第十六話 聞いてたんだ、あの話
翌日、俺はいつも通り、ギルドに顔を出した。だが、いつものように振る舞うことが、思いのほか難しかった。
「おはよう」
「……おはよう」
ロウが、いつも通りの調子で挨拶してきたが、俺は、うまく言葉を返せなかった。
「どうした、元気ないな」
ヴァンが、そう声をかけてきた。
俺は、しばらく迷ったが、結局、正直に話すことにした。
「昨日、酒場で、お前らの話、聞いてたんだ」
その一言に、ロウとヴァンの表情が、目に見えて固まった。
「……どこから」
「審査で、フォローしてくれてたって話。全部」
二人は、しばらく黙り込んでいた。
「……ごめん」
ロウが、先に口を開いた。
「黙ってたのは、悪かったと思う」
「いや」
俺は、首を横に振った。
「怒ってるわけじゃない。ただ、正直、ショックだった」
「そうだよな」
ヴァンも、気まずそうにそう呟いた。
「十八年、俺なりに積み重ねてきたつもりだった。でも、実際は、お前らに支えられてただけだったんだな」
自嘲気味にそう言うと、ロウが、少し強い口調で返してきた。
「それは、違うと思う」
「え?」
「確かに、審査ではフォローした。でも、それは、ガイルが積み重ねてきたものが無駄だったって意味じゃない」
「じゃあ、何なんだよ」
「十八年、ガイルがずっと前に出続けてきたから、俺らも、それに合わせて動くやり方が、自然と身についたんだと思う。今回のフォローだって、ガイルがいつも通りの位置にいてくれたから、できたことだから」
その言葉に、俺は、しばらく何も言えなかった。
「……それ、本当に、そう思ってるのか」
「思ってる」
ヴァンも、頷いた。
「俺も、同じ意見だ」
二人の言葉を、俺は、すぐには飲み込めなかった。だが、その日は、それ以上、何かを結論づけることもなく、いつも通り、依頼に向かうことにした。
ただ、心の中には、これまでとは少し違う種類の問いが、静かに残り続けていた。
――俺は、この十八年、本当に、何を積み重ねてきたんだろうか。
その答えを、俺はまだ、見つけられずにいた。




