愛の同期(シンクロ)を主様と。鉄の処女アリス、エラー寸前の密室混浴
空飛ぶ浴槽で行われた、リヴィアとの熱狂的なパレードが幕を閉じた。
一億人の歓声を全身に浴びた後、ようやく玉座へと戻ってきたレイン。だが、その背後に静かに、しかし抗いようのない冷たい熱を帯びた「気配」が立つ。
「……おかえりなさいませ、我が王。金竜との『質量ある交流』、随分と楽しそうでしたね」
アリスだった。
無表情な鉄面皮を維持してはいるが、彼女の周囲の空間だけが、嫉妬という名のノイズで大きく歪んでいる。
「アリス、お前も祝祭を楽しめと言ったはずだが」
「ええ、楽しみました。ログを確認し、主様がリヴィアの告白に対し、心拍数を〇・五秒ほど乱した瞬間もすべて記録しました。……あまりに不公平です。私の計算が、エラーを起こしそうです」
アリスがレインの手を取ると、足元の影が泥のように溶け出した。二人はそのまま、現実世界から切り離されたシステムの深部へと引き込まれていった。辿り着いたのは、一億人の喧騒も届かない、帝国の最深部――アリスが自身の権限で構築した、完全なる「密室」だった。
そこには、星屑が溶け込む水面が広がる、二人きりの浴室があった。
「ここは私の管理領域。リヴィアの誇る暴力的な質量こそありませんが……その代わり、データの塵ひとつ逃さず、貴方と『同期』できます」
アリスは躊躇いなく服を脱ぎ捨て、レインと共に静かな水面へと沈み込んだ。
リヴィアが太陽のような温かさなら、アリスの肌は澄んだ泉のように冷たく、けれど驚くほど繊細だ。
彼女は、レインの耳元で囁く。
「主様……私は貴方のシステムであり、守護騎士です。ですが、本当はそれだけでは足りない。貴方の呼吸、貴方の思考、そのすべてを私の中に保存したい……。一秒のズレもなく、貴方の魂(座標)を私と重ねてください」
アリスの指が、レインの胸元――魂の座標がある場所へと吸い寄せられる。
「愛しています、レイン。これはプログラムされた命令ではありません。私の魂が、貴方の魂を求めて書き換わった結果……唯一の『真実』です。……今夜は、誰にも渡しません。私だけに、貴方を解析させてください」
アリスの重すぎる愛が、浴室の静寂を甘く溶かしていく。
一億人の王が、自分だけの騎士に『魂』まで委ねる、濃密で、ノイズひとつない夜が始まった。
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