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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第七話 本物のタンク

 その日は、珍しく他パーティーとの合同依頼だった。「竜骨の大穴」という、Aランクのダンジョン。竜種の骨が地層のように積み重なっているという、規模も危険度も、普段とは桁違いの現場だった。


 合同を組んだのは、フェリシオンでも名の知れたAランクパーティー。そのタンクを務める男が、開始早々、俺の目を引いた。


「危ない、下がれ!」


 男は、盾を巧みに使い、魔物の攻撃を最小限の動きで受け流していく。傷一つ負わず、しかも味方の被弾すら未然に防いでいる。


「……すごいな」


 思わず、そう漏らしてしまった。


 依頼が進むにつれ、その差は、より鮮明になっていった。俺が全身で受け止めている攻撃を、あの男は、涼しい顔で受け流す。同じ「タンク」という役割のはずなのに、まるで別物だった。



 休憩中、その男が、こちらに声をかけてきた。


「あんたも、タンクか」


「ああ」


「見てたけど、体張るタイプだな」


「まあ、それが俺のやり方だからな」


「悪くはないと思うが、その歳で、その被弾数はキツくないか」


 その一言に、俺は、いつもとは違う種類の動揺を覚えた。


 言葉に詰まっている俺を見て、男は、特に悪気もなさそうに、そのまま離れていった。



 その夜、いつものように打ち上げの席で、俺は珍しく黙り込んでいた。


「どうした、今日は静かだな」


 ヴァンが、珍しくそう声をかけてきた。


「……いや、今日一緒だったタンク、すごかったなと思って」


「まあ、あっちはAランクパーティーのエースだからな」


 ヴァンの、あっさりとした肯定が、今日はやけに堪えた。


「俺のやり方って、やっぱ間違ってるのかもな……」


 珍しく弱気なことを漏らす俺に、ロウが、いつもの調子で言った。


「間違ってるとは言わないけど、非効率ではあると思う」


「今、そういうこと言わなくても……」


「でも」


 ロウが、続けた。


「あの人と同じことガイルがやろうとしても、多分できないと思う。ガイルはガイルのやり方でいいんじゃない」


「それ、慰めてるのか?」


「慰めてはない。事実を言ってるだけ」


 オーグが、そこに、ぼそりと付け加えた。


「今のままで、いい」


 その短い一言に、俺は少しだけ、救われたような気持ちになった。


 もっとも、この日感じた小さな動揺が、この先の自分にとって、どういう意味を持つことになるのか。この時の俺には、まだ分かっていなかった。

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