第二十一話 俺たちの壁
それから数年が経った。
俺は、相変わらず、フェリシオンでタンクを続けている。ランクは、今もBのまま。劇的に腕が上がったわけでもなければ、何か大きな武勇伝を打ち立てたわけでもない。
「俺が壁だ!」
今日も、いつも通りの掛け声と共に、俺は前に出る。
「危ない、下がってろ」
ヴァンが、いつも通り、さりげなくフォローに回る。俺には、もう、それが分かっている。分かった上で、それでも、俺は前に出続けている。
「今の、また無駄に被弾してたけど」
ロウが、いつも通り、淡々と指摘してくる。
「分かってるよ、それくらい」
「まあ、そういうとこも含めて、ガイルだから」
その一言に、俺は、少しだけ照れくさくなった。
「こっちだ」
オーグが、短くそう言って、俺の位置取りを、さりげなく誘導する。もう十年以上の付き合いになる。あいつの一言には、いつも無駄がない。
「ガイルさん、今日も格好良かったです!」
ミナが、変わらず、そう声を弾ませる。彼女も、もうすっかり一人前の魔法使いになった。だが、俺への評価だけは、いつまで経っても変わらないらしい。
*
依頼を終えた帰り道、ギルドの受付で、若い新人らしき冒険者が、俺を見て、こそこそと話しているのが見えた。
「あの人、なんかやたら被弾してるって噂の人だよな」
「よく続けてられるよな、あの歳で」
昔なら、少し気になっていたかもしれない。だが、今の俺は、その言葉を、特に気にすることもなく聞き流せた。
あの連中には、まだ分からないのだろう。
俺一人の力で、ここまで来たわけじゃない。だが、俺がいたから、成り立ってきたものも、確かにある。その両方が、事実なのだと、今は胸を張って言える。
「今日も、お疲れさん」
ヴァンが、いつも通りの調子で、そう声をかけてくる。
「ああ、お疲れ」
俺たちは、いつも通りの顔ぶれで、いつも通りの酒場へと向かった。
これといって特別なことは、何も起きていない。
ただ、この当たり前の日々こそが、俺がこの十八年、いや、それ以上の年月をかけて、積み重ねてきたものなのだと、今は、そう思える。
俺は、これからも、この仲間たちと共に、壁であり続けるつもりだ。
〈了〉
この物語はここで完結となります。
私が投稿中の他作品はコメディ系がメインですが、この作品はその中でもハートフルなものを目指して書いたつもりです。楽しんで頂けましたでしょうか。
ご愛読、誠にありがとうございました!
よろしければ私の他の作品もご覧いただけますと幸いです。




