました」

「おかえり、パァパ!」



部屋に着くとリビングで勉強していた花美は顔を上げ声をかけてくれる。

その笑顔を見るだけで身体中から幸せが溢れて、自然とこちらも笑顔で返していた。

フリッツが走り寄って来たので抱き上げてやると嬉しそうにキャッキャッと笑う。

それを花美も嬉しそうに見守ってくれる。

愛想がない。嫌味を言うときくらいしか笑わない男と言われてきたのに、今ではまるで別人だと自分でも思う。

父を亡くしてからようやく取り戻せたフリードリヒ(我が子)という肉親。

そして初めて知った人を愛する気持ち。

2人は俺にとって何よりも大切でかけがえのない存在だ。

花美は当たり前に勉強を中断して俺を出迎えてくれ、買ってきた物を冷蔵庫にしまうのも手伝ってくれる。フリッツも一緒に。

本当に、ここには俺が子供の頃に夢想した全ての幸せが揃っている。



「こいつさっきから俺達のこと全く視界に入れないぜ?」

「花美との新婚生活もうそうして喜んでる。気持ち分かる」

「ふぇっ!? 新婚生活!?」



横からの無粋な声を無視していたが、花美が反応してしまう。

顔を真っ赤にして慌てているのは可愛いが、3人だけの幸せな空間を壊されつい睨みつけてしまう。



「止めろその目!めちゃくちゃ怖ぇ〜んだから!」

「人殺しの目!」



腕を擦って怯えアピールしてくる大和もムカつくが、楽しそうに人殺しの目などと失礼なことを言ってくるアーヴァもまたムカつく。

けど、なぜかこの2人も含めた5人での生活は悪くないと思える。

普通ディアナ(元妻)の所のように、女性周りはギスギスしているものだ。

夫達は夫になる前もなってからもライバルでしかない。そのはずなのに、花美の所には一切それがない。

むしろ2人は俺の様子から女に絡まれたんだろうと察して心配の目を向けてきたからな。

こうやって何かあれば当たり前に心配してくれるし、落ち込んでいれば励ましてくれる。

それが何だかむず痒く嬉しい。本人達には拷問されても言わないが。

それは偶然なのか花美だからこそなのか。

俺には後者だとしか思えない。



「花美」

「ん?何?」

「愛してます」

「!!!」



声をかければ当たり前に作業を止め顔を見てくれて、愛を囁やけば真っ赤になって狼狽える。

なんで花美はこんなにも可愛いのだろう。

横から「あっ、抜け駆け!」「私も愛してます!」と叫んでる大和とアーヴァは無視だ。

というかアーヴァの言葉に一層花美は顔を赤くさせる。

大和は兄妹ということで全く花美に男として見られてないことに同情するが、アーヴァに対しての花美は好感度が高い。

2人の気質が穏やかで他者を思い遣る人間性が似ているからかと思うが嫉妬はする。

そんな気持ちでアーヴァを見ていたが



「ぼくも!花美あい、してりゅ!」

「!! ありがとうフリッツ!」



フリッツが愛の言葉を言うと、先程まで真っ赤になって俺達を意識していたはずの花美は一瞬でフリッツに全てを持っていかれた。

口を手で押さえフリッツをギュッと抱き締めた。嬉しそうにフリッツは笑っている。

それを俺達はめちゃくちゃ羨ましいと思うが、子供相手に嫉妬丸出しにするわけにもいかずモヤモヤ見詰めるだけしかできない。



ピンポーン



チャイムが鳴り「私見てくる!」とアーヴァが玄関に向かうと、すぐに賑やかな団体が入ってきた。


「お母さん!」

「マリアちゃん!」


すぐに花美は来た人物を出迎え、マリアは花美に抱き着く。

そんな珍しい女性同士の仲良さそうな様子に俺達は癒される。


「マリアおねちゃ!」

「フリッツ!」


それからマリアはフリッツを抱き締め「おねちゃだよ〜!」と抱き締め合い2人でキャッキャッしている。

本当に、こんな光景はここでしか見られないだろう。

最近マリアの夫候補になった者達はこの光景を見て驚いている。

それはそうだろう。普通小さな子供に女性は近付かせない。子供が女性に何かしてしまう危険があるからな。

こんな非常式な光景ありえないよなと笑ってしまう。

フリッツはここで非常に珍しい体験をしている。

普通小さな子供は女性と引き離されるのに、フリッツは3人の女性から可愛がられるという貴重な経験をしている。

それがどれだけ贅沢で奇跡みたいなことか、当人は何も分かっていないだろう。

いつか自分の周りの女性が特別なんだと知ったらどう思うかな?

そんなことを考えていると、フリッツがこれから先恋ができるのか不安になってくる。

だって彼女らが特別なだけで普通の女性は醜いものだから。

まぁ、今から心配しても早すぎる。なるようになるだろう。








■□■□■□■□■□■□








「またあの女だろ?」

「ああ」



夜部屋で大和から話しかけられた。議題はやはりあの女についてだ。



「あの女しつこいよな〜。いい噂聞かないし関わりたくないんだけどな」

「やはり俺もヒゲを伸ばすべきか…」

「やめろ!花美の男趣味が疑われる!」



ヒゲを生やせば間違いなく声をかけて来なくなるが、花美の男の趣味が疑われどんな誹謗中傷を受けるか分からない。

彼女が辛い思いをするのは避けたい。

ヒゲ男好きの女なんて言われても花美は気にしないかもしれないが、愛した人がバカにされるなんて俺達が嫌だ。

花美に悪意を向けられるなんて容認できない。

もし我慢できず花美の悪口を言う女を殺してしまったりしたら花美が命令したなんて言われかねない。

絶対に我慢しなければ。

そう、バレなければいいかもなんて魔が差してはいけない。



「ごめんね」

「お前は悪くない」

「そうだよ、お前は何にも悪くない!気にすんな!」



頭を下げてきたアーヴァに気にしないよう言う。

アーヴァも自分がヒゲを伸ばしたことで花美を悪く言う者がいて、やはりヒゲを剃るかと悩んだ時期がある。

それでも花美は「そんなの気にしなくていいよ!」「ヒゲ剃ったらそいつらに負けたみたいじゃん!むしろもっと伸ばしちゃえ!」と笑っていた。

あの優しさに、明るさに俺達は救われるんだ。



「花美が好きすぎて怖い。毎日好きがあふれて、止まらない。好き好き毎日それでいっぱい、なる」

「あ〜〜分かるわ。毎日好きで好きで頭おかしくなりそう」

「そうだな。好き過ぎて怖いなんて感情知らなかった」



俺達は御園姫子について話していたのに、気付けば花美の話題に移っていた。

頭が花美のことでいっぱいだったんだ。

本当は、もっときちんと話し合うべきだったのに。



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