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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第五話 オーグが語らないこと

「なあ、オーグ」


 依頼の合間、荷物整理をしているオーグに、俺はふと声をかけた。


「お前、うちのパーティーに入って何年になる」


「……十二年」


「そんなになるか」


 思えば、オーグが加入した当時のことを、俺はよく覚えている。


 当時、別のパーティーを追い出されてきたばかりのオーグは、ひどく無口で、誰とも目を合わせようとしなかった。理由を聞けば、前のパーティーで「荷物運びなんて誰でもできる、代わりはいくらでもいる」と、随分ぞんざいな扱いを受けていたらしい。


「あの時、お前が来てくれて、こっちも助かったんだよな」


「……そうか」


「お前の荷運び、正確だし早いし、何よりありがたい」


 俺がそう言うと、オーグは、珍しく少しだけ表情を緩めた。



 その夜、酒場でのことだった。


「そういえば、オーグって、なんでこのパーティーに居続けてるんだろうな」


 俺が、何気なくそう漏らすと、ロウが少し呆れたような顔をした。


「本人に聞けばいいのに」


「聞いたけど、はぐらかされた」


「まあ、あの人、口数少ないから」


 ロウは、そう言いながらも、少し考えるような顔をした。


「たぶんだけど、Aランクの実力あっても、他のパーティーだと『荷物運びなんて誰でもいい』って扱いされるの、あの人分かってるんだと思う。ここは、そうじゃないから」


「そうじゃない?」


「ガイルが、いつもオーグの仕事、ちゃんと褒めるから」


 その言葉に、俺は少し驚いた。


「そんな大したことしてるつもりないけどな」


「本人にそのつもりなくても、伝わってるんじゃない」


 ロウが、珍しく素直にそう言った。



 数日後、依頼帰りの道すがら、俺はもう一度、オーグに話しかけてみた。


「なあ、お前、他のパーティーに移ろうと思ったことないのか。お前の腕なら、もっと条件いいとこ行けるだろ」


 オーグは、しばらく黙っていたが、やがて、ぽつりと言った。


「ここでいい」


「そうか」


「……荷物、ちゃんと見てくれるから」


 それだけ言うと、オーグは、またいつも通り、黙々と歩き始めた。


 その一言の意味を、俺はその時、深くは考えなかった。ただ、なんとなく、悪い気はしなかった。

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