27話 お部屋にみんなを招待します!
「ここが今日からフリードリヒ君が住むお家だよ!」
「Mensch, ist das riesig!(わあ広い!)」
フリードリヒ君と手を繋いで女子寮へ行き、私達の部屋に到着したところだ。
女子寮の高級そうなホテルの外観やその前にある花畑を見たときも喜んでたけど、今は我が家の広いリビングルームやダイニングを見て目を輝かせている。
中でもやっぱりベランダに興味津々だ。見晴らし良いし子供は高いところ好きよね。
ベランダに近付くとエドヴィンさんがテラス窓を開けてくれて、そのまま外に出ると柵へと走り寄りへばりついて外を見ているフリードリヒ君。
ここから寮の入り口の花畑や白い外壁、その先の学校や綺麗な青空とか見えて見晴らしが良いからね。
風が気持ち良い〜!
「わ〜」と目をキラキラさせて見ているのが可愛い!
でも子供だけでベランダに出るのは危ないから、普段は鍵を閉めて気を付けないと。
そんなことを考えながらフリードリヒ君と暫く外を眺め……
「わ〜綺麗!ここからお花畑に飛び込めそう!」
「やめなさいよ!絶対飛び込むんじゃないわよ!」
すぐ隣からマリアちゃんの弾む声が聞こえ、その恐ろしい内容に焦りながら麗華ちゃんが止めている。
マリアちゃんの発言が不穏だからね(^_^;)
今私の部屋には私達の他にマリアちゃんと麗華ちゃんとその護衛さん達がいる。
すごい大所帯!
ベランダにある白いガーデンテーブルセットにお兄ちゃんとアーヴァさんがお茶や羊羹など今回は和菓子を用意してくれている。
私達はそこでティータイムを、護衛さん達はリビングのソファに座ったり立ったままベランダの入り口で待機してたりする。
椅子は4つあって私の隣にフリードリヒ君、向かいに麗華ちゃんマリアちゃんで座る。
「和菓子あんまり食べないけど美味しいね!」
「あらそうなの?うちは結構食べるけど」
「だって洋菓子の方が美味しいんだもん!」
マリアちゃんと麗華ちゃんは大福や羊羹を食べながらお喋りしている。
フリードリヒ君はどうかな?
「Ist es lecker?(美味しい?)」
「Mmm! Das ist lecker!(うん!美味しいよ!)」
ニコニコしながら大福を食べているフリードリヒ君を見てホッとした。
良かった!最初はホイップ入りの大福をあげて、恐る恐るこしあんも渡してみたんだけど食べれるみたいだ。
ときどきポトっと手から溢れてしまうのはご愛嬌。そっとティッシュで拾う。
食べ終わって汚れたお口を拭いていると麗華ちゃんの呆れた声がした。
「貴女ってほんと変わってるわね」
「え?何が?」
「そんなこと女性がする必要ないじゃない。他の者にやらせればいいのに」
「ふふふ、年下の子の面倒見るの楽しいよ?」
「……やっぱり変わってるわ」
終始呆れた目で見られ変わってる変わってると言われるけど、子供の面倒見るの好きな女性って結構多いと思うよ?
前の世界では保母さんになりたいって女子多かったし。
こっちだとあまりに女性を子供に関わらせないせいで、そういった母性本能が育たないのかな?
麗華ちゃんも結構世話焼きそうな気がするんだけど。
「む〜」という唸り声が聞こえそっちを見ると頬を膨らませたマリアちゃんがいた。
「私よりその子の方が大事なの?」
「……マリアちゃんの方がお姉ちゃんでしょ?」
「私と仕事、どっちが大事なの!?」の困った彼女のようなことを言い出すマリアちゃんに苦笑いしつつ、マリアちゃんの方がお姉ちゃんでしょ?と言うとキョトン顔をされてしまう。
私突き飛ばし事件からマリアちゃんと麗華ちゃんはフリードリヒ君を警戒してるから、危険な子と仲良くする私が不満なんだろう。多分。
終いには「お姉ちゃん?」と首を傾げて不思議そうな顔をするマリアちゃん。
ああ、ここだと弟達と触れ合わせないからお姉ちゃんって自覚が芽生えないのかと思った。
「マリアちゃんは15歳でしょ?」
「うん」
「フリードリヒ君は3歳だよ」
「3歳?」
「そう。マリアちゃんの方がずっと年上でお姉ちゃんでしょ? 普通は年上の人が年下の子の面倒をみるものなんだよ?
ね!」
マリアちゃんの年齢を聞き、フリードリヒ君の年齢を教えて私がお兄ちゃん達3人に話をふると
「そうね、男ならね!」
「……そりゃ男ならそうだけど」
「女性が誰かの面倒をみることはないですからね」
アーヴァさんは笑顔で、お兄ちゃんとエドヴィンさんは困惑しながら答えてくれる。
だから私は自分の意見を言ってみよう!
