第二話 報酬分配の夜
依頼を終えた日の夜は、決まってギルド併設の酒場で、パーティーの打ち上げをするのが恒例だった。
「今日の分の報酬、これで頼む」
ギルド職員から手渡された袋を、俺は当然のように開けて中身を確認する。長年やっていると、この重さだけで、大体の金額の見当がつくようになる。
「相変わらず、俺の取り分、ちゃんと入ってるよな」
「入ってるに決まってるだろ」
ヴァンが、面倒くさそうにそう答えた。
報酬は、基本的にパーティー内で均等に分けている。俺としては、これも当然だと思っている。体を張っている分、多少多くもらってもいいくらいだと思っているが、そこは仲間思いの精神で、あえて主張しないでおいてやっている。
「今日の被弾、また過去最多だったらしいじゃないですか」
ミナが、感心したようにそう言った。
「まあな。体張った証だ」
「すごいです、それだけ動けるの」
「タンクってのは、そういうもんだ」
俺がそう答えると、少し離れた席にいた、別のパーティーの男が、こちらをちらりと見ながら、連れに小声で何か話しているのが見えた。
「……あのパーティーの盾、あれで大丈夫なのか」
「ああ、あそこのタンク、いつも派手に被弾してるって噂の」
「よく続いてるよな、あのパーティー」
声を潜めているつもりなのだろうが、酒場の喧騒の中でも、なぜか妙にはっきりと耳に入ってきた。
俺は、特に気にすることもなく、酒を口に運んだ。ああいう連中は、俺の戦い方の本質を分かっていないだけだ。
*
打ち上げも終盤に差し掛かった頃、ロウが、ふと思い出したように口を開いた。
「そういえば、今日の依頼料、ギルドの評価基準だと、ヴァンとオーグの働きが大きかったって記録されてたけど」
「そうなのか?」
「うん。撃破数も、素材回収数も、ほとんど二人の分」
「まあ、俺が引きつけてた分、二人が動きやすかったってだけだろ」
俺がそう返すと、ロウは特に反論もせず、小さく肩をすくめただけだった。
ヴァンは、その会話をよそに、黙々と酒を飲んでいた。何を考えているのか、いつものことながら、あまり表情からは読み取れない。
「オーグは、今日どうだった」
俺がそう聞くと、オーグは短く答えた。
「普通」
「そうか」
相変わらず、口数の少ない男だ。だが、こういう寡黙な男に限って、実は一番分かってくれているものだと、俺は思っている。
*
打ち上げがお開きになり、それぞれ帰路につく中、俺は一人、夜道を歩きながら、今日一日を振り返っていた。
十八年、この街で戦ってきた。多少の被弾は、この仕事の宿命だ。それを分かってくれる仲間がいる。それだけで、十分だった。




