鶴の一声
前回のあらすじ!
わたし達は悪い人間をと対峙した!そして退治した!
「ってなわけで、生け捕りは出来なかった。ごめん。」
「ま、大丈夫じゃねーか?ウチには最強のブレーンと、頭脳派魔王がいるからよ。」
わたし達は、朝ごはんついでに会議をしていた。珍しくライム君もいて、パンと、赤い草みたいな野菜を食べてる(というか吸収してる)。
「あと、いい加減、ハルにも詳しく伝えた方がいいんじゃねーか?そろそろ、俺様も隠すのがダルくなってきたぞ。」
「オレもそう思うっす。オレ達だけで解決したところで……いや、オレは魔王様とラウ姉さんの判断を待つっす。」
「なんでだよ、クロ?」
「流石に、オレの一存では決められないっす。オレはただの『戦士』っすから。」
「……そうかよ。」
会話が途切れ、みんなが黙ってしまった。沈黙を破ったのはライム君。
「ハルを、仲間として、受け入れた以上、いずれは、伝えなければ、いけない。その時は、遅かれ早かれ、来る。」
「……そうだね。」
ラウネちゃんが絞り出したような声で呟いた。わたしからも意見を出した方がいいのかな?
「わたしは、みんなが言いたくないなら……それでもいいよ!世の中には、知らないほうが良いこともあるって、友達が言ってたし!」
わたしがそう言った途端、クロ君が俯いて、ナイルちゃんが目を逸らし、リュウ君が頭を掻いた。
「いや、ハルちゃんは知るべきだと思う。」
そう言うラウネちゃんの声は掠れていた。
……わたし、何か変なこと言ったのかな……?みんなの反応が明らかにおかしかった。どこがダメだった?
……『世の中』じゃないか。……『知らないほうが良い』でもなさそう、それなら最後まで秘密にしようとすると思うから。じゃあ、『友達』?
ん?
あの人間たちが持ってた毒入りのアメチャン、鼻がきけばにおいで気付かれるのに、何のために作ったのか……。
わたしの家族、友達、居なくなったのはつい最近。でもわたしだけは無事。それは何故?
虫の毒に、わたしは耐性がある。でも他のみんなは食べちゃダメって言った、それはたぶん、みんなは毒に耐性が無いから。
え、そんな
あの人間たちは、わたしに毒を食べさせた。それはわたしにも毒が効くと思っていたから。
……嘘
「ハルっち!?」
わたしは自分の予想が恐ろしいあまり、椅子ごと後ろに倒れた。頭を打って痛い。
……まさか
わたしの友達や家族……みんなは、あの人間たちに…………。
「まさか、わたしの友達は……」
「……みんな、隠し事、向いてないね。ボク達が、言うまでもなく、気付いちゃったよ。ハルは、賢いから。」
「まぁ、いずれそうなるだろうとは思ってたぜ。」
思考が停滞する。
「ライムの調査で、奴らのアジトの場所はほぼ特定できている。明日には、攻撃の準備が整うだろう。だが、我の見立てでは……ハルの同族の生存は絶望的であろうな。」
「……ごめん」
「ラウ姉?」
「ごめん、私が悪いんだ。元から、この平野だけじゃなく、森まで私達の管轄する区域にしようって話は、人間の王様とも話してて。でも、私は先延ばしにした。人手が足りないからって。私が動いたのは、森の近くの気温が下がってるって聞いた時。でもその時には、もう手遅れだったんだ……。」
「……異常な、環境変化は、その地で、何かが起こった証拠。魔力や、その他の力の、バランスが崩れる。だから、その時には、もう遅い。」
「私は……それなのに、ハルちゃんを仲間に入れようとして……。友達みたいに、姉みたいに振る舞おうとして……。こんなじゃ、『大将』失格……いや、わたしなんて……」
「そんな事無い!人手が足りないって言ったのはあたしだし、みんな同調してたじゃん。だからラウ姉は、クロ君とか、ハルっちを仲間に入れようとしたりして対応してたじゃん!」
「……大丈夫っすか?起きるっす、ハルさん。今起こしてあげるっすから。」
「責任者は私だった……。最終決定を下したのは私……。みんなは悪くない……。私が全部……。リーダーはしっかりしてなきゃいけないのに……。私が経験値不足だった……。」
