第五話 オーグが語らないこと
「なあ、オーグ」
依頼の合間、荷物整理をしているオーグに、俺はふと声をかけた。
「お前、うちのパーティーに入って何年になる」
「……十二年」
「そんなになるか」
思えば、オーグが加入した当時のことを、俺はよく覚えている。
当時、別のパーティーを追い出されてきたばかりのオーグは、ひどく無口で、誰とも目を合わせようとしなかった。理由を聞けば、前のパーティーで「荷物運びなんて誰でもできる、代わりはいくらでもいる」と、随分ぞんざいな扱いを受けていたらしい。
「あの時、お前が来てくれて、こっちも助かったんだよな」
「……そうか」
「お前の荷運び、正確だし早いし、何よりありがたい」
俺がそう言うと、オーグは、珍しく少しだけ表情を緩めた。
*
その夜、酒場でのことだった。
「そういえば、オーグって、なんでこのパーティーに居続けてるんだろうな」
俺が、何気なくそう漏らすと、ロウが少し呆れたような顔をした。
「本人に聞けばいいのに」
「聞いたけど、はぐらかされた」
「まあ、あの人、口数少ないから」
ロウは、そう言いながらも、少し考えるような顔をした。
「たぶんだけど、Aランクの実力あっても、他のパーティーだと『荷物運びなんて誰でもいい』って扱いされるの、あの人分かってるんだと思う。ここは、そうじゃないから」
「そうじゃない?」
「ガイルが、いつもオーグの仕事、ちゃんと褒めるから」
その言葉に、俺は少し驚いた。
「そんな大したことしてるつもりないけどな」
「本人にそのつもりなくても、伝わってるんじゃない」
ロウが、珍しく素直にそう言った。
*
数日後、依頼帰りの道すがら、俺はもう一度、オーグに話しかけてみた。
「なあ、お前、他のパーティーに移ろうと思ったことないのか。お前の腕なら、もっと条件いいとこ行けるだろ」
オーグは、しばらく黙っていたが、やがて、ぽつりと言った。
「ここでいい」
「そうか」
「……荷物、ちゃんと見てくれるから」
それだけ言うと、オーグは、またいつも通り、黙々と歩き始めた。
その一言の意味を、俺はその時、深くは考えなかった。ただ、なんとなく、悪い気はしなかった。




