13話 いよいよ学校に入学します!
「ようこそ藤岡花美さん。お待ちしてましたよ」
「はっ、はい。よろしくお願いします」
学校に着いてそうそうなぜか車から出たらすぐ待ち構えていた先生方に捕まり校長室に案内され、校長先生から歓待の言葉を頂いた。
私達が学校についたとき、校門で5人ほどの先生が生徒を出迎えていた。
そのまま車で通り過ぎ私達が駐車場に向かっていたら、ついてきてたみたいで車から降りると近付いてきた。
お父さん達はそのことに気付いててジャックお父さんなんて舌打ちしてた。
態度が悪いなぁ(^_^;)
私達が降りるより先に別の車でついてきてたアーヴァさんとエドヴィンさんが車から降りて、先生達が私に近付かないように止めてくれたよ!
すぐにジャックお父さんも降りてちょっと言い合いになって、お母さんが興奮するお父さん達を諌めてくれた。
あ、ジャックお父さんだけ先に行ったのは信彦お父さんが私の、章司お父さんがお母さんの車のドアを開けてくれてたから。
さっさと降りちゃった方が時間がかからなくていいと思うんだけど、男性が開けてくれるまで待つのがマナーらしいよ(^_^;)
それから校長室まで案内されたんだけどおかしいよね。
こっちは普通の一生徒だよ?
男子生徒達は普通に歩いたり自転車でそのまま挨拶して通してもらってたのに、女子生徒だけこんなお出迎えされて校長先生に呼び出されるのかな?
周りを見てもたまに男子を見かけるだけで女子は見かけないから分からないな。
「それじゃお母さん達は先に体育館で待ってるからね」
「お前ら!ちゃんと花美のこと守るんだぞ!」
「任せたよ君達」
「花美ちゃんのことよろしくね!」
「再会したばかりだというのにもう離れないといけないのか!」
校長室の前で両親とは別れた。
ジャックお父さん、章司お父さん、信彦お父さんから圧力強めに私のことを任されてしまった2人に申し訳ない気持ちになる。
特に単身赴任から何とか時間を作って帰ってきてくれた英和お父さんは私と会ってから離れたがらない。
今も私の手を握って離さないから他のお父さん達に無理やり引っ剥がされ連行されていく。
あぁ、無地の黒い着物に羽織も着て黒髪黒目で切れ長な目の渋いイケおじなのに、数日前入学式には必ず行くから!とテレビ電話で話したときより痩せてるからほんと無理してきてくれたんだろうに……(´;ω;`)
お父さんが帰宅して喜ぶ時間も殆どないまますぐ家を出たから全然話せてないんだよね。
入学式が終わったら寮に行ってこれからは寮暮らしだから、お父さんと直接ゆっくり話す時間もないんだよね(´;ω;`)
だから申し訳ない気持ちが強くてその姿が消えるまで見送ってしまった。
残ったのは私とアーヴァさんエドヴィンさんの3人だけだ。
お母さんとお父さん達5人がいなくなると一気に寂しくなるね。
「それでは、控室までご案内致します」
「はい、お願いします」
私の気が済むまでそっとしておいてくれた先生方に感謝しつつ控室へ向かう。
お母さん達の案内に先生1人、なぜかこっちには3人の先生が付いてくれてる。そんな案内に人必要なのかな?
新入生の女子生徒は式が始まるまで控室で待機し、準備が整って女子生徒達が入場すると式が始まるんだって。
え、何それ?って感じだよね。
女子が入ったら式開始って絶対目立つじゃんね!恥ずかしい!!
そうして3人と先生方と校内を歩いているとすれ違う男子生徒達の視線が痛い。
それに、校内を歩いてるときに何度も聞こえたのがね。
「あの子メイちゃんかな?」
「いやメイちゃんはもっと可愛い」
「この学校のどこかにメイちゃんが」
そんなヒソヒソ声が聞こえて居た堪れない。それに改めてメイの知名度の高さに驚いたよ。
ただの1VTuberでしかないのにな。なんでこんなに有名になっちゃったんだろ。
少しの視聴者達とほそぼそと、けれど楽しく雑談したりしながらのんびりやっていきたかったのに。
その為に女であると明言せずにやってたのに、どうしてこんな有名になっちゃったんだろう……
ちょっとアンニュイな気持ちになっちゃった。
控室……というか、広々としたレストランのような場所。
複数のテーブルとソファがセットで置かれ、それぞれの場所で女子が1人に複数の男性が一緒に座っている。
奥にはキッチンもあるしウェイターもいる。え?ほんとにレストラン?? 控室がレストラン??
日之水都高校の1学年はA〜Eの5クラスあって優秀なものからAから順に割り当てられる。
今日入学する女子生徒は確か7人。女性も一応事前に試験があってその点数と家柄からAからDクラスに振り分けられるんだけど……
Aクラスに女子3人、Bクラスに2人、Cクラスに1人、Dクラス1人と分けられる。
うん、一番下のEクラスには女子いないんだよ。女子に会いたきゃ頑張れってこと!
