第5章:帰路と報告 2/2
最終任務を終えた夕刻。
部下からの報告を受ける高山は、ノートと地図と見比べる。
◆霞む未来
その日の任務は、予定通り夕刻前に終了し、兵士たちは、疲労と緊張を抱えながら、香山の麓へと戻ってきた。
顔に浮かぶのは、己の使命をやり遂げたいう気持ちと帰れるという喜びの表情が見て取れた。
兵達の代表が、高山の下へ向い報告した。
遭遇報告は三件。
鬼の姿は確認されたが、接触は避けられた。
負傷者はなし。
高山は、報告を聞いた後に「分かった。」「あの飲み物は必ず飲んでおくように、この集落から貰っている物だ。」
集落から貰ったという飲み物は、一晩といった濃度が濃くならない日中などの濃度が薄い中での山中に於いての作業が必要なことが集落の中でもあるらしく、特に神石の変化は毎日の監視がいるということらしく、その者達が飲んでいる物を高山は兵達に出していた。
「いいか、俺を信用しろと言っているわけでは無い。ただ、集落からの安全薬をもらっているんだ。忘れずに飲むよう、伝えておいてくれ」
「はい!」
兵は、高山に敬礼をすると、高山の前から去って行き、高山は地図を広げ昨日と今日の遭遇位置を重ね、神石の配置と照らし合わせる。
霧の濃度、鬼の行動範囲、兵士の動線――
すべてを記録し、報告書に落とし込んでいく。
「おそらく、発生源となるのはここか…しかし、我々の任務はある程度の位置を絞ることまでだ…それに、神石を上手く使うことで言い方はおかしいが、安全な実験も可能だろう…実験を行う価値がある」
高山は、誰に言うでもなく、静かに呟き地図とノートを見た。
「鬼たちの拠点となる位置は、神石の配置と密接に関係している。
霧の濃度と行動範囲の相関性は、今後の研究に資するだろう。もっと詰める必要もあるが、後は香山から帰った後に一つ一つを見ていると、まとまってくるだろう」
報告書には、冷静な分析と、兵士たちの行動記録が記されていた。
犠牲者の名前は、記号のように並べられ、
鬼との遭遇記録は、淡々と記述されていた。
その夜、高山は一人、天幕の外に立ち、
香山の稜線を見つめていた。
「……これが、強国日本の形か」
その言葉に、誰も答える者はいなかった。
報告書にまとめた高山は天幕の外に立ち、日本の行く末を案じたまま夜が更けていく。




