運営の敗北、俺の公認。〜メインサーバーに毒を仕込んだら、「神」を名乗る連中が俺に跪いた〜
深夜二時三十分。
メンテナンスの静寂に沈むセクター99。その空を覆っていた運営の「論理爆弾」が、音もなく霧散を始めていた。
「……消えた、の?」
城壁の上で、エルナが震える拳を握りしめていた。
彼女たちにとって、運営の消去プログラムは抗いようのない「死の宣告」だ。覚悟はしていた。だが、いざ空が晴れると、立っていられないほどの安堵が襲う。
「べ、別に心配なんてしていませんでしたわ!
あの男なら、どうせ死んだふりでもして逃げ回るに決まっていますもの……っ」
リヴィアは涙をボロボロとこぼしながら、子供のように鼻をすすり、空を見上げた。
「……助かったんですぞ。……本当に、本当にもうダメかと思いましたぞ……っ。
主様は、やはり私たちの本物の『神様』だったんですな……!」
アリスだけは、無言でテラスの「彼が消えた場所」を凝視し続けていた。
――そして、空間が歪む。
ノイズと共に、黒い外套を翻したレインが、何事もなかったかのようにそこに現れた。
「レイン様!」
アリスが真っ先に駆け寄る。その瞳には、普段の冷静さからは想像もできないほどの不安と、再会の歓喜が混じり合っていた。
「……ああ。予定通り、運営の連中に『教育』をしてきた。
当面、ここを消そうなんて馬鹿な真似はしないだろう」
レインは淡々と告げるが、纏う空気は、以前よりも鋭く、そして王としての風格に満ちていた。
一方、運営会社のサーバー管理室。
強制ログアウトされたスタッフたちが、脂汗を流しながら自席に戻っていた。
「おい、責任者はどうした!?
さっきゴミ箱 ……いや、消えたあの人は!」
「知らないわよ!
それよりログを見て! セクター99の座標データが、メインサーバーの重要領域に『自己増殖型プロテクト』で固定されてる!」
スタッフの一人が悲鳴を上げる。
レインはただ防衛したのではない。運営の心臓部に「自分が消えればサーバー全体がクラッシュする」という毒を仕込んで帰ったのだ。
その混乱の端で、シュガー――サトウは、自分の端末に届いた小さな通知を見て、口元を緩めた。
それは、レインが去り際、運営のメインフレームを弄った際についでに書き換えた、彼女の「社内評価」と「権限ランク」の向上データだった。
(……先輩。復讐するついでに、私の足場まで固めてくれるなんて。……本当に、甘いんだから)
彼女は、自分が次に成すべきことを理解した。
パニックに陥る上司や同僚を尻目に、彼女は毅然と立ち上がる。
「皆さん、落ち着いてください!
責任者が不在の今、私がこの事態を『公式イベント』として処理するプランを作成しました。承認を!」
*
【ワールドアナウンス:セクター99の領主レインを、当サーバー初の『公認王』として選出しました。これに伴い、全プレイヤーは……】
こうして、運営は「レインに負けた」事実を隠蔽するために、彼を「公式な王」として担ぎ上げる道を選ばされた。
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