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女性が少ない世界でVTuberやります!  作者: ブル(犬川)


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閑話 とある夫の内心



私が23歳のときだっただろうか。

何気なく点けたテレビで歌い踊る女性に目を奪われたのは。

女性としては短めな顎で切り揃えられた情熱的な赤い髪、意思の強そうな青空の目。

笑顔で歌う彼女は眩しかった。

三浦由麻(みうらゆま)という日本で数少ない本物の女性アイドル。

18歳という若さで本物の女性としてデビューした新人アイドル。

瞬く間に人気者になった彼女を仕事で忙しかった私は知らなかった。

まだデビューしてから2ヶ月程だが知らなかった期間を後悔するほど彼女に夢中になり、CDやBlu-ray彼女の出演した雑誌やテレビ番組など集められる限り全て集めた。

そして私は彼女に交際を申し込んだ。

一大スターの彼女には大勢の男が求婚しているから、選ばれる可能性は低い。

それでも諦める気にはなれなかった。



「これからよろしく春樹」

「よっ、よろしくお願いします」



俺は何万分の1の倍率を勝ち抜き彼女の恋人に選ばれた。

嬉しくて嬉しくて、でも近付いたからこそ絶対に彼女の夫になりたいから必死で働き会社を立ち上げた。

一流である彼女には金が掛かる。彼女の望むものを与えられた者だけが彼女と愛し合うことができるので、みんな必死に働き彼女へと貢いだ。

ライバルは多い。

15人前後いる彼女の恋人はまだ1人も夫に選ばれていない。

逆に彼女に見限られて捨てられる男は何人もいて入れ替わりが激しい。

何とか捨てられないように夫になれるように俺達は仕事を頑張り、お互いに蹴落とし合った。

そして自社を上場企業まで育て上げたとき、ご褒美として夫にしてもらえた。


嬉しかった。

本当に嬉しかった。


他者から嫉妬で濁った目を向けられる度、己の勝利に酔いしれた。

気持ち良かったのだ。誰もが羨む三浦由麻の夫という地位を得たのは。

嫉妬や渇望の目を向けられる度自尊心が満たされた。

由麻は我儘な女性で己の要望が通らないと機嫌が悪くなり、(俺達)を罵り殴り痛めつけた。

家庭で自尊心を失い心折れそうになるが、その度に周囲からの視線で自信を取り戻せた。

そんな歪な生活を長年続けていたが、子供も生まれると時々不安になった。

このままこんな生活を続けていていいのだろうか?

可愛い我が子を見ていたら父性が芽生えた。そうすると本当にこのままでいいのかと考えるようになる。

機嫌が悪くなる度怒鳴り散らし辺りの物を手当たり次第投げては壊し、その騒ぎに赤子が泣き出すと更に激怒する。

こんな環境にいることはこの子の為によくないんじゃないか?

この子を連れて出て行くことも考えるようになっていた。

そんなある日メイのことを知った。

最近の由麻はずっと機嫌が悪い。それがなぜなのか私は知らなかったのだが、他の夫達は愚痴っていた。


「メイの悪口ばっか言いやがって!ムカつくんだよあの女!」

「お前なんかよりメイちゃんの方が人気出るの当たり前だろ」


他の夫が口にする【メイ】という存在。気にはなったが忙しくて調べる余裕なんてなかった。

そんなある日、由麻が「あんなの偽物の女に決まってるでしょ!」と週刊誌の取材に答えたと聞いた。

会社でもメイと言う名前は時々耳にした。社員達や夫達がコソコソとその話をしていて気になった私はとうとうYTubeで検索して……


その後のことはよく覚えていない。


こんな女性がこの世に存在するのか?

理不尽なことがあっても他人に当たることなくすぐ切り替えて笑顔で、男を気使い優し言葉をかける。そんな女性が実在するのか?

ではなぜ私の妻はこの女性とかけ離れているのか?

私は今まで何十年も何をしていたのか。


色々と衝撃すぎて暫く放心状態になった。

それから今までの全てのメイの動画を最初から見返し、動揺し何度も何度も見返した。


こんな女性がいるはずない!

本当は男なんじゃないのか!?

演技してるだけじゃないのか!?

