第七話 本物のタンク
その日は、珍しく他パーティーとの合同依頼だった。「竜骨の大穴」という、Aランクのダンジョン。竜種の骨が地層のように積み重なっているという、規模も危険度も、普段とは桁違いの現場だった。
合同を組んだのは、フェリシオンでも名の知れたAランクパーティー。そのタンクを務める男が、開始早々、俺の目を引いた。
「危ない、下がれ!」
男は、盾を巧みに使い、魔物の攻撃を最小限の動きで受け流していく。傷一つ負わず、しかも味方の被弾すら未然に防いでいる。
「……すごいな」
思わず、そう漏らしてしまった。
依頼が進むにつれ、その差は、より鮮明になっていった。俺が全身で受け止めている攻撃を、あの男は、涼しい顔で受け流す。同じ「タンク」という役割のはずなのに、まるで別物だった。
*
休憩中、その男が、こちらに声をかけてきた。
「あんたも、タンクか」
「ああ」
「見てたけど、体張るタイプだな」
「まあ、それが俺のやり方だからな」
「悪くはないと思うが、その歳で、その被弾数はキツくないか」
その一言に、俺は、いつもとは違う種類の動揺を覚えた。
言葉に詰まっている俺を見て、男は、特に悪気もなさそうに、そのまま離れていった。
*
その夜、いつものように打ち上げの席で、俺は珍しく黙り込んでいた。
「どうした、今日は静かだな」
ヴァンが、珍しくそう声をかけてきた。
「……いや、今日一緒だったタンク、すごかったなと思って」
「まあ、あっちはAランクパーティーのエースだからな」
ヴァンの、あっさりとした肯定が、今日はやけに堪えた。
「俺のやり方って、やっぱ間違ってるのかもな……」
珍しく弱気なことを漏らす俺に、ロウが、いつもの調子で言った。
「間違ってるとは言わないけど、非効率ではあると思う」
「今、そういうこと言わなくても……」
「でも」
ロウが、続けた。
「あの人と同じことガイルがやろうとしても、多分できないと思う。ガイルはガイルのやり方でいいんじゃない」
「それ、慰めてるのか?」
「慰めてはない。事実を言ってるだけ」
オーグが、そこに、ぼそりと付け加えた。
「今のままで、いい」
その短い一言に、俺は少しだけ、救われたような気持ちになった。
もっとも、この日感じた小さな動揺が、この先の自分にとって、どういう意味を持つことになるのか。この時の俺には、まだ分かっていなかった。




