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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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20/21

第二十話 変わらない日常

 フェリシオンに戻った俺を、パーティーの面々は、いつも通りの調子で迎えてくれた。


「お帰り」


「ああ、ただいま」


 ヴァンの素っ気ない挨拶にも、なんだか、いつもより温かみを感じた気がした。


「バルトス、どうでした?」


 ミナが、興味津々に尋ねてくる。


「まあ、色々思い出したよ」


 俺は、それだけ答えて、それ以上は詳しく語らなかった。



 翌日からの依頼も、これまでと変わらない日々が続いた。


「俺が壁だ!」


 いつも通りの掛け声を上げ、魔物の攻撃を受け止める。相変わらず、綺麗に受け流すことはできず、正面から受け止めてしまう。


「ぐああッ」


 いつも通りの、大げさな声も上げる。


 だが、以前と違うのは、俺自身の中の感覚だった。


 これが完璧なやり方だとは、もう思っていなかった。ただ、これが、俺のやり方であり、それを、この仲間たちが、それぞれのやり方で支えてくれている。そのことを、今は、素直に受け止められるようになっていた。


「今の、また効率悪かったけど」


 ロウが、いつも通り、淡々とそう指摘してくる。


「分かってるよ」


 俺は、以前のように意固地に反論することなく、素直にそう答えた。


「でも、まあ、悪くない」


 ロウが、珍しく、そう付け加えた。


「お、なんだよ、その言い方」


「そのままの意味」


 ロウは、それだけ言うと、いつも通りの顔で、次の罠の確認に向かっていった。



 その夜、俺は、久しぶりに防御理論ノートを開いた。


 新しいページに、俺は、こんな一文を書き加えた。


『理論だけでは、戦えない。支えてくれる仲間がいて、初めて、俺は前に立ち続けられる』


 我ながら、柄にもないことを書いたと思ったが、消す気にはならなかった。


 ノートを閉じ、俺は、静かに笑った。


 十八年前、この街に出てきた頃の自分に、今の自分を見せてやりたい気持ちに、少しだけなった。

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