31話 みんなでピタゴラで遊ぼう!
「何なのあの男、不愉快ね!」
「ん〜よく分からないけど格好良かったよ?」
麗華ちゃんは先程の伊沢さんにご立腹のようだが、マリアちゃんは話しについていけなかったからか顔のことを述べている。
周囲の護衛の皆さんは麗華ちゃんに頷いている。お兄ちゃん達も。
でも私からするとあの人の言ってること分かるからな〜確かに、とちょっと思っちゃった。
でも彼が私を生徒会に入れたいのは私のお陰でマリアちゃん達が変わったと思ってるからでしょ?
そんな風に他の女性も変えてほしいって思う気持ちは分かるけど、ほんとそんなの無理だからね。
私だって協力するくらいなら構わないけど、一度我儘に育った人を変えるなんて簡単じゃないからね。
そんなことを考えながら次の教室へと移動した。
私達が学校に行ってる間、フリッツのことは重盛晶さんが見てくれるけど、普通は家政夫やベビーシッターは雇わないそうだ。
1人で子育てなんて大変だろうに。
傷心の男性を狙ったハンターや(重盛さんもここ)、逆に妻がいた男性に嫉妬して子供を虐めてやろうって人がいることもあるから警戒して雇わないのもあるみたい。怖い……
でも子供を1人残すのは不安だよね。
そう言ったらエドヴィンさんは「息子と2人暮らしのとき、私が働いてる間フリッツは1人で留守番してたから大丈夫です」って。
フリッツも「ひとり、おるしゅばん、できる!」って元気に答えてて、なんかこう、胸が苦しくなったよ。
そうだよね、向こうでだってシングルマザーやファザーは働きながら子育てしてるわけで。
子供1人でお留守番することもよくあるんだろうけど……こう、モヤモヤとね。
結婚してる家庭は妻1人夫複数で子育てしてるのに、あっ女性はしないか、男性が何人もいて子供を育てているのに離婚したら1人で引き取って育てるってのが、ね。
それならそのまま置いてきた方がいいんじゃないかとも思えるんだけど、それを言ったら「ちゃんと育ててもらえるか分からないんです。夫同士はそもそもライバルですから仲が悪い場合も多いですし、元夫を思い出すからと妻に虐待されることもあるので」って。
うわぁ〜〜!! なんだそれ!? うわ〜〜!! って何か一層モヤモヤしてしまった。
「フリッツ!お姉ちゃんが遊んであげる!」
「!うん!いっしょ!あそぶ!!」
「全く、マリアはほんとお子様ね」
最近は学校帰りにマリアちゃん麗華ちゃんが我が家に遊びに来るのが恒例となってます!
マリアちゃんがピタゴラ装置のおもちゃを持って呼ぶと、フリッツは目を輝かせて元気に返事をしてマリアちゃんの元へ駆けて行った。
それを呆れた顔で見ている麗華ちゃんだけど、口角が上がってる。
ピタゴラ装置のおもちゃは磁石のついた□や△のブロックを組み立てて、スタート地点からボールを転がしてゴールまで辿り着かせるステージを作る知育玩具だ。
メロディーが鳴るギミックやブロックから人形が飛び出すギミックなんかもあって中々面白いよ!
ちなみに、これを買ってきたのは麗華ちゃんなんだよ!ふふ。
みんながちょこちょこおもちゃを買ってくるからリビングの一角がおもちゃの山になってるんだよ!
困惑するエドヴィンさんの表情を思い出すと……ふふふ!
フリッツとマリアちゃんは2人で真剣にブロックを組み立てている。
背の高いマリアちゃんがスタート地点の高い場所を。フリッツが下がっていくゴールまでの道を。
「これ設置したら一気に上までボール運んでくれるよ」
「わ〜すごい!ボールグイ〜〜って!」
「お母さんすごい!」
私がボールが乗るとエレベーターみたいに上まで上がるギミックを途中で追加すると、フリッツもマリアちゃんも絶賛してくれる。
私のお母さん宣言からマリアちゃんは本当に私を「お母さん」呼びするようになったよ!
ただ、花美はお母様って感じじゃないからっていうのは褒め言葉なの??
たまに麗華ちゃんに「お母さんって呼んでいいんだよ?」って言うと顔を真っ赤にして怒られるから、ほんとにたまに言うだけにしてる(*´艸`)
麗華ちゃんはボールが乗ると音が鳴るギミックを設置している。ちゃんと演奏になるように置いてるからすごいよ!
前はねこふんじゃったのメロディーが鳴ってたからみんな感動したよ!
でも麗華ちゃんはリズムがズレてるって納得いってなかった。
すごいこだわってる!
「明宏!ここにブロックを置きなさい」
「はい!!」
「お父様ここ木置いて!」
「分かった」
「アーヴァさんありがとう!」
「どういたしまして!」
最初はただ簡単な坂のブロックをボールが転がるだけだったのが、今は全長2mくらいの大掛かりなものになってるよ!
