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最強勇者パーティを追放された俺、実は“世界の仕様書”を書いた本人でした  作者: ちいもふ
第3章:聖域に金髪巨乳の守護竜が加わりました 〜今さら戻ってきてと言われても、隣には神話級の美女がいるのでお引き取りください〜
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3万層のサクサク感(アップルパイ) > 王国全域の崩壊。アリスの過保護な情報規制(フィルタリング)

「……な、なんなのよこれぇぇぇ!!」


 平原に響き渡るセシリアの悲鳴。リヴィアによって「強制射出」され、魔物の巣のど真ん中に落とされた彼女たちは、今、かつてない異常事態に直面していた。


 普段なら、一匹倒せば周囲の魔物は警戒して距離を置く。しかし今は違う。 一匹倒せば十匹が。十匹倒せば百匹が、血走った目でセシリアたちを包囲し、文字通り「死ぬまで終わらないウェーブ」となって押し寄せているのだ。


「セシリア! 回復……回復はまだかッ!?」


「無理よ! 魔力が……魔力がもう一滴も残ってないわ!」


 リヴィアが魔物の巣にき散らした【不吉な因果 (フル・ヘイト)】。それは、世界のシステムに対して「この存在は最も優先して排除すべき不具合である」と定義づける、悪魔的な呪いだった。魔物たちは本能的に、彼女たちを「殺さなければならない敵」として認識し、どれほど距離を離しても正確に追跡してくる。


「レイン……助けて……っ、レイン、レイン、レイィィン!!」


 もはや言葉にもならない絶叫を上げ、セシリアたちは泥をいながら逃げ惑う。だが、かつて彼女たちのヘイトを一身に引き受け、安全に戦わせてくれていた「レイン」は、もうこの世界には存在しない。



 一方その頃、座標NULL(レインの庭)。朝の柔らかな光が差し込むダイニングテーブルには、焼きたてのアップルパイの香りが満ちていた。


「……うん、美味い! アリス、このパイの食感、最高だよ。表面のサクサク感が以前より増した気がするな」


 レインが感嘆の声を漏らしながら、パイを口に運ぶ。


「ありがとうございます、レイン様。実は生地の『積層処理レイヤー』を見直しまして……。3万層ほど重ねてみたのですが、お口に合ったようで安心いたしました」


「3万層……。それはもう、料理の域を超えてる気がするが……まあ、美味いからいいか」


 アリスが平然と口にした「3万層」という数値。それは通常の世界なら、物理法則が崩壊して原子レベルで融合しかねない設定だが、レインの聖域ではそれが「最高のサクサク感」として結実していた。


「主様! リヴィアのパイはどこですかな!? 朝のパトロールでお腹がペコペコですぞ!」


「ああ、リヴィアの分もちゃんとあるよ。はい、どうぞ」


「むふー! いただきますですぞ! ……はふっ、はふっ! 美味い……美味いですぞー! ほっぺたの耐久値が限界突破しそうですな!」


 幸せそうに頬張るリヴィア。今朝の「パトロール」で、魔物がセシリアたちを一生追い回すための呪い(ヘイト)をこれでもかとき散らしてきたことなど、レインは知らない。


「……アリス、外の世界の様子はどうだ? 何か変わったことはないか?」


 ふとした拍子にレインが尋ねる。アリスは紅茶を注ぐ手を止めず、優雅な動作で管理ウィンドウを操作し、表示された「警告メッセージ」をゴミ箱へとドラッグ&ドロップした。


『警告:王国全域で魔物のポップバランスが崩壊。王都結界の維持不能――』


「いいえ、レイン様。外の世界は相変わらず『最適化ダウンサイジング』が進んでいるようです。特筆すべきバグも報告されておりませんので、ご安心を」


「そうか。なら、今日は一日ゆっくりできそうだな」


 管理者が微笑み、平和な朝食が続く。その足元で、自分を理不尽に追い出した世界が、システムエラーという名の「悲鳴」を上げながら崩れ始めていることなど、今の彼には微塵みじんも興味のないことだった。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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