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獣人クリルの大陸見聞録  作者:
第一章 旅立ち
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第十五話 魔法のお勉強



 今日、ついに央都への旅が始まった。正確にはわたしにとっては里を出発した時が旅の始まりになるんだろうけど、ロビ達と合流してカレンという新しい友達にも出会い、これが本当のスタートって感じだと思う。  

 旅の道中は今のところ穏やかの一言に尽きる。ほとんど森の中だからね。東方地域は亜人がそれぞれ集落をポツポツと構えているくらいで、それほど開発は進んでいない。その割には長年の商隊の努力もあって道はしっかりと通っているんだよね。

 基本的に手綱を握るのはロビで、たまにカレンが交代したりもしている。わたしとアンティルは後方の荷車に席を作って、景色を眺めたり、若干面倒臭そうにするアンティルに魔法を教わったりして一日が過ぎていった。荷車っていっても中々しっかりとした作りで、衣類などを即席のクッションにして座ればそれほど居心地は悪くない。



 さて、わたしはと言うと今は何よりも早く足手まといにならない力を付けないといけない。そのためにもまずは魔法の扱いをある程度、形にしなくちゃと少し焦っている。この間、アンティルに覚えは悪くないと言ってもらえたから、順調には来てるんだろうけど。

 今取り組んでいるのは自分の魔力を感じること。そしてそれをコントロールすること。

 アンティルが言うには種族に関係なく誰にでも多かれ少なかれ魔力っていうものが備わっているそうなんだけど、いわゆる魔法を使うには個人の資質が大きく関わるらしい。



 わたしは魔法って言ったらお伽話に出てくるような、『星を降らせる魔法』とか『人を生き返らせる魔法』みたいな派手なヤツをバンバン使って周りを圧倒するものだと思ってたんだけど、アンティルに言わせればそれは見た目重視の効率の悪い魔法なのだそうだ。

 魔法にはわたしが思い描いていたような『外に放つ魔法』と『内に留める魔法』があるらしい。『外に放つ魔法』はもちろん魔法使いの代名詞で、炎を放ったり水を生み出したりと便利なものなんだけど、魔力を投げ捨てるようなもので、何も考えずに連発しているとすぐに魔力切れになるそうだ。戦場での魔力切れは死に直結する。だから魔法使いは何があっても魔力切れを起こさないことを一番に考えなければいけないってすでに何度も言われている。

 


「派手な魔法を連発するやつはただの馬鹿だ」



 そんな魔法をまず教えてもらえると夢見ていたわたしは最初の一言でそう釘を刺された。怒っているわけではないんだろうけど、その事を話す時のアンティルは何というか凄みが増す気がする。何か思うところがあるのかなって感じもするけど、それに関しては反論を許さないような口振りなのでわたしも素直に従っている。まあ、そもそも魔法の素人がプロに何を口答えするんだって話だけど。



 そういう訳で、わたしはまず『内に留める魔法』を徹底的に習得する予定になっている。派手さには欠けるけど、『内に留める魔法』は魔力をほとんど消費しないし、身体能力の底上げや防御に役立つ魔法だから、この魔法の練度はそのまま戦闘の安定感に繋がる。アンティル曰く、「優秀な魔法使いは怪我をしない」らしい。まず第一に考えるべきことは、死なないこと。そのためには魔力量の管理と『内に留める魔法』の修練から始めるそうだ。



 まずは自分の中にある魔力を感じること。これは何となくできるようになった。今までそんなもの感じたことはなかったけど、わたしにも魔力があると教えてもらってからは、意識を集中させると自分の中にグルグル渦巻いている気の流れみたいなものがあるって気付いた。これが魔力なのだそうだ。

 そして次は魔力のコントロール。必要な場所に必要なだけの魔力を移動させ、留める。例えば、手、腕とか。脚に魔力を集めれば風のように走り回ることもできる。言うのは簡単なんだけど、これがけっこう難しい。だけど、この魔力のコントロールが全ての魔法の基本で、優秀な魔法使いはみんな魔力のコントロールが上手だって言うもんだから、わたしもまずはこれを頑張ろう。



 ところで今は夕食用に森で狩りをしているところだ。何でこんなことをしてるのかって言うと、昼間は馬車に乗せてもらってばかりだし、食事も一人や二人増えても変わらないからと用意してもらえることになってしまったから、せめて新鮮な肉を獲って来るってわたしから言い出したから。少しくらい仕事がないと落ち着かないんだよね。

 ちなみにアンティルに言われて移動中は常に魔力をコントロールしながら走っている。確かに上手くいく時は物凄いスピードで駆け回れるんだけど、森の中みたいに足場が悪くて障害物も多いところだと全然思うようにいかない。まあそれも含めてのコントロールの練習ってことなんだろうな。

 とにかく今はやれることをやるだけ。しばらくは全力で魔力のコントロールをしながらの狩りに取り組んで、次のステップに行こう。



「お、こいつは大物だな。さすがは狩りの名人だ。でも無理はすんじゃねえぞ。備蓄は一応あるからな」



 今日の獲物は立派な角を持った雄鹿だ。この辺りの森は里の周りと生態系はあんまり変わらないから大丈夫だけど、この先の森ではもうちょっと注意しながら探索しないとな。また、どこかで魔穴の発生もあるかもしれないし。

 いつもの軽口だけどロビが今夜の居営地から離れてこんなところまで出迎えに来てくれたのも、心配してくれてるからなのかな。あんまり子供扱いされるのも嫌だけど、昔から何かとわたしに構ってくれて、そこは素直に感謝してる。わたしが外の世界に興味を持ったのもロビが色んな話をしてくれたからだと思う。早く一人前の冒険者になって、何か恩返しできたらいいんだけどな。

 


 しばらくはこんな日が続くんだと思う。央都はまだまだ先。森林地帯を抜ければその先にはすごく綺麗な湖沼地域があるって聞いている。世界最大の湖――ニージャ湖の畔には亜人の領域最大の都市があるらしい。そこも綺麗な街なんだろうな。無事に辿り着けるように、一日一日を頑張ろう。




 

 




 

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