「私はね、女性にも子供の面倒をみさせた方がいいと思うんだ。
子供が何かしちゃったら子供を叱るんじゃなく上手くフォローしてあげてさ。
だって女性が子供を産むのに子供と関わらせないなんておかしいよ。
子供を産んだらどうするの?いきなり可愛がるなんてできないでしょ?子供が嫌いなお母さん多いんじゃない?
だからきちんと向き合えるように慣れさせておく方がいいよ絶対」
私の発言を聞き黙り込んでしまった男性達と、ポカンと私を見るマリアちゃんと麗華ちゃん。
ふふ、マリアちゃんのホッペにあんこがくっついている。
そっとティッシュで口を拭いてあげると、マリアちゃんが笑いながら言った。
「ふふふ、ありがとう花美!
でも変なの!子供が好きな母親なんているの?そんなのいないのに!」
その言葉がショックで息が詰まる。
クスクス笑って言うような内容じゃない。「いるの?」ってことはマリアちゃんはお母さんと仲良くないってことだよね。
周囲を見回せば男性達もショックを受けた顔をしている。その中にはマリアちゃんのお父さん達もいる。
麗華ちゃんは思うところがあるのか俯いてるし……こんな世界おかしいよ。
すっと席を立ちマリアちゃん達の側に行って、ギュ〜〜っとマリアちゃんを麗華ちゃんごと抱き締めた。
「なっ、何よ突然!」
「いるよ!うちのお母さんがそうだもん!子供を可愛がるお母さんはいるよ!
私だって2人のこと大好きだもん!」
ギュ〜〜と抱き締めていれば麗華ちゃんは口をつぐんでされるがまま。マリアちゃんはクスクス楽しそうに笑ってる。
……ああ、私この世界のことまだよく分かってなかったみたい。
女性達は我儘だっていうけど、お母さんから可愛がられたことがないなんて想像もしてなかった。
お母さんや兄弟とは仲が悪くて、可愛がってくれるのはお父さん達だけなんだね。
そんなの、なんて寂しいんだろう……
「よし!それならうちのお母さんが……じゃなく、私が2人のお母さんになる!」
「はあ!? 何言ってるの貴女は!」
「わぁ〜花美がお母さんなの!? 嬉しい!」
私の宣言への反応は両者真逆で面白い。麗華ちゃんは私の抱擁から逃げようと暴れ、マリアちゃんはギュっと抱き締めてきた。
最初うちのお母さんなら喜んで「いいわよ!うちの子になりなさい!」と言ってくれると思ったけど、それは前の世界のお母さんだ。
こっちのお母さんだとどうなるかちょっと分からないし、ここは私が2人のお母さんになるしかないだろう!
ギュッと抱き締めながら2人の反応がおかしくてアハハと笑えば麗華ちゃんから「笑いごとじゃないわよ!」と怒られた。
「フリードリヒ!」
ちょいちょいと手招きしてエドヴィンさんに羊羹を食べさせてもらっていたフリードリヒ君を呼ぶと、ちょっと戸惑いながらトテトテ歩いてきた。
困った顔をしているエドヴィンさんには申し訳なく思いつつ、フリードリヒ君を抱き上げて2人に見せる。
「貴女達の弟よ!Diese Leute werden nämlich ab heute große Schwestern.(この人達が今日からお姉ちゃんになるからね)」
「Meins?(僕の?)」
「Richtig!(そう!)」
突然のことにお互いに顔を見合わせるマリアちゃんと麗華ちゃん。まだ警戒してるみたいだね。
そして驚いて目を見開くフリードリヒ君に「お姉ちゃん」と呼ばせてみる。
「おねちゃん?」
「「!!」」
辿々しいフリードリヒ君のお姉ちゃん呼びに、2人揃って口に手を当て驚いている。
水色の髪と黄緑の目に白い肌というお人形さんみたいに可愛らしいフリードリヒ君からのお姉ちゃん呼び!
これは堪らんでしょう!
すぐに我慢できなくなったマリアちゃんが「かわいい〜!」と言ってフリードリヒ君を抱き締めた。
麗華ちゃんはフリードリヒ君が気になるのかソワソワしてる。
さっきまで警戒していたのが嘘のようだ。(≖ᴗ≖ )ニヤリ
「花美すごい!さくし!」
「ちょっと不安なんだが、大丈夫だろうか?」
「女性を止められるかエドヴィン?」
感心したように言うアーヴァさんに、息子が心配なエドヴィンさんと諦めるように言うお兄ちゃん。
エドヴィンさんの気持ちはめちゃくちゃ分かるよ!しっかり見てないと不安しかないからね。
何かあったら責任を持って止めるから、今は見守っててね!




