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女性が少ない世界でVTuberやります!  作者: ブル(犬川)


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閑話 とある愚かな男達の話



かわいいかわいい僕のメイ♥


大手企業に勤めている僕は女性からはもちろんモテるが、それに慢心することなく日々リサーチは怠らない。

誰もが羨むような最高の妻が欲しかったから全ての女性利用者の履歴を徹底的に調べていた。

丁度僕の仕事が女性利用者を増やす為に女性利用者の視聴動画などを調べデータ化するものだったのも良かった。

会社の役に立つし女性にも喜ばれる崇高な作業だ。犯罪なんかでは決してない。

女性から欲しいものを言われる前にプレゼントする。だからこそ僕はモテるのだ。



「言わなくても私が欲しいものが分かるから、貴方ってほんとに優秀ね!」

「これすごく欲しかったの!どうして分かったの!? うちの夫はクズで言わなきゃ何も分からないのに!」



そうやって口々に女性達は僕を褒め、夫達は悔しそうに僕を睨む。

いやだな。事前に妻の欲しがるものをリサーチできていなかった君達が悪いんだろ?

そんな睨まれてもな。

妻に捨てられたのは僕のせいだって?違うだろう?君の努力不足さ!

そうやって数々の女性からもてはやされ夫になってほしいと懇願され、夫達から恨まれるのは気持ちが良かった。


女性利用者が見ている動画はメイク技術や最新の化粧品や美容家電など、自分の美しさを磨くものばかり。

分かるよ。

女性同士でどちらの方が美しいか、より高級品を持っているかマウントを取り合うものね。

女性は大変だ。

そんな妻の為に最高の贈り物をプレゼントするのができる夫だ。

その為に僕は女性のことを知らなければならないんだ。


そんな女性達の中になぜか1人、他とは違う視聴履歴の女性がいた。

メイという名前の利用者で、まだ14歳で結婚もできない未熟なレディ。

そんな彼女が見ているものの殆どがアニマルものだ。

それもただ動物同士がじゃれあったりうっかりドジをしてしまったりする微笑ましかったりクスッと笑える平和な動画。

そして書き込むコメントも「すごくかわいいです!癒されました(*´ω`*)」そんな優しいコメントで。

他の女性のような「貴女には似合わない」「その塗り方時代遅れなんじゃないの!?」「この美容液使って肌が荒れたのよ!どうしてくれるの!?」「これ使ったけど足細くならないじゃない!」そんな嫌味や文句ばかりのものとは全然違う。

彼女は自称女性YTuberやVTuberの動画を見ても「◯◯さんすごく綺麗だし声も可愛いしお喋りもお上手!迷わず登録しました!」なんて高評価押してコメントし尚且つ登録までしている。

他の女性は「男の癖にキモっ」「女性のフリすんなきしょすぎ」なんて酷い暴言ばかりなのに。

変わってる女性がいるなと、ただの興味本位だったのに。

いつの間にか彼女の履歴を見ているだけで僕の中の何かが押し流され心が温かくなっていた。

それと比例するように、段々と他の女性が醜い怪物に見えるようになっていた。

彼女がまだ未熟なレディだから? ……違う。

他にも小さなレディはいるがその子達が見ているのは可愛らしいお人形やぬいぐるみや化粧品。

まだ大人の女性よりは微笑ましいがコメントは大して変わらない。


「◯◯ちゃんが持ってた!私も欲しい!!」

「あの子よりもっと高いぬいぐるみが欲しいの!」


醜い女性のマウント合戦を子供のうちからしている。

メイだけ特別なんだ。彼女だけが特別……

僕はいつの間にか彼女から目が離せなくなった。



そしてそんな彼女がある日VTuberなんて始めた。

穢らわしい男共と彼女がやり取りするなんて許せないが、メイの可愛らしい姿を見ることができて興奮してる自分もいる。

でも、これは逆に利用できるんじゃないか?

そう閃いてすぐに彼女の親へのお知らせを遮断した。

そのとき、メイの登録した人が非公開になっていることに気付いた。

彼女は賢いから自分が登録した人達が自分のファンから叩かれると思い、避けたんじゃないか?そう思った。

彼女の新たな一面を知る度胸が高鳴る。本当に、なんて優しい女の子なんだろう♥

それと同時に独占したい欲がズルズルと湧き出してくる。

このまま彼女が配信を続ければ有名になって、誰もが彼女を欲しがるようになる。

そうなれば彼女が誘拐されても誰が犯人かなんて分からない。

だって彼女が欲しい男はごまんといるから。

だからそれまで我慢だ。

そう思ってはいても、メイと楽しそうに会話する男共が憎らしくて堪らなかった。

冷静に、バレることがないよう秘密裏に仲間を集めた。

同じ会社の社員を数名、それに犯罪者達(実行犯)も。

犯罪組織はいくつか知ってるが、メイを一人占めしようとするような信用できない組織は使えない。

どこに依頼するかリサーチしているといくつかの犯罪者グループがメイの家に侵入しようとしていることに気付き戦慄した。

もたもたしていたらゴミのような男共に彼女が攫われてしまう!!