マリアちゃんもお父さんに同じおもちゃを買ってもらったり、麗華ちゃんは同じおもちゃの演奏セットを追加で買ってきたりして。
どんどんみんなのレベルも上がっててボールがトンネルの中を通って見えなくなる場所や、ブロックの周りに木や芝生の地面を置いて長閑な風景を演出したり!
麗華ちゃんもマリアちゃんやフリッツも護衛やお父さんと一緒に作ってて微笑ましい(*´ω`*)
アーヴァさんは気が利くから、私が言う前にうさぎが飛び跳ねるギミックを渡してくれた。
どこに何を置くかみんなと相談しながら作ってるから楽しいよ!
「よし!できたわよ!!」
「「うん」」
「「「「はい!」」」」
完成したピタゴラの道を前に私達は座る。
代表の麗華ちゃんの護衛さんが「ではいきます!」と、スタート地点からボールを押した。
ゆっくりと坂を転がるボールが音を奏でるのはドレミの歌。
メロディーが流れながら草原を森の中をボールは転がり、ブロックからボールにビックリしたクマが飛び出してきたり、可愛いうさぎさんが楽しそうに左右に跳ねたりしている。
草原の終わりにトンネルを潜るとボールは坂を登り、そこから一気に急な下り坂を下りてからその勢いで急な山を登る。
ゆっくりと、今にも止まってしまいそうなスピードで何とか山を登りきったボールはエレベーターに乗って更に高くまで登った。
そこからピョンピョン跳ね飛びながら猫ふんじゃったを演奏しつつボールは下り、クルクルと渦巻くジェットコースターのような透明な筒をすごいスピードで回転しながら転がる。
最後は真っ直ぐな道をお散歩の歌を流しながら進みゴールに到着!二重丸の花のマークの旗が上がった。
その瞬間部屋は沢山の拍手で埋め尽くされた。
「やったーー!!止まらずゴールできた!!」
グスグス(泣いて言葉にならない)
「グスっ、マリアの努力が実って、お父様は嬉しいぞ!」
「Hurra, Papa!(やったーパパ) やったー!」
「頑張ったなフリッツ」
「今回は問題なく曲になってたわね。ただ思ったより速くボールが転がるからメロディーも速くなっちゃったけど」
「いえいえ十分素晴らしい演奏でした!」
嬉しそうにはしゃぐみんなの顔を見てより一層嬉しさが込み上げてくる。
こんなに沢山の人達と喜び合うなんて向こうにいたときはなかったし、何か、すごく嬉しいな。
お父さんお母さんが働いていて、妹の蓮と2人で過ごすことも多かった。
蓮が生まれる前、私が1人だったときに寂しくないようにとオカメインコのメイちゃんを飼ってくれた。
知人から譲り受けた子だから私よりお姉さんで、お母さんの友人が言ってた通り優しい子で……あの子がいたから寂しくなかったし、蓮が生まれてからは3人でお留守番をしても楽しく過ごせた。
あの子が亡くなったときは、いつも明るく元気な蓮がずっと泣いてて自分の悲しさを後回しにしてた。
ううん、蓮に構うことで考えずに済んだんだ。
その証拠に蓮が元気になって安心したら、後からどっと悲しみがきて辛かったな。
友人もそんなにいるわけじゃないし、こんな風に集まることもなかったから。
だからこんな風に大勢で集まって騒ぐようなことが新鮮で、楽しいんだけど……ここに家族がいないことが寂しい、のかな。
こうやって胸が苦しくなるのは。
アーヴァさんを見るとやっぱり優しい笑顔で私のことを見ていてくれて、何だろ?ちょっと泣いちゃいそうになった。
グイっと指で涙を拭いたらアーヴァさんはすぐに気付いて慌ててる。
それを見ておかしくて笑っちゃった!
こんな日々がずっと続いたらいいなとそう思う。
でも……向こうの家族がどうしてるのか時々考えてしまう。
蓮は今1人ぼっちで寂しい思いをしてるんじゃないのか、お父さんお母さんはいなくなった私を心配して探してるんじゃないのか。友達だって心配してくれてるだろうなとか。
そんな中自分だけ楽しんでていいのかなとか、色々考えてもしまうんだ。
だからこっちに私はいるけど向こうにもいるなんてそんなご都合主義や、いなくなった私のことをみんなが忘れていますようになんて願ってしまう。
パラレルワールドに迷い込むなんて不可思議なことが起きたんだから、そんなご都合主義があってもいいよね!
どうかみんな元気でいてね、幸せでいてね。私は今も昔も幸せだよ!
最初、こっちと地球の花美が入れ替わったのを考えてたんだけど……
4人いたお父さんが突然1人になってしまうパラレル花美が可哀想だし、かといって向こうの花美がコピーされて両方存在するんじゃ異世界転移が起きなかったことになるし難しい(´;ω;`)