出会いを求める男子はAクラスに行く為にめちゃくちゃ頑張るらしいよ。あからさまにAクラス女子多いもんね(^_^;)
それに学年が上がるごとに進級できる人数は絞られていき2年生はA〜Dクラス、3年はA〜Cクラスと人数に制限があって、学年が上がるほど進級するのが難しくなる。
留年は5回まで、それを過ぎたら除籍されるから中々厳しい学校だ。
女子に留年はなくて進級する度成績でAクラスから振り分けられるけど、卒業まで通う人は少ないらしい。
今ここにいる女子生徒は私を含めて4人。まだ3人来てないみたいだね。
同じような境遇の女の子だからね!上手いこと友達になれないかなとチラチラ見つつ空いた席に着く。
私に続いてアーヴァさんとエドヴィンさんも席に着いたが、先生方は入り口で止まっていてこっちには来ないようだ。
女子の殆どはロリータみたいな可愛い服装やドレスで、制服を着ている人は少ない。
私ともう1人、奥の席で男性2人を連れて座っている女子だけだね。
「お飲みものはいかがなさいますか?ケーキなどお持ちしましょうか?」
座ってすぐにウェイターさんが声をかけてきたと思ったら、ここまで案内してくれた先生の1人だった。
「必要ないです」とエドヴィンさんが追い払っていたけど、ここのウェイターさん3人いるけどみんな学校の先生なの?
去って行くウェイターさんを見ているとドア付近に先生方がまだ何人か立っているのが見えた。
というか増えてる?え、なんでみんないるの?暇なの??
驚いてポカンとしてる私にエドヴィンさんとアーヴァさんが「喉は渇いていますか?何か軽いものでも用意しましょうか?」「わたし、なんでもよういするヨ!」と聞いてきたので「大丈夫です。これから式があるのでやめときます!」と答えた。
何か飲んでおトイレ行きたくなったら困るもんね!緊張してるから食べ物は喉通らなそうだし!
そんな私からするとここの光景はちょっと信じられない。
楽しそうにお喋りしている女子生徒やそんな女子に紅茶やケーキを提供するウェイターさんを見てそう思った。
「あらいやだ!薄汚い泥棒の娘がいるのね」
突然聞こえた蔑みの声に驚いて顔を向けると、入り口から入ってきた女子が不愉快そうに顔を歪めていた。
金髪縦ロールのツインテールに紫の目という漫画の悪役令嬢に出てきそうな吊り目にバッチリ化粧をした女子生徒。
胸を露出させた赤いドレスを着たその女子は、見目麗しい5人の男性を引き連れている。
嫌悪感を隠しもしないその視線の先に目を向けると、一番奥にいる1人だけ制服姿の女子生徒だった。
その子は存在を隠すように一番奥のソファに小さく座っていたが、より一層小さくなって俯いている。
事情が分からないからどうしたらいいか分からず戸惑う。
「貴女の父親の一人が国のお金を着服していたわよね。そんな犯罪者の娘がよく学校に来れるわね。みっともない」
「クスクス、確かに」
「え〜あの子の親犯罪者なの?ヤバ〜い!」
「あの子の父親がね、政治家をしていて税金を1億近く着服してたから捜査入ってるんだよ」
「な〜んだ、まだ捕まってないの?」
「あの子のパパ政治家2人いるって自慢してなかった?ってことはそのパパもやってるんじゃないの?」
「「こわ〜い!」」
クスクス嘲笑する声を聞くと不愉快で眉間に皺が寄るが、なるほど、あの子のお父さんがお金着服しちゃってたのか。
それはまぁ、税金だし怒る気持ちも分かる。
「制服着て登校なんて貧乏人の証拠じゃない。私服買うお金もなかったんでしょ」
「え!?」
「「ダサ〜い!」」
女子達の言葉を聞きバッとアーヴァさん達を見ると首をブンブン横に振りながら「ちがうちがう!花美いえ、おかねもち!」「花美が制服を着たがっていたから制服にしたと言っていましたよ!決して貧乏などとそんなことありえません!」と言われたがちょっと冷や汗が出てきた。
2人が気を使って否定してるだけで、もしかしたらうち貧乏だった?あんな豪邸に住んでるのに??
でも、女性は国から多額の支援金が出るらしいからそれであんな裕福な暮らしができていたのかも??
「貧乏な男性は女性に選ばれませんから、そもそも結婚なんてできません」ってエドヴィンさんの言葉を聞き、それはそうだよねと安心した。
それに、「花ちゃん、制服あるけど私服でいいのよ〜。どっちがいい?」ってお母さんに聞かれて制服にしてもらったのは私だしな。
なんか突然のことに動揺しちゃった!