慌てて、けれど現状一番信頼できる組織にメイの情報を教え依頼した。


報酬はメイの共有。


奴らもやはり金なんかよりメイの話しに食いついた。

金なんかいらない。メイのことをもっと教えてくれ!と。

その気持ちはよく分かる。俺だってメイのことを何も知らなければ全財産を投げ打ってでも情報を得ただろうから。

それから奴らはメイの家への侵入を試み、ネットを攻撃したりしたが中々上手くいかない。

ただの一般家庭にしてはありえないような厳重な防犯装置に、それだけ父親達もメイに固執しているのだと分かる。

幾度も挑戦しては失敗し、奴らが自費で海外の組織にも協力してもらいある日メイの家のサーバーを突破し、クラッシュさせた。


いける!!


ネットを介したセキュリティは使えなくした。この隙に奴らが侵入しメイを攫ってくるんだ。

もちろんネット以外の防犯装置も用意してるだろうが、奴らはプロだ!

それらを掻い潜り侵入するなんて簡単だろう。

後はのんびりと待つだけだ。


早く僕の元へおいで、メイ♥

君と会えると考えただけで身体が熱くなるよ♥











素早く屋敷へと侵入し、3:3に別れて行動する。

先程雇った大勢の人間で一斉にサーバー攻撃をしクラッシュさせた。

それからメインの電気線を切断しジャミング装置も発動した。これで屋敷内の防犯カメラやブザー、トラップの一部が停止しているはずだ。

他にも別の電気線や個々に搭載した太陽パネル、バッテリーで動くものがあることも分かっているからそれらを避け、破壊しながら進む。

できるならスパイを送り込むか誰かしら仲間に引き込むかしたかったがそっちは無理だったからな。

できる限りのことはした。今ならいけるはずだ!!

警備員が俺達に気付いて警報を鳴らしながらこちらに来るが、時間を稼げればいい。

2人を先に行かせ残った1人が粘着液をばら撒いて近付けなくさせる。

銃を撃ってくるが距離があるため避けるのは簡単だ。心配することは何もない。

そう思ったのに遠くから聞こえるガシャッとした派手で大きな音。多分トラップが発動したんだろう。

「チッ」と舌打ちしながら事前に調べておいた侵入しやすい屋敷の窓から中に入り、罠がないか確認する…と、素早く避ける。

「ぐあっ!」

天井から降ってくる多数のダーツが刺さり仲間が叫ぶ。

くっ、さっと確認した程度では見抜けない巧妙なトラップか!あえて侵入しやすい所を作り罠を張っていたのか!! しかも全員が入るまで発動しなかった!

どこかで見ているのか!

窓を振り返ると全ての窓にシャッターが降り、出られなくされていた。

これは詰みだな。


ネットで噂になっているメイの配信を見てから、世の中にはこんな女がいるのかと衝撃を受けた。

今まで色んな人間の誘拐に携わってきた。

女を誘拐したことは何度もある。しかし基本は依頼人のいらなくなった妻や娘を誘拐して外人に渡すだけの仕事だ。

何の罪もない女を誘拐するのは滅多にない。まぁ、全くないわけでもないが珍しい。

しかし、どの女もクソみたいに口が悪くこちらを罵り醜い顔で怒鳴り散らすから腹が立ってしょうがない。

あまりに酷い場合は殴って黙らせることもあるが、引き渡し先の外人に怒られる。

なんだよ、どうせ大人しくなるようにビビらせるんだから少しくらいいいだろうが!

そんな醜い女を見ている俺らは女への幻想なんて欠片もない。

女なんて体にしか価値がない代物だと本気で思っていた。

メイに出会うまでは。


オカメインコの着ぐるみを着た少女なんて斬新なキャラクター。


絵からも伝わる天真爛漫な笑顔。

可愛らしい声。

こちらを思い遣る言葉。


全てに魅了され欲しくなった。

誘拐を専門にする俺達みたいな後ろ暗い人間が求めてはいけない存在だ。

そんなこと分かっている。それでもこうして配信を見て癒されるくらい許されるだろう?

醜い女に嫌になる気持ちも分かるが、知ってて結婚した夫やそう育てた親が我が子を売るこんなクソみたいな世の中で唯一美しく眩しい存在。

そんなメイに少しくらい救われたっていいだろう?


そう思っていたのに、1人の男からきた依頼で欲が出た。

その男からメイの、藤岡花美(ふじおかはなび)の情報を教えられた。

初めて見る花美はメイとは違い黒髪と黒い目をしていたが、想像した通り柔らかく微笑む女神のような女だった。

これが……メイ。俺の愛する女性。

藤岡花美。

胸が締め付けられるように痛んだ。


欲しい。欲しい。欲しい。


優しい彼女は絶対に俺のことを許してはくれないだろう。

けれど、それでもいい。

一生恨まれてもいいから彼女が欲しかった。



──ガチャ



静かな音を立てドアが開く。

窓はシャッターが閉まり出入り口は1カ所しかない。その扉がゆっくりと開いた。

そこにいたのは金髪に青い目の外人。

事前に調べて知っている。花美の父親の1人、元アメリカ軍人の男だ。

俺が敵う相手じゃない。それでも……

俺は静かにナイフを抜いた。

無表情にこちらを見るその顔を見て、生きて帰れないことを悟った。



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