閑話 〜とある男子学生達〜
〜〜隼人〜〜
結婚するからと、6歳のとき施設へと預けられた。
コブつき男なんて女性からは嫌がられるから、結婚できるチャンスがきたら子供を捨てるのはよくあることだ。
たまに時間があれば会いに来てくれるし寂しくはない。全然ない!
そんなよくある出身の俺だが1つ他とは大きく違うことがある。
それは難関校である日之水都高校に入学したことだ。
俺達みたいな施設育ちが進学校に入学するなんてそうそうない。
国からの補助金で大人になるまでちゃんと育ててもらえるけど、家庭教師や塾に通うだとかそんな金はないから普通の学校に入学して普通の会社なりなんなりに就職するのが普通だ。
でも俺は頑張った!
普通の男みたいに女性と出会うこともなく寂しく1人、もしくは妥協して男と付き合うとかそんな惨めな生活したくないから。
父さんみたいに可愛い女の子と結婚できる勝ち組になりたかったから!
周りからはめちゃくちゃ羨ましがられた。
そりゃそうだ。女性の通う学校に通うことは全男の夢!
同じ施設の奴らみんな、いや、日本全国の男が同じ夢を見て努力し散っていく。
そんな場所に自分の力だけで上り詰めたのだ!
なぜか今回はいつもよりずっと倍率が高かったそうだが、それでも俺は勝ち抜いたのだ!
毎日入学の日を心待ちにして、ワクワクドキドキこの日を待った。
そして入学した! そう、そして俺は天使に出会ったのだ!!
長い時間待たされてたからイライラしてたのに、初めて女性を見たとたん全部吹っ飛んだ。
男と違うツヤツヤした長い髪に見てるだけで可愛いと思う顔。胸は絵や写真で見たみたいにマジでふっくらしてて腰はキュッとしてて、あまりの男との違いに驚いた。
近付くとなんかめちゃくちゃ良い匂いするし、見てるだけですげー胸がドキドキしてくる。
本能が女性を求めてんのかな? こんな感情初めてで戸惑う。
そうしてクラスに入るとさっきまでより近くに女性が座っている。
それも3人も!
可愛くて目が離せなくて先生の話なんかそっちのけでずっと見てたけど、その中の一人。
左右で縛った黒いツヤツヤの髪が白い肌に映え、目尻の下がった優しそうで可愛らしい顔のその女性は、男に奉仕されてるだけで真っ赤になっていた。
赤らむ頬と潤んだ瞳が色っぽくてじっと見ていたら、彼女が顔を上げ目が合う。
真っ赤な頬に下がった眉と潤んだ目、そんな目にじっと見詰められて……
「可愛い」
本能からか、思わずそう呟いたらその子はバッと隣の女の子に引っ付き顔を隠してしまう。
すごく……物すごく残念だがその行動自体が可愛い。
帰宅時間になったけどまだその子を見てたいから帰りたくない。けど話しかけたくて「また明日ね!」と声をかけると赤い顔のままチラリとこっちを見て、恥ずかしそうに「また明日ね」と返事をしてくれた。
それだけで気分が舞い上がってウキウキして、「邪魔だ!お前らさっさと帰れ!」と先生に注意されたけどずっと気分はそのままで。
道中うんちを踏んだし不良にぶつかって殴られたりもしたけどずっと天国にいるようだった。
殴ってきた不良が「何だお前キミ悪ぃな」となぜか怯えていたけどそんなの全然気にならない。
施設に帰ったら「お前寮暮らしじゃなかったか!?」「何こいつずっとニコニコして気持ち悪い」「お前、大丈夫か?」「くさっ!こいつうんこ踏んでる!!」とみんなから気持ち悪がられたがずっと天国にいるような気分だった。
明日が楽しみすぎて思い出す度に「ふふふ」と笑いが漏れてしまう。
その度にみんなからは気味悪がられたが、学校で可愛い女の子に会い明日も会う約束をしてもらったんだと教えたら嫉妬した男共にボコボコに殴られた。
はぁ、明日が楽しみ♥
〜〜栗原仁〜〜
俺は警視庁長官の息子で宝王院麗華の婚約者をしている。
昔から色んな女性と会ってきた。
「お前の妻にする女性を選ぶように」そう父さんに言われて色々な家のパーティーに行き引き合わされたが、どの女性も大して変わらない。
俺の家の権力に引かれてやってきたがワガママで傲慢な態度が癇に障るし面倒だ。
こいつら…おっとこの女性達は何か問題を起こしても揉み消してもらえる。そんな親の打算で俺を薦められて近付いて来たんだろう。
