表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壁であり続けた男  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/21

第十八話 バルトスにて

 母からの手紙をきっかけに、俺は久しぶりに、バルトスへ帰ることにした。


 フェリシオンから馬車を乗り継ぎ、半日ほど。鍛冶の煙が立ち上る、懐かしい町並みが見えてくる。


「帰ってきたのね」


 実家の戸を叩くと、母が、変わらない様子で出迎えてくれた。


「久しぶり」


「随分、老けたわね」


「そりゃ、十八年も経ってるからな」


 母は、そう言いながらも、嬉しそうに俺を家に招き入れた。



 翌日、俺は、町を軽く歩いてみることにした。


 鍛冶場からは、相変わらず、金属を打つ音が響いている。子供の頃、この音を聞きながら、殴られ役を買って出ていた自分を思い出す。


「おい、お前、ガイルじゃないか」


 声をかけてきたのは、子供の頃、よく一緒につるんでいた顔ぶれの一人だった。


「久しぶりだな」


「フェリシオンで、タンクやってるんだって?」


「まあな」


「相変わらず、殴られ役か」


 その男が、からかうようにそう言った。


「うるさいな。ちゃんとした仕事だぞ、これでも」


「分かってるって。お前、昔からそういうとこ、変わんねえよな」


 軽口を交わしながら、俺は、少しだけ懐かしい気持ちになった。



 その夜、母と二人で食卓を囲んでいると、母が、ふと尋ねてきた。


「フェリシオンでは、うまくやれてるの?」


「……どうだろうな」


 俺は、少し迷ってから、審査での出来事を、正直に話してみることにした。


 仲間に支えられていたこと、それを知ってショックを受けたこと。


 母は、黙って話を聞いていたが、話し終えると、静かに言った。


「あんた、昔から、そうだったじゃない」


「そうって?」


「殴られても平気な顔してたけど、本当は痛かったでしょう。それでも、みんなのために前に出るのをやめなかった」


「……まあ、そうだな」


「それを、支えてくれる人がいるって、幸せなことだと思うけどね」


 母の言葉に、俺は、しばらく黙り込んだ。


「一人で強くなることだけが、偉いわけじゃないでしょう」


 その一言が、なぜか、これまで聞いたどの言葉よりも、すとんと胸に落ちた。



 フェリシオンへ戻る馬車の中、俺は、窓の外を眺めながら、これまでのことを、あらためて考えていた。


 十八年、前に出続けてきた。それは、決して無駄ではなかった。ただ、俺一人の力だけで、成り立っていたわけでもなかった。


 その両方が、事実なのだと、ようやく、少しだけ、受け入れられる気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