32話 嵐の襲来1
ガヤガヤと校門が賑やかだ。
学校に来て現在4時間目の授業が始まったばかりで、マリアちゃん麗華ちゃん私の3人で仲良く一緒のソファに座り教科書を開いて先生の話を聞いていた。
外から何やら賑やか声が聞こえ、そちらに顔を向けるも中央よりにあるこのソファからは青空しか見えない。
「へ?あれ三浦由麻じゃね?」
「は?」
「うそだろ?」
「「マジで!?」」
外を見た生徒の声で男子生徒が窓へと殺到する。
そして口々に「マジで三浦由麻だ!」「うっそ!本物!?」「でもなんで学校に!?」と騒いでいるが、確かにテレビでよく見掛けるアイドルがなんで日之水都高校に??
彼女はこの学校の出身じゃなかったはずだけど。学校のイベントのゲスト出演とか、もしくはテレビ企画とかなのかな?
不思議に思うも、マリアちゃんも麗華ちゃんも全く興味を示さず勉強に集中しているので私も勉強に集中しよう!
「授業中だぞ!お前ら席につけ!」
ザワザワする教室で相変わらずツンツン頭と銀のスーツに赤いネクタイのホストみたいな担任の先生が一喝すると、みんな静かに席に着いた。
それから静かに授業が再開され、マリアちゃんから「お母さんここ分かんない」と言われては教えたりしていた。
すると廊下からドタドタと大きな音が近付いてきて顔を向けると、ガラッとドアが開いて「ゼェハァゼェハァ」と扉にもたれたり地面に倒れたりしている先生達がいた。
ドアを開いた所で力尽きたみたいだ。
「い、ハァ今、ハァハァ…三浦由麻さん、が、来てハァハァ
メイに会わせろ、と。ハァハァ」
「はあ!?」
「ええ!? なぜ!?」
「どういうことですか?」
「おい!ハァハァ、それは藤岡さんに言うなと言われたろ!」
「ハァハァ、でもこのままじゃらちが明かないだろ! 分かりません!ハァハァ、帰ってくれるよう頼んでるんですが全く聞いてくれなくて」
自分が関わってくるなんて想像もしてなかったから驚いたし、お兄ちゃんもアーヴァさんも驚いてる中、エドヴィンさんは冷静に聞き返している。
すごい。
疲れ果てた先生方にカップに紅茶を入れ持っていこうとすると、すぐにお兄ちゃんアーヴァさんが代わりに持って行って渡してくれた。
一息ついて落ち着いた先生から話を聞くと、三浦由麻さんがアポなしで現れ「メイに会わせなさい!」と怒鳴り散らし警備員さんや校長先生と揉めているそうだ。
警備員さん校長先生!迷惑かけて申し訳ない!!
「えっと、事情は分からないけど私に会いたがってるんですよね?
すぐ行きます!」
「? お母さんじゃなくてメイって人だよ?」
「花美やめとけ!」
「何たくらんでるか分からない。危ないよ!」
「私が話をつけてきます。花美はここにいてください」
私が立ち上がり会うと言うと、メイを知らないマリアちゃんが不思議そうに言う。麗華ちゃんも眉間に皺を寄せて意味が分からないって顔してるし。
う〜ん、私がメイだって直接は言ってないけど周囲にはバレバレみたいなんだけど、マリアちゃんや麗華ちゃんはメイや、そもそもVTuberを知ってるかも怪しいからね。
分からなくても当然だ。
お兄ちゃんやアーヴァさんは素直に私を心配して止めてくれて、……エドヴィンさんは何か不穏だから行かせるのは止めとこう。
「えっとね、メイは私がネット上で使ってる名前でね。由麻さんは本当の私のことは知らないからメイに会わせろって言ってるんだよ?」
「ネット上? YTubeの登録名とか? 本名はだめだってお父様達に怒られたの」
「そうそう!そういうの!」
マリアちゃんがYTubeを知っているようでそうだよと答えたが、それがどうしてわざわざ会いに来たのか不思議そうにしてる。
だよね、意味分からないよね。
麗華ちゃんはずっと難しい顔をしている。色々考えてくれてるんだろうけど、会ってみないと何も分からないよ。
この世界だと女性同士がネット上で喧嘩して開示請求とかよくあることだけど、女性同士でも安全の為にお互いの情報を教えたりはしない。
結果、双方から叩かれる企業の皆さんにはお疲れ様ですと心から労りたいです。
「いえ私達が何とかしますから花美さんは…」「行かない方がいいよ」「危ないよ!」と言う先生や男子達の声を背に校門へと向かう。
そりゃ私だって事情が分からないから何の用なのか不明だしインタビューでメイのこと不愉快そうに答えてたし不安だけど、この間もずっと警備員さんと口論してるのが聞こえるからね。
何言ってるのかまでは分からないけど、女性の怒鳴り声がずっと聞こえるから。
感情的になってるからまともに会話できないらしいよ(^_^;)
この世界の女性って……
「あの、私に何か用ですか?」
「……あんたがメイ?」
「はい。藤岡花美と申します」
「ふ〜ん」
校庭に出ると「メイに会わせろ!」と言う女性の怒鳴り声と「帰ってください!」と言う校長先生や警備員さん達の声がよく聞こえた。
由麻さんと連れの男性4人と警備員8人が横に並んで押し入ろうとする彼女を止めていた。
外には騒ぎを聞きつけてか野次馬も集まっている(^_^;)
すごい、由麻さんが来てから30分くらい経ってるのにずっとこの問答繰り返してるの!? ずっと警備員さん押し留めてたの!?
