第八話 空回りの特訓
あの日から、俺は密かに、自分の戦い方を見直そうとしていた。
あの本物のタンクのように、無駄な被弾を減らし、もっと効率よく仲間を守れないか。夜な夜な、一人で盾の動かし方を練習してみたりもした。
だが、これが、思いのほかうまくいかなかった。
「今日は、なんかガイルさん、動き変じゃないですか?」
依頼中、ミナがそう心配そうに声をかけてきた。
「い、いつも通りだが」
実際は、いつも通りではなかった。攻撃を受け流そうと変に体を捻った結果、いつも以上に無防備な体勢になり、余計にダメージを受けてしまう場面が続いていた。
「ぐああッ」
いつもの掛け声も、今日はどこか力ない響きになってしまう。
*
依頼を終えた後、ヴァンが、珍しく真剣な顔で切り出してきた。
「なあ、最近、変な動きしてるだろ」
「……分かるか」
「分かる。今日なんて、二回、避けられた攻撃を無理に受け止めようとしてたぞ」
図星を突かれ、俺は少し黙り込んだ。
「あの、Aランクのタンクみたいに、なりたいと思ったんだよ。もっと上手くやれたら、お前らも楽になるだろうし」
ヴァンは、しばらく黙って俺を見ていたが、やがて、小さくため息をついた。
「別に、そんなの求めてない」
「でも」
「あの人のやり方は、あの人が何年もかけて磨いたもんだろ。急に真似したところで、身につくもんじゃない。それより、変に動き変えて、余計怪我するリスクの方が高い」
ヴァンの言葉に、ロウも頷いた。
「今日の動き、正直、怖かった。いつものガイルの方が、まだ安定してる」
「いつものって、あの雑な受け止め方だぞ」
「雑だけど、安定してる。急に変えられる方が、怖い」
二人の言葉に、俺は、なんとも言えない気持ちになった。
*
その夜、オーグが、珍しく自分から話しかけてきた。
「無理すんな」
「……ああ」
「今のままでいいって、前も言った」
「ああ、言ってたな」
オーグは、それだけ言うと、また黙々と荷物の点検に戻っていった。
その背中を見ながら、俺は、少し考えた。
あの本物のタンクのようにはなれないかもしれない。だが、少なくとも、今この仲間たちは、俺のやり方を、俺のやり方のまま、必要としてくれているらしかった。
その事実だけで、なんだか、少しだけ、肩の力が抜けた気がした。
翌日から、俺は、無理な変化を試みるのをやめ、いつも通りのやり方に戻すことにした。
「俺が壁だ!」
いつもの掛け声を上げ、いつも通り、全身で攻撃を受け止める。
「ガイルさん、やっぱりそれです!」
ミナが、嬉しそうにそう声を上げた。
俺は、その声に、いつも通り、悪くない気分になっていた。