「違う!ラウ姉は頑張ってた!」
「頑張るだけじゃ覆せない事もあるんだよ、ナイルちゃん。」
「だ、黙れ!このあたしが失敗を認めてるんだ!それなのに、」
「おい、止めろ女狐。それ以上やるなら俺様が相手になるぜ。」
「…………お前なぞ、焼き尽くしてやるわ、若き龍王。」
「おう、上等だ。それで気が済むんなら焼き尽くされてやるぜ。」
「まずい、みんな、避難、して!!」
「ハルさん、ごめんっす。こうなったらオレ達じゃ手が出せない、巻き込まれる前に逃げるっすよ!」
「止めて!!!」
やっと、わるいにんげんたちがわたしのともだちやかぞくをどくをつかってつかまえてころしてることにきづかなかったのはもりをじぶんたちのかんりかにおこうというあんがでていたにもかかわらずひとでぶそくをりゆうにそれをさきおくりにしたじぶんのせいだとかんがえたらうねちゃんとじぶんがはんたいしたせいでもりをかんりかにおけなかったとしゅちょうするないるちゃんがけんかしてそれをとめようとしたりゅうくんがないるちゃんといっしょくそくはつのじょうたいになってしまいてにおえなくなったみんながにげようとしていたところまで理解が追いついた。
いややっぱり整理出来てない。でもわたしはもう落ち着いた。
「なんで喧嘩してるの?みんなは何も悪くないよ!悪いのは人間!」
「……そうだよ、こいつらは自責の念に駆られて暴走してんだ。だから俺様が頭を冷やしてやろうとな。」
「それじゃあ、リュウ君が怪我しちゃうでしょ!」
さっきの発言的に、リュウ君はナイルちゃんに反撃する気が無かった。そもそもナイルちゃんのほうが強いのに。それじゃあ、怪我で済むかも分からない。
「わたしの事で争わないで、みんな。」
「でも、ハルちゃんの家族や友達は……」
「大丈夫!わたしの『家族や友達』は、今はもう、ここに居るみんなだから……!」
『大丈夫』……ではない。声が震えているのが自分でも感じ取れた。でも、『大丈夫』以外は本当!
「ラウネちゃんはわたしをひろい世界へ連れ出してくれた、そのことを忘れないで。わたしはすっごく感謝してるんだから。」
「……でも、私は彼らを救えなかった……。ハルちゃんが恨まなくても、彼らは私を恨むかもしれない……。」
「わたしの同族は、そんな事しない。絶対に!」
「……本当かな」
リュウ君が、ラウネちゃんの頭に手を置いた。
「大丈夫だろ。第一、呪い殺すなら人間の方だろ。それでもうちの可愛い大将を呪おうってんなら、俺様が相手になってやる。」
リュウ君って、怠惰なだけかと思ってたけど、めちゃくちゃ頼りになる。やる時はやるタイプなんだ!
「……ハル、お前なんだその目は。」
「あ、いや、なんでもない!リュウ君、いつもと印象違うなって!」
「あ……?お前、こんな時に何言ってんだ??」
「まぁ、ウチにはこういう時に役に立たないのが居るっすからね……。」
クロ君は魔王様の方を見た。魔王様は目を逸らした。リュウ君はクロ君の目線を追った後、ナイルちゃんの方を見た。
「……ごめん、あたしがこんなんなばっかりに。」
口調が戻ってる。ナイルちゃんも落ち着いたみたい。さっきのはほんとに怖かったよ、あの時わたしが正気だったら逃げ出してたと思う。
「とりあえず、もうすぐ、奴らが、罪を償う時が、来る。誰が、行く?」
「わたしは絶対行く!この手で報いを受けさせないと気が済まないよ!」
わたしは真っ先に名乗りを上げた。そもそもわたしが一番関係が深いし、『斥候』の役割を貰ってる以上、先陣を切るのはわたしじゃないといけない!
「あたしと邪龍は確定でしょ?徹底的に叩き潰すなら。」
「そうだろうな。って……邪龍だと?」
「あんたが駄目な龍じゃないってのは思い知らされたから、これからは邪龍って呼ぼうと思って。」
「おい、悪化してるじゃねーか!!」
そういえばわたしも『駄鳥』って呼ばれてたっけ……。わたし駝鳥じゃないもん……。鳥頭じゃないもん…………。
何はともあれ、このふたりがついてきてくれるなら百人力、いや、百魔物力?だね!百どころじゃないかも、万魔物力だ!
