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壁であり続けた男  作者: 中原九尾


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第十一話 受付嬢と被弾数

「今日の依頼報告、これで頼む」


 ギルドの受付で、俺はいつものように書類を提出した。担当の受付嬢は、フェリシオンのギルドに勤めて数年になる、しっかり者の女性だった。


「今日も被弾数、多いですね……」


 彼女は、書類を見ながら、少し困ったような顔をした。


「まあ、それが俺の役目だからな」


「もう少し、避けてもいいと思うんですけど」


「避けたら、後ろの仲間に危険が及ぶ可能性があるだろ。俺はそれを、体を張って防いでるんだよ」


 俺は、少し格好つけながら、そう説明した。彼女に、俺の仕事ぶりを、少しでも良く見てもらいたいという気持ちが、正直あった。


「へえ、そうなんですね」


 彼女は、特に感心した様子もなく、淡々と書類を処理していった。



 その日の帰り道、俺は、ミナに愚痴をこぼしていた。


「受付の子に、あんまり響いてない気がするんだよな」


「え、ガイルさん、あの人狙ってるんですか?」


「ね、狙ってるとかじゃなくてだな。ただ、俺の働きを、正しく評価してほしいだけだ」


「それ、狙ってるってことじゃ……」


 ミナが、そう指摘してきたが、俺は聞こえないふりをした。



 数日後、俺は一計を案じ、受付嬢に、あえて「理論派」の側面をアピールしてみることにした。


「今日の被弾は、実は計算されたものでな」


 俺は、防御理論ノートを取り出し、開いて見せた。


「ここ、この角度で受け止めることで、後方への被害を最小限に抑えられる。俺の被弾数の多さは、いわば、仲間を守るための緻密な計算の結果ってわけだ」


 力説する俺を前に、受付嬢は、少し困ったような笑みを浮かべた。


「あの、それより、怪我の治療費の申請書、こっちにも書いてもらえますか」


「あ、ああ……」


 まったく響いていなかった。



 その夜、酒場で、俺はロウにこの顛末を話した。


「そりゃ、響かないだろ」


 ロウは、あっさりとそう言った。


「なんでだよ」


「怪我の申請書、毎回一番多く出してる人に、理論派アピールされても、説得力ないから」


「うっ」


「治療費、ギルドの経費的にも、地味に負担になってるらしいし」


「そこまで言うか」


 オーグが、隣で静かに酒を飲みながら、ぼそりと呟いた。


「モテるより、まず、怪我減らせ」


「お前まで……」


 その場に、また小さな笑いが起きた。俺は、少し肩を落としながらも、翌日からは、せめて治療費の申請書だけは、丁寧に書くよう心がけることにした。


 もっとも、被弾数そのものが減ることは、結局なかった。

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