そりゃ会話できないのも納得だ。警備員さんお疲れ様です!校長先生もありがとうございます!!
声をかけると由麻さんは般若のような顔から、眉間に皺を寄せた表情になりジロジロ上から下まで見てくる。
すっっっごく嫌な表情!!
校長先生は「花美さん危ないです。ここは私に任せて」と仰ってくれたけど、この人は止まらないと思う。
「大丈夫です。みんなが付いてますから」と校長先生に答えてお兄ちゃん達を見ると力強く頷いて答えてくれた。
警備員さん達は心配そうな表情だが何も言わず見守り体勢になってる。
うん、止めないでくれてありがとうございます!
「ふん!チヤホヤ言われてるわりに大したことないわね」
「ハハハハハ!」
早々失礼なことを言われカチンときた。けど、私以上に周りが殺気立って怖い(((;゜Д゜)))
勝ち誇ったように腕を組み堂々と立つ彼女もすごいが、その横で爆笑してる黒髪に赤いメッシュの入った日焼けした男性もすごい度胸。他の夫達は申し訳なさそうな様子で彼女を止められないのは一目瞭然だった。
分かるよ。こんな我が強い女性私も止められないもん!
「えっと、場所を変えませんか?ここでは人目がありますし」
「いいわ。きちんともてなしなさい」
野次馬を見ながら提案すると腕を組みながら同意してくれた。
良かった。ここだと全部周囲に丸聞こえだもんね!
それから私達は応接室へと通された。
ここにいるのは私とお兄ちゃん達、三浦さんとその夫達、それに心配して付いてきてくれたマリアちゃん麗華ちゃんにその護衛に校長先生も!
すごい人数だ(^_^;)
ソファに座ってるのは三浦由麻さんとその夫達4人に、テーブルを挟んだ反対のソファに私とマリアちゃんと麗華ちゃん。
女性を立たせるわけにはいかないからって、2人もソファに座ってるけど
お兄ちゃん達は私のすぐ後ろで立ってて、2人の護衛さん達は更に後ろの壁際で立ってる。
なんか申し訳ない。
「では三浦さん、今回はどのようなご用件で?」
仕切るのは1人用のソファに座る校長先生。
警戒してるからかいつものにこやかな笑顔は鳴りを潜め、眉間に皺を寄せた厳しい表情だ。
「私の用件は決まってるわ!あんたね、調子に乗るんじゃないわよ!
VTuberなんて誰でもできるくだらないものやって人気が出たからって、そんなの女ってだけで誰でも人気とれるんだからね!!
勘違いしてんじゃないわよ!」
三浦さんは飲んでいた紅茶を置くとギロリと私を睨みつけ不愉快そうに言った。
うん、なんかそうだろうなと思ったこと言われて拍子抜けだ。
よかった、何かとんでもないことしちゃったんじゃなくて。
そんな私とは対照的に周囲の人達は殺気立つ。いや待って、そんな怒るとこじゃないじゃん!
