第十四話 審査本番
審査当日、俺たちが向かったのは、審査専用に設定された模擬ダンジョンだった。実際の魔物ではなく、ギルドが用意した魔導人形が相手だが、動きや攻撃パターンは、実戦さながらに再現されているらしい。
「では、開始します」
審査官の合図と共に、模擬戦が始まった。
「俺が壁だ!」
いつも通り、俺は前に出て、魔導人形の攻撃を受け止めようとした。だが、なぜか、想定していたよりも早く、ヴァンが先に前へ滑り込んでいた。
「危ない、下がってろ」
「お、おい」
ヴァンが、俺よりも一瞬早く、攻撃の軌道に体を入れて、綺麗に受け流してしまう。
次の攻撃でも、同じようなことが起きた。俺が前に出ようとするたびに、ロウが絶妙なタイミングで罠を無効化し、そもそも攻撃が発生する前に処理してしまう。
「あれ、思ったより攻撃来ないな」
俺は、そう呟きながらも、特に疑問には思わなかった。今日は、調子がいいだけだろうと、単純にそう受け止めていた。
オーグも、いつも以上に的確な位置取りで、俺が下がるべき場面を、さりげなく誘導してくる。
「こっちだ」
その一言に従って動くと、不思議と、危険な場面に遭遇することが少なかった。
ミナだけは、いつも通り、素直に俺の動きに感動していた。
「ガイルさん、今日すごく安定してますね!」
「まあな」
俺は、実際のところ、自分が特別うまく立ち回れているという自覚は薄かったが、ミナにそう言われて、悪い気はしなかった。
*
模擬戦を終え、結果発表を待つ間、審査官が、少し意外そうな顔で書類を確認していた。
「今回、被弾数、去年よりかなり減っていますね」
「そうですか」
「パーティー全体の連携も、去年より良くなっている印象です」
俺は、素直にその言葉を受け止めた。
「まあ、日々の積み重ねの成果だな」
その隣で、ロウとヴァンが、こっそり視線を交わしているのに、俺は気づかなかった。
結果として、ガイル個人の評価は、辛うじてBランクを維持。パーティー全体としても、大きな問題なく審査を通過することができた。
「よかった!」
ミナが、素直に喜びの声を上げた。
「まあ、これも当然の結果だな」
俺は、そう言いながら、内心では満足感でいっぱいだった。
だが、この「当然の結果」が、実際には誰の力によって成り立っていたのか。俺がその真実を知るのは、この日の夜のことだった。