そんな下心のある親達の子だ。どれを選んでも外れな気がした。
それでも女性の少ない世界だ。確実に妻をもつ為にも誰かを決めなければいけない。
だから俺は権力のある家の娘から一番顔の良い女性を適当に選んだ。それが麗華だった。
麗華はワガママだが彼女の家は真当で後ろ暗いことをしていないから良かったよ。
逆に悪事をしている親は何とか俺と娘をくっつけようと婚約が決まったのに邪魔してきて鬱陶しかった。
その度に麗華と相手の女性が喧嘩するので本当にうんざりする。
確かに俺は警視庁長官の息子だが、俺も同じになれるとは限らないのに親達は本当にバカだと思う。
もちろん俺だって父さんを尊敬しているし同じ地位になる為に努力しているが、世襲制じゃないんだから確実じゃない。
そもそも俺も父さんも悪人が嫌いだから潔く諦めてほしい。
ほら、今も父さんが目を光らせてる。あんたの家は終わりだよ。
そうして父さんが潰した家に最上家もあった。
政治家として国民の為に活動しなければいけないのに、その金を妻の為に使っていた糞みたいな男。
その娘のマリアも俺にしつこくアプローチしてきて嫌いだった。
犯罪者家族め。そう思っていたから入学式でもその顔を見て「学校来んな犯罪者」と言った。
……言ってしまった。
それを俺は後悔している。
入学式の日初めて見た女性。
化粧はしてるが薄めで黒い髪を首の横の左右で縛っているだけ。服もお洒落なんかなく制服のままの簡素な格好で、可愛い顔をしているがパッとしない女性だった。
パーティーでも見たことないし貧乏人なんだなと思った。
でもその女性は俺達が罵っている最上に声をかけた。ビックリして場は静まり返った。
それだけでも驚いたのに、その後の女性の言葉にショックを受けた。
「マリアちゃんは政治家?」
「え?」
「お父さんのお金の使い方をマリアちゃんが決めてるの?」
「っ、ちがっ、私は何も知らなかったの!何もしてないの、本当に!」
「じゃあマリアちゃんは何も悪くないね!」
「マリアちゃんは何も悪くない」
俺は、犯罪者の家族もまた悪事に加担した犯罪者だと思っていた。
逮捕された最上の父親は妻のワガママを叶える為に借金までして、最後に税金にまで手を出した。
初めて会ったときから妻に惚れている最上父は、色々な男に目移りする彼女の気を引く為に幾度となく貢物をしていた。
周囲が止めても聞く耳をもたなかった。その結果が今回だ。
妻も周囲から何度も窘られていたのにそれを「知らなかった」「私は無関係」で済まそうとしているのだから糞だと思っている。
自分の欲しい高級品や旅行の為にどれだけ金がいると思ってるのか、その為の費用がどこから出てるのか。
知る知らないは関係ない。
自分の為に使われる金について考えもしていないこと、それ自体が罪だと思っていた。
でも、
でも、、、
それは最上の両親のこと。
娘のマリアは関係ない。
父親の横領した金が娘の為にも使われていたのなら責められるべき立場と言えるが、金は全て妻の為に使われていた。
彼女の言葉に頭を殴られたような衝撃を受けた。俺は間違っていたのだろうか?
そんな考えが頭から離れないが、俺は変わらず麗華の側に侍っていた。
それなのに気付けば花美に目を向けてしまう。
彼女は本当に変わった女性だった。礼儀正しく常に優しく微笑み照れ屋で可愛い。
ワガママなんて一つも言わないし怒鳴り声なんて一度も聞いたことがない。
他の女性とは全く違う女性だった。
生まれて初めていいなと思えた女性だった。
花美が素晴らしい女性だからこそ、罪のない最上を攻撃した自分が恥ずかしい。
最上に謝罪するべきだろうか?だが、謝るタイミングはあるのだろうか?
最上はずっと彼女にべったりだから、彼女の前で謝罪するのは恥ずかしい。
本当は麗華との婚約も解消するべきなんだろうが、そうしたら彼女との接点がなくなってしまう。
日出東都高校の卒業生である俺は、麗華の婚約者という立場だからこの学校にいられるだけだ。
婚約を解消したらもう2度と会えなくなってしまうだろう。
それは嫌だと心から思ってしまう、そんな俺は麗華の婚約者に相応しくないし不誠実だと思う。
でももう少しこのままでいたいと思ってしまう。
最低だと思うが、もう少しだけ……




