第十一話 受付嬢と被弾数
「今日の依頼報告、これで頼む」
ギルドの受付で、俺はいつものように書類を提出した。担当の受付嬢は、フェリシオンのギルドに勤めて数年になる、しっかり者の女性だった。
「今日も被弾数、多いですね……」
彼女は、書類を見ながら、少し困ったような顔をした。
「まあ、それが俺の役目だからな」
「もう少し、避けてもいいと思うんですけど」
「避けたら、後ろの仲間に危険が及ぶ可能性があるだろ。俺はそれを、体を張って防いでるんだよ」
俺は、少し格好つけながら、そう説明した。彼女に、俺の仕事ぶりを、少しでも良く見てもらいたいという気持ちが、正直あった。
「へえ、そうなんですね」
彼女は、特に感心した様子もなく、淡々と書類を処理していった。
*
その日の帰り道、俺は、ミナに愚痴をこぼしていた。
「受付の子に、あんまり響いてない気がするんだよな」
「え、ガイルさん、あの人狙ってるんですか?」
「ね、狙ってるとかじゃなくてだな。ただ、俺の働きを、正しく評価してほしいだけだ」
「それ、狙ってるってことじゃ……」
ミナが、そう指摘してきたが、俺は聞こえないふりをした。
*
数日後、俺は一計を案じ、受付嬢に、あえて「理論派」の側面をアピールしてみることにした。
「今日の被弾は、実は計算されたものでな」
俺は、防御理論ノートを取り出し、開いて見せた。
「ここ、この角度で受け止めることで、後方への被害を最小限に抑えられる。俺の被弾数の多さは、いわば、仲間を守るための緻密な計算の結果ってわけだ」
力説する俺を前に、受付嬢は、少し困ったような笑みを浮かべた。
「あの、それより、怪我の治療費の申請書、こっちにも書いてもらえますか」
「あ、ああ……」
まったく響いていなかった。
*
その夜、酒場で、俺はロウにこの顛末を話した。
「そりゃ、響かないだろ」
ロウは、あっさりとそう言った。
「なんでだよ」
「怪我の申請書、毎回一番多く出してる人に、理論派アピールされても、説得力ないから」
「うっ」
「治療費、ギルドの経費的にも、地味に負担になってるらしいし」
「そこまで言うか」
オーグが、隣で静かに酒を飲みながら、ぼそりと呟いた。
「モテるより、まず、怪我減らせ」
「お前まで……」
その場に、また小さな笑いが起きた。俺は、少し肩を落としながらも、翌日からは、せめて治療費の申請書だけは、丁寧に書くよう心がけることにした。
もっとも、被弾数そのものが減ることは、結局なかった。




