15話 はじめての自己紹介
教室に入っても精神攻撃は続く。
机と椅子が並ぶ普通の学校風景が、なぜか前方に目を向けると黒板の前、教卓の左右に2つずつソファとテーブルがあった。
その後ろに沢山の机と椅子が並んでるのは普通たが、前方のソファ達が普通じゃない!
それに、普通なら窓際にある先生用のデスクがないぞ?(^▽^;)
え、先生どこで休むの? 一緒に座る??
「急いで用意させましたので4つきちんと席があります!どうぞ、お好きな場所にお座りください」
「あ、はい。……ええと、このソファが女子生徒の席、なんですか?」
「はい。こちらにお連れの方共々座ってください。席に決まりはないので4つの中から好きに選んでください」
ニコニコ笑顔の先生からソファを勧められるが戸惑う。
Lの字に置かれたピンクのソファは詰めれば6人は座れそうな大きさだが、場違い感が半端ない。
そんな所に座るのかと躊躇するが、既に麗華ちゃんは連れの男性達と窓際のソファに座ってお茶を飲みケーキを食べている。
ここ教室だよね? 喫茶店ですか??
「花美!一緒に座ろう!」
「う、うん!」
マリアちゃんに腕を掴まれ(ずっと掴まれてるが)一緒に廊下側の教卓の隣のソファに座ると、さっとエドヴィンさんが紅茶をアーヴァさんがケーキを用意してくれた。
マリアちゃんのお父さん達もいそいそと紅茶とマフィンを用意してるし、全ての女子がティータイムを始めようとしてる。
ナニコレ? ほんとナニコレ??
そうしてティータイムが始まりまったり紅茶を飲んでいると、(ただし私は薦められるまま飲んでるだけでずっと混乱している!) 後ろのドアから男子生徒が順番に入ってきた。
あ、前側のドアは私達がいるから使えないのね。食事してたりするから頻繁に出入りされたら困るもんね。
なるほど。
なんでどこの教室も前の方だけ扉が両開きなのかと思ってたけど女子用だったからか!連れ多いもんね。
そうして前の席から順番に埋まっていくが、みんなジロジロ見てくるからすごく居心地が悪い。
平然としていられるみんな心臓に毛が生えてるね!私以外全員だけど!
こっそり男子生徒達を見るとやっぱりみんな顔が良い。
一番多いのは日本人顔に黒や茶色の髪と目の人だけど他の人種の混ざった人や、ピンクや青い髪なんて非現実的な色の人も少ないけどいる。
……やっぱりパラレル世界だ。それか、実は夢だったりする?
私は眠ったまま植物状態になって目覚められない状態とか。ないかな?
ちょっと現実逃避……
それにしても、ほんとに美男美女しかいない世界だ。
マリアちゃんや麗華ちゃんも可愛いし、連れてる男性もみんな顔が良い。夢って言われる方が納得だよね。
でも夢じゃないんだ。痛みも感じるし夢とは違ってしっかり意識があるもん。
そうやって男子が全員席に座るまでマリアちゃんとお喋りしながら待っていると、全員の着席を確認して先生が話し出す。
「まずは諸君、入学おめでとう!
日本最難関の日之水都高校に入学できた君達はエリート中のエリートだ!
更にそのAクラスとなれば権力でも無理な本物の実力者しかなれない。そこに選ばれた君達は本物だ!自分に自信を持っていい。
だが慢心することなく努力を続けていけ」
先生はさっきまでの腰の低さが嘘のように、自信に溢れた力強い言葉でみんなを褒め称えている。
その変わりようにビックリした。
茶髪のツンツン立った髪と黒スーツに紫ネクタイがなんかホストみたいとか思ってたけど、堂々とした態度にその端正な横顔はカッコいい。
先生を見たまま驚いて止まってしまった私の前に、アーヴァさんがケーキを乗せたフォークを差し出してくる。
いや、こんな大勢の前であ〜んは恥ずかしい!!
ブンブン首を横に振るがやめてくれない!ニコニコ機嫌良さそうにじっと見詰められるので困ってエドヴィンさんを見るが彼もニコニコしている。
というか、既にフォークにケーキ刺して待ってる!! 気が早い!
