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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第九話 バルトスの少年

「ガイルさんって、なんでタンクになったんですか?」


 依頼の合間、ミナがふと、そんなことを聞いてきた。


「いい質問だな」


 俺は、少し懐かしい気持ちになりながら、昔のことを思い出していた。



 俺の生まれ故郷、バルトスは、鍛冶と武具作りで栄えた町だった。丈夫な鎧、頑丈な盾。町中の誰もが、「打たれ強さ」や「頑丈さ」に、ある種の誇りを持っていた。


 子供の頃の俺は、腕力もそこまでなく、足も速くなかった。だが、なぜか殴られても、あまり痛みを感じない性質だった。


 地元の悪童グループの中で、俺はいつしか「殴られ役」を買って出るようになっていた。誰かが喧嘩を売られそうになると、代わりに前に出る。殴られても、涼しい顔で立っている。それだけで、周りからは「すごい奴」として扱われた。


「お前、痛くねえのか」


「別に、大したことねえよ」


 そう答えるたびに、仲間たちの尊敬の眼差しを浴びるのが、たまらなく心地よかった。


 そんな環境で育った俺にとって、冒険者ギルドの適性検査で「タンク向き」という結果が出たのは、運命のようにさえ感じられた。


「これだ。俺の生きる道は、これだ」


 当時の俺は、本気でそう思っていた。



「――ってわけで、まあ、天職に出会えたってことだな」


 俺がそう締めくくると、ミナは、目を輝かせながら聞き入っていた。


「素敵な話ですね!」


「だろ?」


 少し離れた場所で聞いていたロウが、ぼそりと呟いた。


「それ、単に痛みに鈍いだけの話じゃない?」


「……夢のある言い方をしてくれ」


「事実は事実だから」


 ヴァンも、特にコメントすることなく、黙って話を聞き流していた。



 その夜、俺は久しぶりに、バルトスの実家から届いた手紙を開いた。


『元気にしているか。たまには顔を見せに帰ってこい』


 母からの、いつも通りの短い手紙だった。


 もう十八年、この街で戦い続けている。バルトスを出た頃の自分と、今の自分と、果たしてどれだけ変わったのだろうか。


 そんなことを考えながら、俺は手紙を、丁寧に折りたたんだ。

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