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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第5章:【オーバーライド・エンパイア編】「先輩、私はあなたの盾になります」――運営を裏切った後輩(GM)と、世界を上書きするバグの楽園――
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【経済革命】運営のゴールドはただのゴミだ。独自通貨『レイン・コイン』発行で、全世界の資産を飲み込む帝国の夜明け

 翌朝。完成したばかりの王宮の廊下には、不自然なほどの静寂が漂っていた。

 レインが玉座の間へ向かう道すがら目にしたのは、昨夜の「地獄」のすさまじさを物語る痕跡こんせきだった。


「……リヴィア。あの柱のひび割れはどうした」

「……あ、あら主様。おはようございます。ええ、その……昨夜、少々『寝返り』を打った際に、翼がかすめてしまったみたいですぞ。ほほほ……」


 黄金のうろこを逆立てて、リヴィアが視線を泳がせる。その隣では、エルナが何故か目の下に薄いクマを作り、アリスはいつも以上に無表情だが、その周囲には殺伐さつばつとした魔力がパチパチと弾けていた。

 最後尾を歩くシュガーだけが、首筋に赤みを帯びながらも勝ち誇った笑みを浮かべている。


 どうやら、昨夜の「実力行使」は誰もが膝(特等席)を譲らぬまま、痛み分けに終わったらしい。


「壊すなと言ったはずだが。……まあいい。今日からが本番だ。シュガー、準備はいいな」


「もちろんです、先輩。運営の連中、今頃パニックで胃に穴が開いてるはずですよ」


 レインが玉座に深く腰を下ろすと、シュガーが空中に巨大なホログラム・ディスプレイを展開した。そこには帝都にひしめく三万人のプレイヤーたちの現状と、外部からこの街を注視する数百万人の視線がデータとして流れている。


「街はできた。だが、彼らはまだ『全裸』であり、何よりこの世界における『信用』がない」


 レインは傍らに立てかけた、アリスが鍛え直し、エルナの祝福を受けた一振りの剣を指差した。それは運営の最高レアリティを数段飛ばしで凌駕りょうがする、バグじみた性能を誇る。


「今日から、この街の市場を開放する。並べるのは俺たちが作った『真の装備』と『本物の資源』だ。だが、それらは運営のゴールドでは売らん」


「先輩の言う通りです。皆さん、お手元の『ゴールド』は今日からただの数字になります」


 シュガーがシステムを上書きし、世界全域のプレイヤーへ向けた『ワールド・アナウンス』を飛ばした。


『――通告。本日より、オーバーライド・エンパイア内における全ての取引は、独自通貨【レイン・コイン(RC)】のみとする。運営発行のゴールドは、一切の価値を持たない』


 その瞬間、街にどよめきが走った。

 三万人のプレイヤーたちが持つ「今まで必死に貯めてきた資産」を、レインは一瞬で紙屑かみくずだと断じたのだ。


 直後、ホログラム・ディスプレイのログが、視認できないほどの速度で跳ね上がった。


『は? ゴールドがゴミになるってマジかよ!?』

『ふざけんな! 俺の100万ゴールドはどうなるんだよ!』

『……それはさすがに、世界中から反発が起きるのでは?』


 民衆の不安と怒号が混じったログが、滝のように画面を埋め尽くしたが、レインは冷酷に口角を上げた。


「価値を決めるのは、もはや無能な運営ではない。『何が買えるか』だ。――アリス、見せてやれ」


「承知いたしました」


 アリスがゲートを開くと、市場の広場に燦然さんぜんと輝く武具や、ステータスを恒久的に上昇させる伝説級の料理が次々と並べられていく。


 どよめきは、瞬時に「熱狂」へと変わった。


「ゴールドなんてどうでもいい! そのコインはどうやって手に入れればいいんだ!?」

「運営のガチャを回すより、この街で働いてコインを稼ぐほうが強くなれるぞ!」


 三万人の全裸プレイヤーたちが、一斉に帝都の「仕事」へと走り出す。

 同時に、シュガーが現実世界のRMTリアルマネートレードサイトの画面を表示した。


「……見てください。早くも【レイン・コイン】に、運営ゴールドの百倍以上の換金レートが付いています。世界中の富豪プレイヤーが、運営の課金を止めて、こっちに資金を流し始めましたよ」


「これが『経済のオーバーライド(上書き)』だ。運営の心臓部さいふを、根こそぎ奪い取る」


 レインの宣言と共に、世界の経済バランスが音を立てて崩壊し始めた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!


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