だって制服ある学校だよ?普通にみんな制服着てるって思うじゃん!現に男子はみんな制服着てたし!
私も可愛い制服だから着てみたいって思ったしさ!なんで他の女子達は私服が良いんだろう?
学校いる間しか着れないのに!
「父親同伴なんておっかしい〜」
「自分には沢山男がいるって言ってなかったっけ?それがたった2人?それもおっさんw」
「え、あれ父親なの?犯罪者の?」
「学校来んな犯罪者」
「そんな人いるのやだ〜」
「税金返せ。泥棒」
ヒソヒソ囁かれる悪口に我慢できなくてそっと席を立つ。アーヴァさんエドヴィンさんに目を向けると頷いてくれた。
私が何をするか分からないのに賛成してくれるんだと胸が温かくなる。
これからすることで家に迷惑をかけたら申し訳ないなと思うけど、このままにはできなかった。
そのまま奥にいる女の子の元まで行き声をかけた。
「初めまして!私藤岡花美って言うの!貴女は?」
「……え?」
全てを拒絶するように俯いていた女の子は、まさか自分が話かけられるとは思わなかったのかポカンと口を開け私を見た。
なぜか辺りがし〜んと静かになったことを不思議に思いつつもう一度同じことを言う。
「初めまして!私藤岡花美って言うの!貴女は?」
「あ、私……マリア」
「マリアちゃん?可愛い名前だね!同じ制服仲間同士仲良くしてくれると嬉しいな!」
相手に元気を分けるイメージで、できるだけ明るくなるよう意識して話す。
パチパチ瞬きして戸惑うマリアちゃんは不安そうに連れの男性に目を向ける。なんか男性2人も戸惑っているようだ。
「ここ座ってもいいですか?」
「ど、どうぞ」
そんな男性達に尋ねれば許可を貰えたのでマリアちゃんの隣に座る。
アーヴァさん達もついて来てるのでちょっと奥に詰めてもらった。
キョロキョロ視線を彷徨わせるマリアちゃんは何か話そうとしてか時々口を開けるが何も言わない。
ずっと不安そうな顔をしている。マリアちゃんほどじゃないけど、それは男性達も同じだ。
この人達はお父さんかな?青い髪に目の男性は35歳くらい、もう1人の茶髪に翠目の男性は章司お父さんと同じ40代くらいのイケオジだね。
うん、この世界は美男美女しかいないみたいだ。
さて何を話そうかと考えて、ちょっと迷ってから口にする。
傷つけてしまうかもしれないけど、必要だと思ったから。
「マリアちゃんは政治家?」
「え?」
「お父さんのお金の使い方をマリアちゃんが決めてるの?どんな手段を使ってもお金を稼ぐように言った?」
「っ、ちがっ、私は何も知らなかったの!何もしてないの、本当に何もっ」
「じゃあマリアちゃんは悪くないね!」
責めるられてると思ったのか目に涙を溜めて否定してきたマリアちゃんに安心してもらえるようにニコッと笑いかける。
予想外の言葉にキョトンとした顔が可愛い。
黒く長い髪をストレートに伸ばし、クリッとしたパッチリお目々のマリアちゃんは清楚で大変可愛らしい。
この世界みんな美男美女だから目福ですなぁ〜。
「マリアちゃんは何も悪くないよね?政治家じゃないんだからお父さんの仕事に関われるわけないんだし、何にも悪くないよ!」
「っ…っ…… ふぇ~」
「まっ、マリアちゃん!?」
元気づけようと明るく笑顔で、周りの人達にも聞こえるように意識して言うとマリアちゃんが泣き出した!
めちゃくちゃ慌ててアワアワする私に、さっとハンカチを差し出してくれるエドヴィンさんナイス!
マリアちゃんの目尻を拭いてあげると抱き着かれた。グイグイ顔を押し付けられる。
どっどっ、どうしたらいいんだろう!?
マリアちゃんの連れ男性は……泣いてる。アーヴァさんは気さくにその人達の肩を叩き笑顔で「よかったネ!」「ありがとう!」と語り合っている。
コミュ力高っ!
遠くでは貰い泣きして泣いてる先生方がいたり、エドヴィンさんは目が合うとニッコリ微笑むだけ。
悪口を言っていた人を見れば驚いていたり、ばつの悪そうな顔をしていたり様々だ。
「式の準備ができました!皆さんこちらに……」
呼びに来た男性が、中の様子を見てピタリと止まる。
そりゃそうだよね、しんと静まり返る中泣いている女の子がいるんだから。
彼と目が合い、申し訳なくてペコリと頭を下げると驚かれた。
本当に申し訳ない。
式の開始が遅くなることに、色んな人に迷惑をかけることに罪悪感でいっぱいになった。




