【朗報】俺の味方だけ、再構成(サルベージ)。善意に満ちた民に囲まれ、俺は無自覚に『創造神』へ
「……わかったわよ。そこまで言うなら、あんたのやり方で見せてみなさいな」
食後のティータイム。エルナは頬を膨らませながら、聖域の端に広がる「虚無の境界線」を指差した。彼女の提案は、管理者の権限を使って「旧世界のバックアップ」から有益なリソース……つまり、住民を救い出すことだった。
「レイン様、ゴミを拾い上げる必要はありませんわ。私たちが、新たな生命をデザインすれば済むことです」
アリスは不服そうだが、俺は境界線の向こう、暗黒に消えていく旧世界の残骸を見つめていた。
「いや、アリス。全部を新しく作るより、『馴染みの顔』がいた方がいいだろ。……ここは、俺が選んだものだけを閉じ込めた、外界とは切り離された『箱庭』なんだからな」
「テラリウム……? ふふ、素敵な響きですわ。外の汚れを一切入れない、レイン様だけの飼育槽というわけですね」
アリスがうっとりとその言葉を噛みしめる。俺は頷き、指先を宙に滑らせた。絶対神の権限を行使すれば、宇宙のチリとなったデータの中から、特定の「感情の波長」だけを逆探知するのは容易かった。
「条件検索:俺に害意を抱かず、純粋な善意を持っていた個体――抽出開始」
黄金の光が降り注ぎ、虚無の中から次々と「形」が編み上げられていく。
「……えっ? ここ、どこかしら……」
最初に現れたのは、俺が冒険者になりたての頃、格安で部屋を貸してくれた宿屋の看板娘、ミーナだった。彼女は、パーティを追放された俺に「レインさんは、いつかきっと凄い人になるわ」と、毎日こっそり大盛りのお粥を差し入れてくれた一人だ。
「わあぁ! 精霊さんだ! 綺麗!」
ミーナの足元では、花の妖精たちが、見たこともない神域の草花に目を輝かせて飛び回る。彼女たちも、俺が森で罠にかかっているのを助けた際、魔力の雫を分け与えた縁がある。
さらに、俺の足元にトコトコと寄ってきたのは、旧世界で「呪われた獣」として処分されかかっていた双頭の白犬(ケルベロスの子犬)。
「きゅーん!」
「よしよし。お前も、あの汚い檻よりこっちの方がいいだろ?」
俺が顎の下を撫でてやると、リヴィアが「美味しそうな犬ですな!」と目を輝かせて飛んできた(子犬は必死で俺の背中に隠れたが)。
「……あんた、本当にバカね」
エルナが呆れたように、でも感心したような溜息をついた。
「普通、管理者が住民を選ぶときは、魔力値や生産性で選ぶものよ。なのに、あんたが選んだのは……ただの『自分を慕っていた善人』だけ。それじゃ、統治なんてできないわよ?」
「いいんだよ、エルナ。ここは効率を求める世界じゃない。俺が愛する奴らが、笑って過ごせる場所なんだから」
俺がそう告げると、再構成された人々は、俺の姿を見て一斉に膝をついた。彼らの瞳には、恐怖なんてどこにもない。ただただ、俺という救世主への熱い信頼と、心からの親愛の情が、熱を帯びて宿っていた。
「レイン様……ありがとうございます。また、あなたにお会いできるなんて……」
ミーナが涙を浮かべて微笑む。その瞬間、この箱庭に「人々の祈り」という新しいエネルギーが満ちていくのを感じた。
「……ふん。勝手にしなさい。その代わり、この子たちの居住区の法整備は私が手伝ってあげるわ。不備だらけでバグが出たら、私の責任になるんだから!」
ツンとした態度ながらも、エルナは既にピクシーたちに懐かれ、まんざらでもない様子で魔法の構築を始めている。
「……レイン様。……あんな風に、他の女に慕われるのは少し気に入りませんが。あなたの『テラリウム』を完成させるのも、側近である私の務め、ですわね」
アリスは俺の腰に抱きつき、幸せそうに目を細めた。
かつて俺を「予備部品」として使い捨てた世界。その燃え残りの中から、俺は「光」だけを掬い取った。ここは、選ばれた者だけが住める、究極の聖域。
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