【悲報】聖女セシリア、時速600キロでゴミ箱へ。謝罪に訪れた元仲間を待っていた「幸せな光景」
「……見えたわ! あそこよ! あの美しい霧の向こうに、レインがいるはずよ!」
聖女セシリアは、ボロボロになった法衣の裾を翻し、泥まみれになりながら叫んだ。背後には、狼に噛まれた傷を布で縛った重戦士ボルドがいた。その隣では魔力切れで顔色の悪い魔導師ミレーヌが、杖にしがみつき、這いずるようにして命を繋いでいる。
彼らは、「鉄くず」と化した武器を見て、ようやく理解したのだ。 自分たちが最強だったのではない。 レインが、自分たちを最強に「維持」していただけなのだと。
「レインなら……優しいレインなら、私たちがここまで必死に謝れば、きっと許してくれるわ! また前みたいに、私たちの後ろで尽くしてくれるはずよ!」
セシリアは、自分に都合の良い妄想を抱きながら、聖域の境界線へと飛び込んだ。かつてアルディスを拒んだ険しい森は、リヴィアの「神域化」によって、見たこともないほど美しい花園へと作り変えられていた。
「な、何よこれ……!? こんな楽園、見たことないわ!」
「すごい魔素濃度だ……! ここにいるだけで、傷が癒えるぞ!」
彼女たちは、自分たちが今「不法侵入」している自覚もなく、その豊かな環境に目を輝かせる。だが、その楽園の入り口には、一人の少女が、退屈そうに巨大な岩の上に座っていた。
「……んん? なんですかな、その薄汚いアブラムシ共は」
金色の髪をなびかせ、「暴力的な膨らみ(胸部)」を露わにした少女――リヴィアだ。 彼女は今、アリスに命じられた「境界線の警備」という名の暇つぶしをしていた。
「な、何よその女……。ねえ、あなた! レインはどこ!? 救世の聖女である私が、特別に会ってあげるって伝えなさい!」
セシリアがいつもの高圧的な態度でリヴィアを指差す。リヴィアは黄金の瞳を細め、フン、と鼻を鳴らした。
「……あー、主様が言っていた『昔のゴミ箱』の住人たちですな? 主様を荷物持ち扱いし、アリスを死なせかけたという……」
リヴィアの体から、黄金の魔圧が吹き上がる。セシリアたちは心臓を鷲掴みにされたような錯覚を覚え、その場に崩れ落ちた。
「な、何……この魔力……!? 人間じゃない……っ!」
「リヴィアは『お掃除係』ですぞ。主様の庭を汚すバグを、ポイ捨てするのがお仕事ですな」
リヴィアが岩から飛び降り、セシリアの目の前に立つ。
「お願い! レインを呼んで! 私、悪かったと思ってるわ! 謝るから! また私のために、魔法を調整してくれればいいのよ!」
セシリアが縋り付くように叫ぶ。その「反省しているようで、結局は自分たちの利益しか考えていない」言葉を聞いた瞬間、リヴィアの口角が吊り上がった。
「むふー! さすがはゴミですな、言うことが清々しいほど浅ましい! 主様はお茶の時間ですぞ。あなたたちのような『動作不良の旧型』に割くリソース(時間)など、一秒もありませんな!」
「そ、そんな……っ! 私たちは仲間でしょ!? レインだって、独りぼっちは寂しいはずよ!」
「独りぼっち? ぷっ、はははは! おめでたい奴らですな!」
リヴィアが空を指差す。 天を割り、そこに出現したのは一枚の巨大な画面。映し出されたのは、残酷なほどに幸せな光景だ。
テラスでアリスに膝枕をされながら、レインが口に運ぶのは、リヴィアが摘んだばかりの霊草のサラダ。 睦まじく笑い合う二人の姿が、満身創痍の彼女たちを嘲笑うかのように輝いていた。
「あ……。レイン……?」
セシリアが絶望に目を見開く。自分たちが死に物狂いで泥を啜っていた間、レインは見たこともない絶世の美女に傅かれ、神の如き日々を謳歌していた。そこには、自分たちが入り込む余地など、塵ほども残っていなかった。
「さて、ゴミの分別の時間ですな。――デリート(削除)はアリスの担当ですが、リヴィアは『物理的な強制射出』が得意なんですぞ!」
「待っ、待って、ぎゃああああああああ!!」
リヴィアが軽く裏拳を振るう。それだけで、空間そのものがひっくり返り、セシリアたちは時速600キロの「人間の弾丸」となって、自分たちが逃げてきた魔物の巣窟へと、真っ逆さまにブチ込まれていった。
「ふはぁ! お掃除完了ですな! 主様ぁ、ゴミ出ししてきましたぞーーっ!!」
リヴィアの明るい声が、平和な聖域に響き渡る。
一方、空を飛ぶセシリアたちの耳には、アリスが管理ウィンドウ越しに流した、無機質なシステムメッセージだけが響いていた。
『――警告:対象者の「ログイン権限」は永久に剥奪されました。二度と、この座標に触れることは叶いません』
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