第二十話 変わらない日常
フェリシオンに戻った俺を、パーティーの面々は、いつも通りの調子で迎えてくれた。
「お帰り」
「ああ、ただいま」
ヴァンの素っ気ない挨拶にも、なんだか、いつもより温かみを感じた気がした。
「バルトス、どうでした?」
ミナが、興味津々に尋ねてくる。
「まあ、色々思い出したよ」
俺は、それだけ答えて、それ以上は詳しく語らなかった。
*
翌日からの依頼も、これまでと変わらない日々が続いた。
「俺が壁だ!」
いつも通りの掛け声を上げ、魔物の攻撃を受け止める。相変わらず、綺麗に受け流すことはできず、正面から受け止めてしまう。
「ぐああッ」
いつも通りの、大げさな声も上げる。
だが、以前と違うのは、俺自身の中の感覚だった。
これが完璧なやり方だとは、もう思っていなかった。ただ、これが、俺のやり方であり、それを、この仲間たちが、それぞれのやり方で支えてくれている。そのことを、今は、素直に受け止められるようになっていた。
「今の、また効率悪かったけど」
ロウが、いつも通り、淡々とそう指摘してくる。
「分かってるよ」
俺は、以前のように意固地に反論することなく、素直にそう答えた。
「でも、まあ、悪くない」
ロウが、珍しく、そう付け加えた。
「お、なんだよ、その言い方」
「そのままの意味」
ロウは、それだけ言うと、いつも通りの顔で、次の罠の確認に向かっていった。
*
その夜、俺は、久しぶりに防御理論ノートを開いた。
新しいページに、俺は、こんな一文を書き加えた。
『理論だけでは、戦えない。支えてくれる仲間がいて、初めて、俺は前に立ち続けられる』
我ながら、柄にもないことを書いたと思ったが、消す気にはならなかった。
ノートを閉じ、俺は、静かに笑った。
十八年前、この街に出てきた頃の自分に、今の自分を見せてやりたい気持ちに、少しだけなった。




