閑話 初めての友達 〜最上マリア〜
〜〜最上マリア〜〜
私は最上副大臣の娘、最上マリアよ!
元総理大臣の娘であるお母様と将来有望な若手であったお父様の元で生まれた私は生まれながらのお嬢様。
小さな頃から周りの大人も子供も私に媚びを売って、男女関係なく誰もがみんな私と親しくしたいとそう願わずにいられない。
貴重な女性の中でも特別な女の子だった。
そんな私がまさか落ちぶれる日が来るなんて、思いもしなかった。
日之水都高校への入学を控えたある日、警察が来てお父様を連れて行ってしまった。
お母様は怒りで喚き散らし、他のお父様達も事情聴取だなんだと言われてどこかへ連れて行かれて……
我が家にいた召使い達が次々辞めていなくなり、私の夫候補として侍っていた男の子達もいなくなった。
何が起こったのか分からない。どうして、なぜなのか何も知らない。嘘だって信じたい。
お父様達は理由を話してくれなかったけど、召使い達や男の子達がコソコソと話していたのを聞いた。
お父様がお金を着服したなんて信じられない。嘘だと思いたかった。
でも周りは誰も信じてくれない。
「お父様はそんなことしてない!」そう必死に叫んたのに誰も信じてくれず去って行った。
「あの人は、本当に着服していたみたいだ」
「まさかそんな!」
「もうすぐ総理にだってなれただろうにバカなことを」
夜遅く、部屋に籠もって話し合いをしているお父様達の会話を聞いてしまった。
端ないけれどドアに耳をあて盗み聞きしたその内容に驚き、部屋に戻ってから何時間も泣き続けた。
お父様は政敵に嵌められたんだって、そう信じていたのにどうして?なんでそんなことを!
今はパーティーがあっても出席せず休んでいるけれど、また参加したら何を言われるか分からない。
パーティーが大好きなお母様が出かけて、大荒れで帰ってきた。
色々言われたんだってバカでも分かるわ。
真実を知ってしまった今は、何を言われても言い返せなくなってしまった。
みんなの前に出るのが怖い。前のようにチヤホヤされることなく嘲笑されるって分かるもの。
没落した者の末路なんて何度も見たわ。
そんな私にお父様達も気付いて慰めてくれたけど、不安が消えることはない。
今となっては学校に入学することが怖い。あんなに楽しみにしていたのに。
連れの男性もおらず、代わりにお父様達が来てくれた。でもそのせいで余計バカにされる。
恥ずかしくて悔しくて、でも自分が悪いから何も言えなくて、ただただじっと耐えていた。
そんな時、
「初めまして!私藤岡花美って言うの!貴女は?」
「……え?」
場違いな明るい声がすぐ近くで聞こえて顔を上げると、そこには見たことのない女の子がいた。
黒い艶々の髪を左右で縛った可愛らしいけど私ほどじゃない女の子。
私と同じように制服を着てるから貧乏なのかな?上流階級の子じゃないから見たことがないのね。
お父様の1人が失脚したといってもうちはお金持ち。違う党員のお父様や地主に社長、芸能人のお父様もいる。
だけど反省の為に制服を着るようにお父様から言われたの。
態度で反省してるって示さないといけないんだって。
辛くても言い返してはいけないよ。そう言われたけど真実を知った今言い返せるはずもない。
この日の為のお洋服も買ったのに、悲しいな。
戸惑う私にその子はもう一度同じことを言った。
これだけ色々言われてる私に話かけるなんて頭のおかしい子なのかな?戸惑いつつ答えると隣に座ってきた。
訳が分からなくてちょっと怖い。
お父様達を見ると同じように困惑している。何なんだろこの子?
「マリアちゃんは政治家?」
「え?」
突然始まった意味の分からない質問。でも私のことを責めてるんだって分かって必死で言った。
私は悪くないんだって。でも、
「じゃあマリアちゃんは何も悪くないね!」
笑顔で言われた言葉に思考が停止する。
だってみんな私が悪いって責めてきたの。犯罪者の子供って責めてきたの。
でもこの子は、花美は悪くないって言ってくれた。
嬉しくて嬉しくて涙が止まらなくなるなんてこと知らなかった。
花美はずっとお父様みたいに背中を擦ったり頭を撫でて慰めてくれた。
なんだろうこの子は。すごく安心する。
優しい声、優しい言葉、優しい手、優しい温度……
花美の全てが私を慰めてくれた。
花美は素敵!こんな素敵な子と出会えるなんて嬉しい!
教室では真っ赤になって恥ずかしそうにケーキを食べてる姿が可愛かった!
うちにいるモモやリリ(モモンガ)みたいですごく可愛い!
こんな小動物みたいな可愛い人間がいるなんて知らなかったわ!
このままずっと一緒にいたくてしがみついていたのだけど、無理やり引き剥がされてしまったわ。
あれからずっと泣いていたの。今はその帰り道。
花美は寮で暮らすんだって。私は屋敷からの通いだから一緒にいられない。
護衛の男性達がみんな去ってしまったから寮に住むのは危ないんですって。
今はお父様の運転する車の中よ。運転手も辞めてしまったの。ほんとに辛い。
でも私はいい加減泣き止んで顔を上げる。
「お父様、今日は花美と知り合えてほんとに良かったわ!」
「ああ、本当に良い子だね。あんな女の子がいるなんて知らなかったよ」
「初めて出会ったよな。あんな優しい女性」
お父様2人も花美を気に入ってるみたいでニコニコ話している。
嬉しい!
だから言ったの。
「私あの子飼いたいわ!」
「「えっ!?」」
「花美は良い子だもの!きっとモモ達も喜ぶわ!」
私の素晴らしい提案にお父様達は困惑してるみたい。
「人間は飼えないんだよ!」「男なら飼えなくもないけど、女の子を飼うなんてとんでもない!」なんて否定してくる。
私は悲しくなってまた泣いた。
「やだ!花美うちで飼うのーー!!」
わんわん泣く私にアワアワしていても、お父様達は花美を飼うことを許してくれない。
「友達でいいだろ?」って、友達だからこうやって別れて悲しい思いをしてるんじゃない!
「じゃあ私の夫にする!」って言ったら「女の子は男じゃないから夫にはできないんだよ」って!
何よ何よ!じゃあどうすればずっと一緒にいられるの!? お父様達の意地悪!!




