最終章:鬼 7/8 <戦場>
名もなき島に着いた高山隊。
秀風が高山に問う。鬼と人との区別は出来るのか?と高山は一言『青い肌だ』
◆戦場
船上、朝の光が海面を照らす中―― 高山は双眼鏡を下ろし、島の輪郭を目視で捉えた。 その瞬間、遠くから鮮明な発砲音が響く。
「…いよいよか」
高山は静かに呟き、すぐに部隊を招集した。
「全員、甲板へ。準備を整えろ。小舟で上陸する。」
兵士たちは整列し、装備を確認しながら緊張の面持ちで高山の前に立つ。 秀風もその列に加わり、静かに拳を握っていた。
船は島の近海まで進み、波の音と砲声が交錯する中、小舟が次々と海へ降ろされ、高山は最後に乗り込み、
「良いか!今回の任務は足止めだ。しかし、本土防衛が絡んだ足止めになる。酷な言い方になるが、生き残ろうとするな!!日本が生き残る為に…その為の礎となるために相手を蹴散らせ!!無駄な死は許さん!!」
その言葉に、兵士たちは黙って頷きながらも、自分達の行動が日本の往く末を担う可能性がある事の責任を痛感している。
高山は続いて発言した。
「あの島では、日本軍と連合軍との戦闘が起きていることは間違いない。だが、鬼も出ているだろう。もし、鬼と遭遇し向かってくるようなら、脚を狙え!!脚を封じる事で、少しでも任務の達成率をあげろっ!!」
秀風が高山に一つと質問をする。
「鬼と人は区別がつくんですか?」
「そうだな…秀風は初めての鬼との遭遇になるのか…青い肌だ。いいか、青い肌をしている者が鬼だ。任務の達成率を上げる為にも躊躇無く撃て、いいな?秀風。」
秀風は、黙って頷き島を見た。近くまで島が来ている。
小舟が浜辺に着くと、兵士たちは素早く展開し、 高山の指示で丘の方角へ進軍を開始する。
道中、焼け焦げた木々と砕けた地形が広がり、 連合軍の進軍跡を見て、高山は所々にみえる残骸を見ながら口にした。
「やつらも馬鹿じゃ無いか…後方からの攻撃を防ぐよう綺麗にしているな…」
高山は後方からの攻撃はしないよう、連合軍の確認のみをするよう、そして、後方と左右から徐々に挟むように進軍指示を出し、左右からの挟む部隊には、高山からの指示があるまで場所に着いたら待機するよう伝え、各々の部隊事に散開し進軍を始めた。
高山を頭とした部隊は、連合軍の後を追うような形で進んでおり、最初に見た焼きの原の大地から少しずつではあるが、緑が増えてきていた。
「緑が増えてきている…何かがあったか…」
秀風が呟くと、坂本が応じる。
「そうだな…連合軍が何かと遭遇した可能性があるな…」
坂本は進軍する歩を緩めることはなく、周囲を見ながら警戒を強めている中、銃声が再び響き、 高山は手を上げて部隊を止めた。
「接触だ。前方で連合軍と日本軍が遭遇したようだ…。」
高山は静かに茂みから交戦状況を見ている中、後方で秀風が、
「ですが、日本軍が見えないようですが…」
「連合軍の先を…もっと先を見るんだ。連合軍の相手が分かる。」
秀風は高山に言われたとおりに、視線を更に奥へ進めると、相手が見えた。日本軍の先頭にいる何かしらのモノが…高山は携帯型の遠望鏡を秀風に渡し、見ることを促す。
「!!あ…あれが、お、鬼…」
「そうだ。あれが鬼だ。秀風、鬼の動きをよく見ておけ」
秀風が遠望鏡越しで見る鬼は、銃撃による弾を受けているにも関わらず、ただ歩を進め、その鬼を盾に後に続く日本兵達が連合軍に対して射撃している。
高山は静かに周りにいる部隊に伝えた。
「我が後方部隊は今から、連合軍の殲滅を行うが、決して油断はするな。これは連合軍に対してでは無く我が軍に対して…特に鬼にだ」
「鬼に対してですか?」
部隊の一人が口を開く、高山は尋ねた兵に答える。
「そうだ、相手が人間ならどうにでもなるが、あっちが我々を仲間と見たら、攻撃はしてこないだろう…しかし、鬼は鬼同士以外の認識がどうなっているのかが分からぬからな。注意が必要って事だ。分かったか?」
「しかし、我が軍は鬼に襲われてはいないように先程見た時は思ったのですが…」
遠望鏡越しに鬼の動きを見た、秀風が疑問を返した。
「もっと、隊列を見る必要があるぞ。秀風。いいか、我が軍は"鬼を盾にしている"、つまり、鬼の前には"我が軍は出ていない"という事は、鬼の敵味方の判断が出来ているかは不明だ。仮に"鬼前に出ることが命を失うと同等"と事前に知ってると、"鬼前に出る人間はいない"とも解釈出来る。」
秀風は遠望鏡を握りしめたまま、鬼の歩みとその背後に続く日本兵の隊列を見つめていた。 鬼は、銃弾を受けながらも歩みを止めず、まるで痛みも恐怖も感じていないかのように見え。連合軍の兵達を狙っているようだった。
高山は部隊に向き直り、声を張った。
「よし、突撃だ。左右の部隊は挟撃に入れ。連合軍は銃以外の兵器も持っている。焼け野原はその証だ。だが、我々はそこを奪い、足場とする。左右の部隊は、指示があるまで待機。挟撃のタイミングは俺が決める。」
兵士たちは頷き、銃を構えながら前進を開始する。 焼け焦げた地面に足を踏み入れると、熱気と硝煙の残り香が肌を刺した。
高山隊は中央突破を図りながら、連合軍の背後を狙う。 丘の斜面を利用し、遮蔽物の影から連合軍の配置を確認する。
「連合軍、減ってはいるが…まだ重火器を持っているな。油断するな。」
高山は手信号で左右の部隊に合図を送り、挟撃の準備を整える。 その瞬間、連合軍の一部が高山隊の接近に気づき、銃撃が始まった。
「遮蔽物を使え!前進は止めるな!」
銃声が響き渡り、焼け野原の中で火花が散る。 高山隊は地形を活かしながら徐々に前進し、連合軍の背後を突く形で圧力をかけていく。
その間にも、前方からは鬼を先頭にした日本軍が進軍を続けていた。 鬼は、連合軍の銃弾を受けながらも倒れず、 その背後から日本兵が射撃を行い、まるで“鬼を盾にした戦術”が成立しているようだった。
秀風はその光景を見ながら、心の中で呟いた。
「これは…人間の戦いじゃない…」
鬼を盾にし進軍する。日本軍。
その中に突撃し、連合軍を叩きに向かう少数の高山隊。
彼らは鬼を味方に出来るのか?




