第十七話 ミナには、まだ
その日の依頼帰り、俺は、荷物整理をしているオーグに、思い切って声をかけてみた。
「なあ、オーグも、審査のこと、知ってたのか」
「知ってた」
短く、あっさりとした返事だった。
「お前は、何も言わなかったな」
「言う必要、感じなかった」
「なんでだよ」
オーグは、しばらく手を止め、少し考えるような間を置いてから、答えた。
「フォローするのは、当然のことだと思ってたから」
「当然?」
「ガイル、俺のこと、いつも褒めてくれる。荷物運びの仕事、ちゃんと見てくれる。だから、俺も、できることをしただけ」
その言葉に、俺は、あの日ロウから聞いた話を思い出した。
「……それ、審査のフォローとは、別の話じゃないか」
「別じゃない」
オーグは、短くそう言い切った。
「ガイルが、俺らのこと見てくれてるから、俺らも、ガイルのこと見てる。それだけ」
その一言に、俺は、また少し、胸の奥が熱くなるのを感じた。
*
その数日後、俺は、ミナと二人きりで話す機会を作った。
正直、迷っていた。ミナだけは、まだ、あの審査の真相を知らない。俺のことを、心から尊敬してくれている。その気持ちを、壊すことになるかもしれない。
だが、都合の悪いことを隠したまま、これまで通りのふりを続けるのは、なんだか違う気がした。
「ミナ、聞いてほしいことがあるんだ」
「なんですか?」
俺は、審査での出来事を、ゆっくりと、正直に話した。ロウたちがフォローしてくれていたこと、それを偶然知ってしまったこと、自分の実力が、思っていたほどのものではなかったこと。
話を聞き終えたミナは、しばらく黙っていた。
「……そう、だったんですね」
その声には、少しの落胆が混じっているように、俺には聞こえた。
「がっかりしたか」
「……正直、ちょっとだけ」
ミナは、そう言いながらも、すぐに続けた。
「でも」
「でも?」
「ガイルさんが、いつも前に出てくれてたのは、本当のことですよね。今日まで、ずっと」
「それは、そうだけど」
「じゃあ、私が見てきたガイルさんは、嘘じゃないと思います」
その言葉に、俺は、少し驚いた。
「実力があったかどうかは、別として、ガイルさんが、いつも私たちの前に立ってくれてたことは、本当のことだから」
ミナは、そう言って、いつも通りの、素直な笑顔を見せた。
俺は、その笑顔に、何と答えていいか分からず、ただ、小さく頷くことしかできなかった。
仲間たちの言葉は、少しずつ、俺の中の何かを、静かに変え始めていた。




