第十五話 真実を知る夜
審査の後、打ち上げの誘いを一旦断り、俺は一人で酒場に立ち寄っていた。祝杯を、まず自分一人でゆっくり味わいたい気分だった。
カウンターの隅に座っていると、店の奥の席から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。ロウとヴァンだった。俺がいることに、二人はまだ気づいていないようだった。
「今日、なんとかなったな」
ヴァンが、そう言うのが聞こえた。
「ギリギリだったけどな。ガイルが前に出る前に、こっちで処理する作戦、うまくいって良かった」
「まあ、あいつ、自分が特別上手く立ち回れたと思ってそうだったけど」
「気づかれなかっただけマシだろ」
俺は、思わず、手にしていたグラスを持つ手を止めた。
「にしても、去年よりだいぶ露骨にフォローしたよな、今回」
「被弾数の基準、本気で厳しくなってたからな。あれ、素でやらせてたら、間違いなく降格だった」
「オーグの位置取りも完璧だったし」
「ミナだけは、最後まで気づいてなかったな」
二人の会話は、そのまま淡々と続いていった。俺の存在に気づかないまま。
俺は、しばらくの間、動けずにいた。
審査の結果は、当然の成果だと思っていた。十八年の積み重ねが、正当に評価されたのだと。
だが、実際は違った。仲間たちが、裏で俺を守るように動いてくれていただけだった。
*
その夜、俺は、誰にも会わずに、一人で家に帰った。
防御理論ノートを開いてみる。十八年分の書き込みが、そこにはびっしりと詰まっている。
この積み重ねは、一体何だったのだろうか。
今まで信じてきたものが、静かに揺らいでいくのを、俺は感じていた。
窓の外は、もうすっかり暗くなっていた。俺は、ノートを閉じ、灯りを消して、その日はそのまま、何も考えないようにして眠りについた。




