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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第八話 空回りの特訓

 あの日から、俺は密かに、自分の戦い方を見直そうとしていた。


 あの本物のタンクのように、無駄な被弾を減らし、もっと効率よく仲間を守れないか。夜な夜な、一人で盾の動かし方を練習してみたりもした。


 だが、これが、思いのほかうまくいかなかった。


「今日は、なんかガイルさん、動き変じゃないですか?」


 依頼中、ミナがそう心配そうに声をかけてきた。


「い、いつも通りだが」


 実際は、いつも通りではなかった。攻撃を受け流そうと変に体を捻った結果、いつも以上に無防備な体勢になり、余計にダメージを受けてしまう場面が続いていた。


「ぐああッ」


 いつもの掛け声も、今日はどこか力ない響きになってしまう。



 依頼を終えた後、ヴァンが、珍しく真剣な顔で切り出してきた。


「なあ、最近、変な動きしてるだろ」


「……分かるか」


「分かる。今日なんて、二回、避けられた攻撃を無理に受け止めようとしてたぞ」


 図星を突かれ、俺は少し黙り込んだ。


「あの、Aランクのタンクみたいに、なりたいと思ったんだよ。もっと上手くやれたら、お前らも楽になるだろうし」


 ヴァンは、しばらく黙って俺を見ていたが、やがて、小さくため息をついた。


「別に、そんなの求めてない」


「でも」


「あの人のやり方は、あの人が何年もかけて磨いたもんだろ。急に真似したところで、身につくもんじゃない。それより、変に動き変えて、余計怪我するリスクの方が高い」


 ヴァンの言葉に、ロウも頷いた。


「今日の動き、正直、怖かった。いつものガイルの方が、まだ安定してる」


「いつものって、あの雑な受け止め方だぞ」


「雑だけど、安定してる。急に変えられる方が、怖い」


 二人の言葉に、俺は、なんとも言えない気持ちになった。



 その夜、オーグが、珍しく自分から話しかけてきた。


「無理すんな」


「……ああ」


「今のままでいいって、前も言った」


「ああ、言ってたな」


 オーグは、それだけ言うと、また黙々と荷物の点検に戻っていった。


 その背中を見ながら、俺は、少し考えた。


 あの本物のタンクのようにはなれないかもしれない。だが、少なくとも、今この仲間たちは、俺のやり方を、俺のやり方のまま、必要としてくれているらしかった。


 その事実だけで、なんだか、少しだけ、肩の力が抜けた気がした。


 翌日から、俺は、無理な変化を試みるのをやめ、いつも通りのやり方に戻すことにした。


「俺が壁だ!」


 いつもの掛け声を上げ、いつも通り、全身で攻撃を受け止める。


「ガイルさん、やっぱりそれです!」


 ミナが、嬉しそうにそう声を上げた。


 俺は、その声に、いつも通り、悪くない気分になっていた。

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