第十三話 審査前夜
審査を数日後に控えたある夜、俺は、いつもの防御理論ノートを見返しながら、最終確認をしていた。
「これだけ理論を積み重ねてきたんだ。審査くらい、問題ないだろ」
誰にともなく、そう呟く。実技試験の内容は、確か、実際のダンジョンでの模擬戦だったはずだ。いつも通りにやれば、いつも通りの評価が下るはずだった。
*
その頃、俺の知らないところで、こんな会話が交わされていたことを、俺はずっと後になってから知ることになる。
「今度の審査、ガイルの個人評価、正直厳しいと思う」
ロウが、ヴァンとオーグを前に、そう切り出した。
「被弾数、去年よりさらに増えてるしな」
ヴァンが、腕を組みながら頷いた。
「このままだと、Bランク維持、厳しいかもしれない」
「……どうする」
オーグが、短く尋ねた。
「審査当日、俺らがフォローに回るしかないと思う。ガイルが前に出すぎないように、うまく立ち回りを調整する」
「本人に気づかれないようにか」
「気づかれたら、意地張って余計に無茶するだろうし」
ロウのその言葉に、ヴァンとオーグは、揃って苦笑した。
「まあ、今までも似たようなことは、それとなくやってきたしな」
ヴァンが、そう呟いた。
「今回は、ちょっと本気でやる必要がありそうだけど」
ロウが、そう締めくくった。
*
審査前日、俺は、久しぶりに気合いの入った様子で、パーティーの面々に声をかけた。
「明日は、いつも通りのやり方で挑む。俺が前で壁になる。それが、俺たちのスタイルだ」
「はい!」
ミナが、元気よくそう返事をした。
「……ああ、任せとけ」
ヴァンが、いつもより少し柔らかい調子で、そう答えた。
「頑張ろう」
ロウも、珍しく前向きな言葉をかけてきた。
「おう」
オーグも、短くそう頷いた。
俺は、その反応に、少しだけ違和感を覚えたが、深くは考えなかった。仲間たちが、いつも以上に気合いを入れてくれている。それだけのことだと、俺は思っていた。
本当の理由に、俺が気づくのは、もう少し先の話になる。