困って視線を彷徨わせていると、ふと男子の何人かがこっちを見てることに気付いた。
喋ってる先生じゃなくなぜ私を見るのか、怯え助けを求めるように隣のマリアちゃんを見るもなぜか彼女も楽しそうに微笑んで私を見ていた。
どうやら私に逃げ場はないらしい(´;ω;`)
諦めてパクッと口に入れると柔らかいスポンジの感触と優しいチーズの香りと甘さが口いっぱいに広がる。
普通に美味しいチーズケーキだよ。
チラリとアーヴァさん達を窺えばさっきまでより笑みを深めて私を見ていた。なんだこの羞恥プレイ!?
アーヴァさんとエドヴィンさんにより、次々あ〜んと差し出されるケーキを無我の境地で食べていく。
真面目な場で声を荒立てるわけにもいかないから恥ずかしくても我慢して頑張って食べていたのだが、なぜか満面の笑みのマリアちゃんからもマフィンの乗ったスプーンを差し出される。
……ブルータス、お前もか。
そんな気分で諦めてパクリと食べると「なんなの!この可愛い生き物は!」と、なぜかマリアちゃんが悶えていた。
そんなに真っ赤だろうか?
…確かに真っ赤だろうな。顔を赤くして恥ずかしそうにご飯を食べている女の子は可愛いだろう。
それが自分じゃなければね!
──ふと周囲が静かなことに気付いた。
顔を上げて視線の先を見るとなぜかクラス中のみんなが私を見ていた。
なんでか先生含め全員から視線を向けられていて怖くなる。
ビックリして固まる私の耳にポツリと誰かが呟いた言葉が届いた。
「可愛い」
その一言に羞恥が限界突破して恥ずかしくて堪らなくなり、隣にいるマリアちゃんの肩に顔を押し付け赤くなった顔を隠した。
「かわいい〜(*´ω`*)」と言うマリアちゃんの楽しげな声が追い打ちをかけてくる。
そうしてると「花美はあげませんよ? あまりこっちを見るならその目を潰してしまうかも知れませんね」なんてとんでもないことを言うエドヴィンさんの声が聞こえた。
羞恥で死にそう……
そのまま一人一人の自己紹介が始まったのだが、私が羞恥でダウンしているので私の代わりにアーヴァさんが答えた。
しかし、「花美だよ!わたしのしょうらいの、およめさん!」とまたこちらもとんでもないこと言ってたよ!
やめて!永遠に顔を上げられなくなる!!
そんな羞恥で死にそうになっていたが、麗華ちゃんの挨拶がすごかった。
「私は宝王院財閥の娘、宝王院麗華ですわよ!
貴方達程度の男が私を見られるだけでもありがたいと思いなさい!」
と高飛車に名乗っていたので何か色々安心した。
いや、安心しちゃだめなんだけどね!なんか驚きすぎてちょっと落ち着いてきた。
でも、ちゃんと自分で自己紹介できなかったことを反省しよう。
……でもな、あの羞恥プレイをみんなに見られてたのに普通に会話するなんて難易度が高すぎる。
今回はしょうがなかったと我ながら思う。うん、しょうがなかった。
全員の自己紹介が終わると軽くこれからの予定を先生から説明して解散となった。
私は子供のようにダウンしていたのだが、そんな私になぜか男子生徒達が声をかけ帰って行った。
「花美ちゃんまたね!」「また明日ね!」「花美ちゃん俺〇〇って言うの!よろしくね!」「また学校でね!」
何とか気力を振り絞り「うん、またね」と返事をしたが、結局最後までちゃんと顔を上げられなくて申し訳なかったな。
実際麗華ちゃんから「いつまでそんなオドオドしてるのかしら?もっとビシッとしたら?みっともないわね」と怒られて反省した。
アーヴァさん達は麗華ちゃんのこと警戒してるけど、ちゃんと注意もしてくれるし普通に良い子だよね?
高飛車だけど。
最初のマリアちゃんへの態度が悪かったから警戒してるのかな?
でも税金取られて怒るのは至極当然だと思うよ。それをマリアちゃんにぶつけてバカにするのは間違ってるけど。
知らなかったんだろうな、きっと。
現に私がマリアちゃんを悪くないって言って、泣き出したマリアちゃんを見てバツが悪そうな顔してたもんね。
「はぁ」
でもまた学校来るのきついな。
どんな顔してみんなに会えばいいんだろう?
そんな風に悩みつつHRが終わり寮へと向かった。




