第4章:鬼の咆哮 2/2
翌日、香山へ探索へ向かう高山の部下。そこで彼らは信じられないものと出くわす。
◆報告と判断
捜索班は三人一組で、指定された区域へと足を踏み入れていた。
「昨日の報告地点は、この先の沢沿いだ」
先頭を歩く兵士が、地図を確認しながら呟き、ふと足を止める。そこには一つの石が見えた。
「これが、神石…か?」
今朝の出発時に、聞いていたある種の結界のような物…毒ガスをここで止めている石がある事を思い出した。
別の兵が口を開く
「確かに…この先と、ここでは微かに違うように感じるな…だが、毒ガスの流出を抑えているだけで、"鬼は分からない"と言ってたな…」
誰も口を開かない。
空気は重く、足音すら不気味に響く。
突然、背後の茂みが揺れた。
「……っ、止まれ!」
三人が一斉に身構える。
銃を構え、茂みに照準を合わせる。
だが、そこから現れたのは――人影のように見える"何か"だった。
その面影は捕虜の服がまだかすかに見えていた…既に人のかたちを保って無く、顔は異様に膨れ、皮膚は青く変色し瞳だけは人を保っていた。
とても純粋な瞳だ。
「……鬼…だ…」
誰かが呟いた瞬間、"鬼"はこちらを捕らえ、ただ歩き突進してきた…歩みの速度は速いわけでも遅いわけでもない…だが、その異様さに兵達は足がすくみながらも後退し、三人の内の一人が銃のトリガーを引き、銃声が山に響く。
一発、二発――だが、鬼は怯まず、ただ歩みを進め一人の兵を瞳で捕らえると、一人の兵士に大きく足を進め、その兵は足元の根につまずき、ただ鬼を見るしか出来なかった。
「うわあああああ!!」
悲鳴。
銃が地面に落ち、兵士の肩に鬼の爪が食い込む。
「後退しろ!!援護!!」
残る二人が発砲し、鬼は二人を静かに見つめ、その場から去り山奥へ姿を消したが、二人は負傷した者を見ると肩から血を流し、傷口を抑えているが立ち上がれず、ただ怯えている…痛みの表情ではなく…恐怖の表情を浮かべている。
「……くそ、応急処置を!」
その場で止血を試みるが、鬼の咆哮が再び響く。
三人は声のした方向を振り返ったが、姿はない…恐らく別班が遭遇したのだろう…雄叫びと射撃音が聞こえ、かすかに人の声が悲鳴ともとれる声が聞こえた。
「この先に入るのは無理だ…鬼が結界から出られるのは…少しのようだが…己の命を優先しろとの命令だったが…」
兵は負傷者を見ると冷や汗を出しながらこう続けた。
「入ったら、全滅だ…確実に…」
この兵は、己の直感で感じていた…"鬼からの負傷は鬼になるのでは"と…
負傷者を抱え、三人は斜面を駆け下りる。
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基地に戻った後、報告が上がる。
「遭遇した鬼は四体。昨日の捕虜と思われます。
負傷者二名。五名いた捕虜の内あと一名は……不明です」
「不明?そうか…逃げたか…」
高山は報告書を見つめ、静かに呟き言葉を続けた。
「……やはり鬼になっていた、か…お前はどう見る?」
高山は報告にあがった兵に尋ねた。
「はっ、どう見るとは…どういう事でしょう…」
「鬼によって負傷者した者のことだ」
高山は座りながら報告に上がった兵を見る。兵の顔は怯えながら答えた。
「じっ自分としては、酷な…残酷な言い方になると思いますが…」
「続けろ」
高山は言いよどむ兵に、強く睨み促した。兵は高山の圧に押されるように続けた。
「殺してしまうべきだと…」
兵は、その先は言えずにただ、高山の前にいた。
「そうか…わかった…確か、負傷者は別に運んでいたな?それとお前達には、この村に昔から伝わる飲み物を渡しているはずだ。忘れずに飲むように」
高山はそう告げ、兵を退席させ立ち上がると静寂に包まれた夜と天を眺め、負傷者達がいる天幕を見た。
「あの者が言ったことは、間違ってはいないだろう…」
高山は銃を片手に持ち、もう片方には油を手にし、静かに天幕へ足を進めた。
その日の晩、銃声が二発と生臭く強烈な匂いが集落を襲った…
その匂いはそう簡単に消えることもなかったが、集落の民は高山に対しては今までの普通の接し方をしていたが、部下たちは、何も言わなかった。
だが、その目には、かつての敬意とは違う、何か冷たいものが宿っていた。
天幕から匂う悪臭…彼らの高山へ対する態度が変わりつつあった。




