【建国宣言】三万人の全裸プレイヤーが押し寄せた聖域で、俺は『上書きされた帝国』の独立を宣言する
城壁の上、数万の群衆を見下ろすレインの背後では、建国式典の直前まで「王の隣」を巡る熾烈な争いが繰り広げられていた。
「……リヴィア、エルナ。そこは私の場所です。予備バッテリーだった私を『管理者の守護騎士』として再定義してくださったレイン様の隣は、私の魂の座標そのものなのです」
アリスが冷徹に告げ、オリハルコンの包丁を握る。その視線は、リヴィアの「暴力的な胸の質量」と、エルナの「精霊女王の神気」を鋭く牽制していた。
「リヴィアは伝説の金竜ですぞ! 主様に直していただいたこの身、隣に寄り添って温めて差し上げるのが最高の恩返しですな。ふふん、この『包容力』こそが王の癒やしとなるのですぞ!」
リヴィアは「ぷかぷか」と浮くような胸を強調し、無邪気な自信を見せる。
「ちょっと! 二人ともはしたないわよ! 私はシステムの監視役として、あんたの不適切な運用を監視するために隣にいるだけなんだから! だいたい、独立だなんて完全に規約違反なんだからね!」
精霊女王エルナは真っ赤な顔でレインに指を突きつける。かつて「看守」として彼を縛っていた彼女は、今では自ら現実との接続を切り、一人の女としてその隣を死守していた。
「皆さん、個性が強すぎませんか? でも、リアルで先輩の隣にいた時間は、私が一番長いんですよ。ですよね、先輩? ここは『公式』かつ『後輩』の私と腕でも組んで、世界を驚かせませんか?」
シュガーが余裕の笑みで割り込む。リアルの頃からレインを慕っていた彼女にとって、今の状況は「先輩の夢」の実現でもあった。
アリスの背後に《管理権限:抹消》のアイコンが浮かび上がる。
「……デリート。やはり、今すぐこの不届き者をゴミ箱に叩き落とすべきですね。レイン様の隣に相応しいのは、私一人で十分です」
四人の視線が交差し、爆発寸前の殺気が漂う。だが、眼下の三万人はそのプレッシャーを「王を支える四柱の女神による神気」だと勘違いし、いっそう激しくスコップを振り回して叫んだ。
「――静かにしろ」
レインが短く一言放つ。その瞬間、喧騒も、背後の四人の言い争いも、心臓を掴まれたかのようにピタリと止まった。
レインは一歩、城壁の前へと進み出る。朝日が黒い外套を黄金に縁取り、その姿は運営が認めた「公認」を越え、世界の理そのものを支配する絶対者だった。
「これより、この場所――『自由都市・セクター99』の独立を宣言する」
全プレイヤーの視界に、虹色のシステムメッセージが強制表示される。だが、レインはそこで言葉を止めなかった。
「……いや、セクター99の名は捨てよう。運営が付けた番号など、俺の国には不要だ」
レインが手を掲げると、シュガーが即座に端末を操作し、全サーバーの座標データを書き換える。三万人のプレイヤーが見上げる中、虚空に浮かぶ都市名がノイズと共に再構築されていった。
「我が国の名は、『オーバーライド・エンパイア(上書きされた帝国)』。神のルールはすべて塗り潰した。俺が許す者が生き、俺が望むルールだけが法となる。武器を捨て、従う者には、この街のすべてを約束しよう」
シュガーの操作により、街全体に「無敵フラグ」が上書きされ、巨大な障壁が展開される。
「――文句があるなら、いつでも来い。まとめてゴミ箱 に叩き込んでやる」
地響きのような大歓声が巻き起こった。
三万人の全裸プレイヤーたちが、涙を流して「レイン陛下!」と叫ぶ。
アリスは至福の表情で、その背中を仰いでいた。
一方、エルナは――
「……勝手なんだから、バカ」
小さく毒づきながら、かつて拒絶していたレインの外套を、ぎゅっと握りしめていた。
こうして、世界で最も不謹慎で、最も強固な『絶対聖域』が、一人の男の手によって、産声を上げた。
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