違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ


信じられなくて何度も何度も確認して、それでもやっぱりメイは本当に素晴らしい女性としか思えなかった。

それから私は他の夫達に「メイの動画見たよ」と言うと彼らは驚き、そして私達はメイを慕うファンになった。

それからは彼女の悪口を聞く度由麻がどんどん憎くなった。

もう由麻を慕う気持ちなんて欠片もなかった。

傷付けられすり減った心を癒してくれた。今の私達の心にあるのはメイだけだった。

そしてある日、10何年目でようやく産まれた大切な大切な娘を、由麻が怒って「うるさいガキね!早く殺しなさいよ!」と命令してきた瞬間私の心は憎しみ一色になった。

それは夫全員の総意で、すぐに誘拐の依頼を出した。

そしてやって来たのが(ばく)だった。

黒髪に赤いメッシュを入れて目まで赤く日焼けした肌にニヤニヤした顔のいかにもチャラ男だ。

私の嫌いなタイプなので眉をひそめてしまった。

しかし、奴は流石の手腕であっという間に由麻を虜にした。


由麻と別れることは何度も何度も考えたことがある。しかし、有名人である彼女を誘拐させようなんて考えたこともなかった。

嫌になって出て行った夫は何人もいる。私や今残っている夫は世間体から別れることができないもの達だ。

それても今までなら新しく夫になった者に彼女のことを任せて距離をとれたが、もう何ヶ月も夫は増えていない。

それもそうだろう。誰だってこんな地雷女と結婚したくないからな。

だから私達が矢面に立って面倒をみなければいけなくなったのだ。

批判も覚悟して別れたくてもこの少人数では別れることはできない。

女性を1人にすることは法律で禁止されているから、何人かは必ず残らなければならないのだ。

もっと早く決断しなかったから別れたくてもできなくなってしまった。

世間体は仕事に影響するから悩んでしまった。そんな自分が愚かしい。

由麻の父親達に任せるのも無理だ。彼らはとっくに由麻を切り捨てている。

最初のうちはテレビ曲プロデューサーの父親が娘を女性アイドルとしてデビューさせれば儲かると由麻をアイドルにした。

しかし彼らも助長する由麻に嫌気がさし1人また1人と離れて行き、残った父親も多分メイを見て自分の娘に見切りをつけたんだろう。

由麻(あいつ)のことは君達の好きにしな。俺はもう知らない」

そんな自分勝手な言葉を残して最後の父親も去って行った。

残されたのが私達だ。






爆というこの男が来てから2週間程経ったある日この男は「文句言いに行こか」などと、とんでもないことを言い出した。

メイに文句を言いに日之水都(ひのみと)高校に行くなどと、正気の沙汰とは思えない。

私達が必死に止めるが由麻は聞く耳をもたず、それからの由麻はご機嫌で爆と2人でウキウキとメイの学校への突撃について話していた。



「何考えてるんだお前は!」

「メイちゃんに迷惑かけるなんておかしいだろ!」

「なんで由麻を止めないんだ!」



その日の夜。あの話し合いの後私達は爆に詰め寄った。しかし奴はニヤニヤしたまま平然と答えた。

「だってその方が面白いやろ?一度メイに会うて見たかったし」

「ふざけるな!」「そんな自分勝手な理由が許されるか!」そんな私達の文句を無視して奴はニヤニヤしたまま由麻の元へと去って行った。

何を考えてるのか分からない。

すぐに誘拐犯の元へ苦情の電話をしたが、「あいつはそういう奴なんで」で終わりだ!

ふざけるな!!

次の日私達の説得虚しく由麻は日之水都(ひのみと)高校へ突撃した。

そして会ったメイを見て、ギュッと心臓が捻り潰されるような痛みを感じた。

大好きなメイとこんな出逢い方したくなかった。自分がこんな女の夫だと知られるのが恥ずかしく、そしてその女を止められずに彼女に迷惑をかけることが申し訳なかった。

由麻は本当に由麻らしく、メイを侮辱し私達の怒りを煽った。

この女を矯正施設で徹底的に痛めつけてほしい!そんなことを願ってしまう程腹が立った。

しかし、メイの友人がふざけた由麻の考えを一喝すると、由麻はすっかり大人しくなってしまった。

何も言うことなく俯く由麻に戸惑いつつ連れ帰った。


由麻は終始怯えていていつもの彼女らしくなく調子が狂う。

怯えて震える由麻から「処分て、嘘よね?そんなことするはずないわよね!?」と縋るように聞かれて答えられなかった。

すると由麻は顔を真っ青に染めて「嘘よ嘘よ嘘よ!みんな私を愛してるものね!」と続けて聞かれたが、私達は誰も答えられない。

答えられるはずもない。


「あっあっ、ァアアアアアアアア!! 嘘よ嘘よ嘘よ私はアイドルなのよ!三浦由麻なの!! みんな大好きでお父さんも貴方達もみんな私のことが大好きなの!! そうよ!そのはずよ!ァァアアアア!!」


狂ったように叫ぶ由麻を見て、誰も何も言うことができなかった。



由麻さんはお父さん達が去って行ってから精神的に不安定になってます(ファザコン)

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