「今回は、ボクも、行こうかな。」
「え、ライム君も行くの?スライスにならない?」
「……スライスに、なっても、死なないし。現場で、司令塔、必要でしょ。パワー系、ふたりに、任せるのは、愚策。」
「ぐさ……ま、まぁ……確かにそうかも……。」
ライム君もついてきてくれるんだ、心強い。そもそも、スライスになるのはリュウ君かナイルちゃんが阻止するだろうし、心配はいらないと思う。っていうか、ライム君の戦闘能力ってどんなものなんだろう?なんか、勘だけど、わたしよりは全然強そう……。この中でいちばんの長寿だし。
「オレは……留守番っすかね。無いとは思うっすけど、皆が出払ってる間にここを急襲されたら、困るっすから。」
「……いや、クロも行くがよい。」
そのひとことで、全員の視線が魔王様に集まった。最初に会ったときからは考えられないほどの威厳を感じる!
「城の守りは我ひとりで十分だ。お前たちが心配する必要はない。」
「クソザコ魔王様が言ってくれるねぇ。ま、これでも魔王だからね、安心して、ミドリ君もあたし達と一緒に来なよ。」
「オレはミドリじゃなくてクロっすけど、まぁそう言うならオレも戦士として、戦いに赴くとするっす。」
……そういえば、ナイルちゃんはさっき話してる時に、クロ君のことを『ミドリ君』じゃなくて、『クロ君』と呼んでた。ってことは、いつもミドリ君って呼んでるのはわざとってことか……。
「さて、じゃあメンバーも決まった事だし、作戦でも考え……」
「ちょっと待て。」
魔王様が呟いた。
「……いいのか?ラウ姉さんは、行かなくて。」
その言葉を聞いて、みんながラウネちゃんの方を見た。
「え、ちょ、ラウネっちが来たら危ないって。」
「そうっすよ魔王様、ラウ姉さんを危険に晒すわけには行かないっす。」
「そうならないようにするのがお前達の仕事ではないのか?」
この言葉に、ナイルちゃんとクロ君は反論出来なかった。しばらくの沈黙が流れた。
「私は……行きたい」
ラウネちゃんは、声を絞り出した。目には涙が浮かんでいる。
「事の顛末を見届けなきゃ。私にはその責任があると思う」
「……無理はしなくていいのだが」
「わ……私は、行く。私は、役に立つよ。回復魔法だって使えるし、回復薬も作れるし……。」
……やっぱり、ラウネちゃんは戦いには向いてないと思う。わたしが初めて会ったときも、わたしの動きに反応したのはナイルちゃん。ラウネちゃんはたぶん、一対一で戦ったらわたしよりはるかに……。
「まぁ、貴重なヒーラーとして連れて行ってやれない事もないが。」
「そうだね、まぁ役には立つよ。あたしだって回復手段持ってないし……。」
……確かに、回復って意外と手段が限られちゃうんだよね。そもそも普通は、1回痛手を負ったらその時点で負けみたいなものだし。回復が必要なことにならないといいんだけどなぁ。
「決まりだな。我は出陣出来ぬが、お前達ならば問題あるまい。」
「今、分体が、調査に、向かってる。奴らの、痕跡を、辿ってる。この調子なら、今日中には、拠点を、発見できる。明日、早朝、奇襲をかけたい。」
「準備は早々に済ませようぜ。俺様は朝が弱いからな。もっと弱い女狐も居るが。」
「女狐言うな!邪龍め!」
魔王様が後ろを向いて、深く息をついたのをわたしは見た。わたしも緊張がほぐれた。きっと、なんとかなるって。みんなを見ていたら、そう思えてきた。
戦いが幕を開ける……。
第10話につづく!
tips:「アルラウネ」
魔物の一種で、主体は植物。植物の性質を持つ魔物はかなりレア。
基本的に植物であるので、種子から生まれる。加えてほぼ全てが女性の姿をとる。生物学的には両性の機能を備えているためそれでも繁殖は可能。
植物に関してはスペシャリストと言っても差し支えなく、種子さえ持っていればどんな植物でも自分の魔力を使いある程度成長させられる。
能力値は一般的な人間よりは少し強い程度。攻撃は特に不得手で、多くが回復や支援を得意とする。




