【建国後の安らぎ】女神たちの「膝上」争奪戦。大浴場に充満する彼女たちの独占欲が地獄すぎる件
一時間で完成した帝都の最奥。運営の既存素材を一切使わず、アリスが純白の魔石を削り出し、エルナが精霊の泉を湧かせた王宮大浴場は、まさに「神々の休息所」だった。
「ふぅ……。建国早々、騒がしすぎたな」
レインは、黄金の装飾が施された天井を仰ぐ。だが、その安らぎは数秒で破られた。
「……レイン様。背中をお流しします。守護騎士としての『密着メンテナンス』を」
最初に入ってきたのはアリスだった。湯気の中に浮かぶ白磁のような肌。彼女は迷うことなくレインの背後に密着し、銀髪を濡らしながらその首筋に顔を寄せる。
「ちょっとアリス! 抜け駆けは禁止って言ったでしょ!」
エルナが真っ赤な顔で飛び込んできた。精霊女王の羽を小さく羽ばたかせ、レインの正面に陣取る。
「私はシステムの監視役なんだから、あんたが不適切な……その、破廉恥な行為をされないように、一番近くで見張ってるんだからね!」
リヴィアが大胆に歩み寄り、レインの右腕に絡みつく。
「主様の隣、それは『温もり』を司るわたくしの指定席。ほほ、この『包容力』こそが、建国の疲れを癒やす王の枕となるのですな」
アリスの鋭い眼光と、エルナの焦燥、リヴィアの余裕が火花を散らす。
「皆さん、そこまでですよ。……先輩、私にも隙間をくれませんか?」
最後に現れたのはシュガーだった。彼女は他の三人の殺気をさらりと受け流し、レインの左側のわずかなスペースに滑り込む。
「リアルの頃、先輩が仕事で寝落ちした時、私がずっと膝を貸してたの、忘れてませんよね? ここは『公式かつリアルな後輩』である私が、先輩の膝(特等席)をいただくのが筋というものです」
四人の視線が、レインの「膝」という一点に集中する。
「……デリート。やはりこの後輩、今すぐログアウトさせるべきですね」
「な、何を! 膝なら私の方が……その、精霊の加護で柔らかいんだから!」
「ふふん、質量と安定感ではわたくしの右に出る者はいませんぞ!」
「権限なら私にありますよ? 先輩の膝、私が予約済みですよね?」
湯気の中に充満する、建国時以上のプレッシャー。三万人のプレイヤーが「四柱の女神」と崇める彼女たちが、なりふり構わず一人の男の「特等席」を奪い合おうとしていた。
「……お前ら、いい加減にしろ」
レインが溜息をつき、短く一言放つ。その瞬間、浴室を支配していた殺気がピタリと止まる。
「ここは俺の国だ。そしてこの風呂は、俺が休むために作らせた。……四人まとめて座らせるほど、俺の膝は広くない」
四人は一斉に息を呑み、その背中を見送るしかなかった。だが、レインが脱衣所へ向かう直前、小さく言葉をこぼした。
「……明日から忙しくなる。今日は好きにしろ。ただし、壊すなよ」
その言葉をどう解釈したのか、シュガーが不敵に口角を上げた。
「……聞こえましたか? 『好きにしろ』。つまり、実力行使が許可されましたよ」
シュガーの挑発に、アリスの抹消アイコンが浮かび、リヴィアが黄金の質量を揺らし、エルナが精霊術を練り上げる。王を欠いた浴室は、女たちの意地と独占欲がぶつかり合う、この世で最も美しい地獄へと変貌した。
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