【強奪】旧時代の軍隊と、実体のない帝国。サーバー室は「燃えないゴミ捨て場」
西暦2200年、太平洋上。
地球統合連盟(U.G.A.)が誇る超弩級空中要塞のブリッジで、統合軍のマクガイヤー大佐は、眼下の日本列島を見下ろしていた。
「作戦開始まで、あと三〇秒。……いいか、目標は旧ゼンニス社の地下最深部、メインサーバー・コアだ。あそこを物理的に制圧すれば、あの増長したガキ(レイン)の支配は終わる。ネットの王とやらも、コンセントを抜かれればただの凡人だ」
U.G.A.は、世界中の国家が統合されて生まれた超巨大統治機構である。
彼らにとって、一プレイヤーが世界経済を揺るがす『RC』を独占し、数百万の民を扇動する現状は、既存の秩序に対する明白な宣戦布告であった。
「突入!」
爆破とともに、最新鋭の強化外骨格を纏ったU.G.A.特殊部隊がサーバー室に雪崩れ込む。
だが、そこには異様な光景が広がっていた。
かつて膨大な熱を発していたはずの数万台のサーバーユニットが、すべて「冷え切って」いた。
「……何だと? 電源が入っていない? いや、基板すら……空なのか!?」
大佐が驚愕に目を見開く中、室内の空気が歪み、一筋のホログラムが立ち上がる。
そこに現れたのは、帝都の玉座でシュガーに果実を食べさせてもらいながら、退屈そうにこちらを見下ろすレインの姿だった。
『よう、連盟のハイエナども。わざわざガラクタの掃除に来てくれたのか?』
「レイン……! 貴様、サーバーをどこへ隠した!? 衛星軌道か? それとも未知のデータセンターか!?」
レインはくっくっと喉を鳴らして笑った。
『まだ気づかないのか? 西暦2200年にもなって、箱の中に魂があると思っているのか。……教えてやる。俺が運営を排除した瞬間、この世界の全データは「オーバーライド(上書き)」された』
レインが指をパチンと鳴らす。
大佐の持つ通信端末、空中要塞の計器、……さらには全世界のインフラを制御するネットワークが、一斉に『レインの紋章』へと書き換えられた。
『このゲームにサーバーなんて場所はもう存在しない。世界中の通信網、衛星、端末の空きメモリ……。インターネットそのものが、俺の国の「サーバー」だ。……お前たちが今立っているその場所は、ただの「燃えないゴミ捨て場」だよ』
「な、何だと……!? 全通信網を分散サーバー化したというのか!? そんなバカな演算制御が――」
『できるさ、俺ならな。……さて、不法侵入の代償を払ってもらおうか。大佐。お前たちのその高価な装備の制御OS、たった今、俺の国の「市民権システム」に統合したぞ』
次の瞬間、U.G.A.兵士たちのヘルメット内に絶望的なシステムメッセージが流れる。
《警告:不法侵入者の市民権ランクが『不適合』に設定されました。所有する全軍事資産を没収。これを換金し、日本サーバーの全市民へRCとしてランダム配分します》
「なっ……バカな! 我々の個人口座が、連盟の軍事予算が、勝手に送金されて――!?」
『働かずに稼ぎたい数百万の民が、お前たちという「豪華な宝箱」を今か今かと待っている。……せいぜい、ネットの海でなぶり殺されるがいい』
レインが冷酷に笑い、ホログラムが消える。
物理的な暴力が、ネットという概念に完全敗北した瞬間だった。
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