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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第十三話 審査前夜

 審査を数日後に控えたある夜、俺は、いつもの防御理論ノートを見返しながら、最終確認をしていた。


「これだけ理論を積み重ねてきたんだ。審査くらい、問題ないだろ」


 誰にともなく、そう呟く。実技試験の内容は、確か、実際のダンジョンでの模擬戦だったはずだ。いつも通りにやれば、いつも通りの評価が下るはずだった。



 その頃、俺の知らないところで、こんな会話が交わされていたことを、俺はずっと後になってから知ることになる。


「今度の審査、ガイルの個人評価、正直厳しいと思う」


 ロウが、ヴァンとオーグを前に、そう切り出した。


「被弾数、去年よりさらに増えてるしな」


 ヴァンが、腕を組みながら頷いた。


「このままだと、Bランク維持、厳しいかもしれない」


「……どうする」


 オーグが、短く尋ねた。


「審査当日、俺らがフォローに回るしかないと思う。ガイルが前に出すぎないように、うまく立ち回りを調整する」


「本人に気づかれないようにか」


「気づかれたら、意地張って余計に無茶するだろうし」


 ロウのその言葉に、ヴァンとオーグは、揃って苦笑した。


「まあ、今までも似たようなことは、それとなくやってきたしな」


 ヴァンが、そう呟いた。


「今回は、ちょっと本気でやる必要がありそうだけど」


 ロウが、そう締めくくった。



 審査前日、俺は、久しぶりに気合いの入った様子で、パーティーの面々に声をかけた。


「明日は、いつも通りのやり方で挑む。俺が前で壁になる。それが、俺たちのスタイルだ」


「はい!」


 ミナが、元気よくそう返事をした。


「……ああ、任せとけ」


 ヴァンが、いつもより少し柔らかい調子で、そう答えた。


「頑張ろう」


 ロウも、珍しく前向きな言葉をかけてきた。


「おう」


 オーグも、短くそう頷いた。


 俺は、その反応に、少しだけ違和感を覚えたが、深くは考えなかった。仲間たちが、いつも以上に気合いを入れてくれている。それだけのことだと、俺は思っていた。


 本当の理由に、俺が気づくのは、もう少し先の話になる。

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