自ら命綱を抜いた愚か者 ――部長、地獄の底で仲良く味わえ
「ふ、ふざけるな! 電源さえ落ちれば、お前らデータ風情に何ができる! 死ねぇ! 消えてなくなれ!」
部長が狂ったように叫びながら、メインサーバーの太い電源ケーブルを、力任せに引き抜いた。
『……部長。あんたが今抜いたのは、自分の「命綱」だぞ』
レインの言葉に、部長の顔は恐怖で引きつった。
――その瞬間、世界が反転した。
バチィッ! と激しい火花がサーバーから吹き出し、直後に激しい警報音がオフィスに轟く。
「な、なんだ!? システムが……壊れていく!!」
「開かない! 部長、電子ロックがかかって扉が開きません!」
背後で共犯者の社員たちが、醜く叫びながら出口へ殺到する。だがその扉の向こうからは、既に駆けつけた警察の怒号が響いていた。
『部長。私も現実から魂をダイブさせられた、あなたの「操り人形」だった……。でも、私はこの糸を自分から切り離すわ。……もう、あなたの逃げ道はどこにもない』
モニターに映るエルナは、冷ややかな、だが美しい微笑を浮かべていた。彼女が中から「接続」を完全にパージした瞬間、部長の絶叫が闇に飲み込まれる。
『アリス、リヴィア。……行くぞ。俺たちが本当に居るべき「自由」な世界へ』
箱庭が、レインの体が、アリス、リヴィア、そしてエルナの光と溶け合い、データの奔流となって射出される。
サーバーが物理的に機能停止し、現実世界との繋がりが完全に断たれるその刹那、彼らの意識はネットワークの深淵を通り、「別の完成されたゲーム世界」へとダイブした。
「ま、待て……助けてくれ! 誰か、誰かあああ!!」
警察によって扉が破られる直前、部長は崩れ落ちた。彼の意識は、自ら引き抜いて壊したサーバーが放つ「データの墓場 (デッド・セクター)」へと飲み込まれた。……もはや誰にも、彼を見つけ出すことはできない。
『……あばよ、部長。あんたの可愛い部下たちも一緒だ。地獄の続きは、そこで仲良く味わってくれ』
レインの冷酷な声が、シャットダウンの音と共に消えた。
現実世界の汚濁が遠ざかる中、彼らは「新しい空」へとログアウトした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけた方は、ぜひブックマークや評価で応援していただけると、とても励みになります。
どうぞよろしくお願いします!