「何なの貴女、失礼ね」
「お母さんのことバカにしないでよねおばさん!」
「なんですって!?」
麗華ちゃんは女性の失礼な態度にご立腹な様子で同じく不愉快そうに言い、マリアちゃんは私をバカにされて怒ってくれてるけどおばさんは止めとこう(^_^;)
三浦由麻さんは顎の辺りで切り揃えた赤い髪に青い目という派手な色の女性でお綺麗ではあるけど目つきは悪い。年齢は30代、もしかしたら40いってるかも。
態度は高飛車で偉そうだけど歌やダンスが上手で歌ってるときは本当に輝いてるし、流石アイドルって感じの人だ。
ただ性格はほんとに過激の一言だ。他のアイドルや議員女性とか色々な所とトラブルを起こしてる。
怒らせると危険だからね!気を付けよう!
「私はアイドルなのよ!ただの小娘が偉そうな口答えするんじゃないわよ!
それにお母さんって何?は?あの女があんたのママなわけ?」
「そうだよ!私のお母さんなの!バカにしないで!」
「アハハハハ!何それうけるー!!」
三浦さんは麗華ちゃんに怒鳴りつけるとマリアちゃんを見てバカにするように私を指差した。
怒ったマリアちゃんが言い返すと笑い出した。その態度にカチンとくる。
「うちの子バカにしないでくれますか?
用があるのは私ですよね。マリアちゃんは関係ないです」
「うっ、うちの子ww 頭湧いてるわこの女!」
「ブハハハ!」
三浦さんの夫達は意味が分からず困惑しているが三浦さんは腹を抱えて笑い出した。
すっっごく失礼な人!ムカつく!
よく見たら黒髪メッシュ男性も同じように腹抱えて笑ってる!お似合いだわこの2人!!
「お母さんをバカにするな!おばさんのくせに何なのあんた!」
「おばさんおばさんてしつこいわね!黙りなさいよクソガキ!!」
2人が立ち上がりヒートアップしてる。落ち着こうマリアちゃん!
この人と同レベルになったらだめだよ!
「マリアちゃんおいで」と両手を広げたらすぐに抱きついてきた。
「うぅ〜〜」と唸るその頭をよしよしと撫でる。
「何あんた、赤ちゃんみた〜い。何歳なの?2歳?」
「いいんです!マリアちゃんはお母さんに可愛いがってもらえなかったから、私が代わりに可愛いがってあげてるんですから!」
「は〜あ?何言ってんの?母親が娘なんて可愛がるわけないじゃないの。
ガキなんてうるさいし汚いし可愛くもない」
バカにしたように見てくる三浦さんに言い返すと、冷めた目で見られた。
この人も母親から愛されたことがないんだね。なんて悲しい世界なんだろうってちょっと切なくなる。
「三浦さんもお母さんから可愛いがられたことないんですね。
私はお母さんから沢山愛されて育ったから。だから私がマリアちゃんのお母さんになっていっぱい愛してあげるんですよ」
「はあ? 意味分かんない」
気味悪いものを見る目で見られてちょっとへこむけどいいんだ。
だって私がおかしいんじゃない。この世界がおかしいんだから!
「何なのあんた、夫の1人は毛むくじゃらだし、頭がおかしいだけじゃなく男の趣味も悪いのね」
「アーヴァさんは素敵な男性です。ヒゲが生えてるだけで随分と失礼な物言いですね!」
三浦さんがアーヴァさんを見てバカにしたように言うのでカチンときた。
別にヒゲが生えてたっていいじゃん!ヒゲだけで毛むくじゃらなんて失礼な人だな。
ギロリと睨みつけてもフンッとバカにしたように笑われただけだ。完全に私を下に見てるな。ムカつく!
アーヴァさんは眉尻を下げて申し訳なさそうな顔をしているから、「アーヴァさんはカッコいいです!」と言ったら微笑んでくれた。
良かった!
「そんなことどうでもいいのよ!とにかくVTuberを辞めること!あたしはそれを言いに来ただけよ!」
「VTuberは辞めません」
「はあ!?」
VTuberを辞めるよう言われて断ると驚かれた。なんで私が辞めると思ったんだろ?
「三浦さんはアイドル辞めろと言われたら辞めるんですか?」
「辞めるわけないでしょ!なんであたしが他人の意見を聞かなきゃなんないのよ!」
「なら私がVTuberを辞めないのも私の自由ですよね」
「そんなわけないじゃない!あたしが辞めろ!って言ったら辞めなきゃいけないのよ!」
「なんですかそれ??」
三浦さんの謎理論に困惑してしまう。
ジャイアニズムって奴なのかな?何をどうしたらこんな考えに育つんだろ??




