表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
壁であり続けた男  作者: 中原九尾


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/21

第十七話 ミナには、まだ

 その日の依頼帰り、俺は、荷物整理をしているオーグに、思い切って声をかけてみた。


「なあ、オーグも、審査のこと、知ってたのか」


「知ってた」


 短く、あっさりとした返事だった。


「お前は、何も言わなかったな」


「言う必要、感じなかった」


「なんでだよ」


 オーグは、しばらく手を止め、少し考えるような間を置いてから、答えた。


「フォローするのは、当然のことだと思ってたから」


「当然?」


「ガイル、俺のこと、いつも褒めてくれる。荷物運びの仕事、ちゃんと見てくれる。だから、俺も、できることをしただけ」


 その言葉に、俺は、あの日ロウから聞いた話を思い出した。


「……それ、審査のフォローとは、別の話じゃないか」


「別じゃない」


 オーグは、短くそう言い切った。


「ガイルが、俺らのこと見てくれてるから、俺らも、ガイルのこと見てる。それだけ」


 その一言に、俺は、また少し、胸の奥が熱くなるのを感じた。



 その数日後、俺は、ミナと二人きりで話す機会を作った。


 正直、迷っていた。ミナだけは、まだ、あの審査の真相を知らない。俺のことを、心から尊敬してくれている。その気持ちを、壊すことになるかもしれない。


 だが、都合の悪いことを隠したまま、これまで通りのふりを続けるのは、なんだか違う気がした。


「ミナ、聞いてほしいことがあるんだ」


「なんですか?」


 俺は、審査での出来事を、ゆっくりと、正直に話した。ロウたちがフォローしてくれていたこと、それを偶然知ってしまったこと、自分の実力が、思っていたほどのものではなかったこと。


 話を聞き終えたミナは、しばらく黙っていた。


「……そう、だったんですね」


 その声には、少しの落胆が混じっているように、俺には聞こえた。


「がっかりしたか」


「……正直、ちょっとだけ」


 ミナは、そう言いながらも、すぐに続けた。


「でも」


「でも?」


「ガイルさんが、いつも前に出てくれてたのは、本当のことですよね。今日まで、ずっと」


「それは、そうだけど」


「じゃあ、私が見てきたガイルさんは、嘘じゃないと思います」


 その言葉に、俺は、少し驚いた。


「実力があったかどうかは、別として、ガイルさんが、いつも私たちの前に立ってくれてたことは、本当のことだから」


 ミナは、そう言って、いつも通りの、素直な笑顔を見せた。


 俺は、その笑顔に、何と答えていいか分からず、ただ、小さく頷くことしかできなかった。


 仲間たちの言葉は、少しずつ、俺の中の何かを、静かに変え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