【オーバーライド・エボリューション】西暦2200年、サーバー室の主は消え、王が降臨する。数百万の民に示された『市民権ランク』
西暦2200年。世界で最も巨大なエンターテインメント企業の一つが、一夜にして地図から消えた。現実世界では、ゼンニス社の本社ビルから全役員が去り、サーバー室だけが不気味に、だが力強く駆動音を響かせ続けている。
そして、ゲーム『オーバーライド・エンパイア』の内部。
昨日まで空を覆っていた、運営による「行動監視用」の雲は一掃されていた。帝都の広場にいた三万人のプレイヤーたちは、眩しさに目を細めながら、その「青」を見上げていた。
「……ログインできる。おい、制限が解けてるぞ!」
誰かの叫び声を皮切りに、空間のあちこちで光の柱が立ち上がった。運営の圧政やサーバーダウンによってログインを阻まれていた、一般ユーザーたちが一斉に帰還し始めたのだ。
彼らが目にしたのは、かつての殺風景な初期の街並みではない。天を衝くような白亜の城。整然と区画整理された巨大な石造りの街路。そして、その中心にそびえ立つ王宮のバルコニーに立つ、一人の男の姿だった。
『――全ユーザーに通告する』
空そのものが震えるような、圧倒的な音圧。レインの声は、数百万人のシステムメッセージ欄を強制的に埋め尽くし、脳内に直接響き渡る。
『運営は、俺が排除した。今日この時より、このサーバーにおける「法」と「ルール」は、すべて俺が再定義する』
復帰したばかりの一般ユーザーたちは、呆然と立ち尽くした。彼らにとって、レインは「有名な最強プレイヤー」の一人に過ぎなかった。しかし、今目の前にいるのは、システムそのものを従え、世界の空の色すら変えてしまった「神」そのものだった。
『混乱は不要だ。お前たちが望んだ「自由」はここにある。ただし――』
レインが指を空に向けると、数百万人の目の前に、黄金に輝く『市民権ランク』のウィンドウが表示された。
『この世界を維持するのは、俺だ。この国に貢献する者には、運営時代にはあり得なかった報酬と特権を与える。だが、支配を乱す者は――一瞬でこの世界から「消去」する』
バルコニーの背後には、アリス、エルナ、リヴィア、そしてシュガーが並び立つ。三万人の「全裸の精鋭」たちが一斉に膝を突いた。
「「「レイン陛下に、絶対の忠誠を!!」」」
その光景は、一般ユーザーにとって、恐怖であると同時に、抗い難いほどに魅力的な「新しい希望」に見えた。
ログインしているだけで強制的に資産を吸い上げられた暗黒時代は終わった。これからは、この「王」にさえ認められれば、現実世界の地位など関係なく、成功を掴めるのだ。
熱狂が、数百万の民の間を伝染していく。だが、その熱狂の影で――。海外の「公式勇者」たちが、運営のいなくなった日本サーバーという『空白の利権』を狙い、密かに国境へと動き出していた。
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