表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壁であり続けた男  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/8

第四話 ミナの真似事

 その日潜っていたのは、「霧影の遺跡」というダンジョンだった。ギルド評価はDランク。難易度自体はそう高くないが、視界の悪い霧が立ち込めることで知られ、新人の実戦訓練によく使われる場所だった。


「俺が壁だ!」


 いつも通り、俺は前に出て、魔物の攻撃を受け止めた。骨に響く衝撃と共に、後方の仲間たちの安全を確保する。これが、俺の役目だ。


 その様子を見ていたミナが、何かを決意したような顔をしているのに、俺は気づかなかった。


 次の魔物との遭遇戦。ミナが、突然、俺よりも前に出た。


「私も、前で戦ってみます!」


「お、おい!」


 止める間もなく、ミナは魔物の攻撃範囲に飛び込んでいった。魔法使いが前衛に出るなど、本来ありえない動きだ。


「危ない!」


 ヴァンが、すぐさま間に割って入り、事なきを得たが、ミナは魔物の爪先が掠め、腕に浅い傷を負ってしまった。


「大丈夫か!」


 俺は慌てて駆け寄った。


「す、すいません……ガイルさんみたいに、前に出て戦えたらって、思って」


 その一言に、俺は胸を打たれた。俺の生き様が、こんな形で若い世代に影響を与えている。


「気持ちは嬉しいが、無茶するな。お前の役目は、後ろから支援することだ」


「はい……」


 ミナは、しょんぼりとした様子で頷いた。



 その日の探索を終えた後、ロウが、少し険しい顔で俺に詰め寄ってきた。


「ガイル、あれ、ちゃんと言っておいた方がいいと思う」


「何をだよ」


「ミナに、前に出るのは真似しちゃダメだって。ちゃんと」


「言っただろ、さっき」


「『無茶するな』だけじゃ、伝わってないと思う。あの子、本気でガイルの戦い方を、正しいものだと思ってるから」


 ロウの言葉に、俺は少し面食らった。


「正しいだろ、別に。俺のやり方は」


「ガイルは体が丈夫だから、なんとかなってるだけ。ミナがやったら、下手したら大怪我じゃ済まない」


 その物言いに、俺は少しむっとしたが、ロウの目が、いつになく真剣だったことに気づき、それ以上反論するのはやめておいた。



 翌日、俺はミナを呼び出して、あらためて話をすることにした。


「昨日のことだけどな」


「はい……」


「お前が俺の戦い方に憧れてくれるのは、正直、嬉しい」


「……はい」


「だが、俺の役目と、お前の役目は違う。お前は、後ろから的確に魔法を撃つ。それが、お前にしかできない、大事な役目だ」


 その言葉に、ミナは、少し驚いたような顔をした後、こくりと頷いた。


「分かりました……前には出ません」


「よし」


 俺は、自分がなかなか良いことを言えた気がして、内心で満足していた。


 もっとも、この後もミナが、俺の言動の端々を、あれこれ真似しようとし続けることに、この時の俺は、まだ気づいていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