一石二鳥?いや、零鳥だよ!
前回のあらすじ!
わたしは悪い人間と戦うことになった!ナイルちゃんと一緒に!
「わたしだって……出来るんだから!」
たぶん、ナイルちゃんならひとりで人間4人くらい、余裕でボコボコに出来ちゃうと思う。でも、これはわたしが蒔いた種。わたしも一緒にけじめをつけなきゃ。
「……おーけー。ただし、殺さないようにね。もちろん、殺されないようにもして。」
「分かった!」
わたしは道端から、石何個かを足で掴み取り、翼を羽撃かせ空中へ。ここから石を飛ばして攻撃しようと思って。
人間のうち1人が、矢みたいなものを取り出した。弓はない。ってことは、魔法で飛ばす気なのかな?
「『狐雷』!」
ナイルちゃんの雷攻撃。人間の1人が持っていたナイフに命中して、その1人は地面へ倒れ込んだ。
「あ、やべ……。」
ナイルちゃん、もしかして1人殺しちゃった!?殺さないようにってナイルちゃんが言ったのに……。
わたしは、石を最大出力で飛ばしてみようと思った。あの虫はこれで爆発したし、人間にも効果はあるはず。
イメージ、イメージ。風魔法……。石を、飛ばせっ!
……え?
「ちょ、ハルっち、どう考えてもやりすぎだよ!まぁひとの事は言えないんだけどさ……。」
命中した人間の身体が半分近く吹き飛んだ。もちろん、それで生きてるわけもなく……。
「人間って……こんなに弱いの?」
「全部の人間がそうとは言わないけど、大体はそうだよ!そもそもこいつらは、ハルっちに毒を使おうとしたんだよ。そうでもしないとハルっちに、いや、普通のハーピィにも勝てないから。」
……そっか。人間って弱いんだ。確かに、あの虫を狩るだけならわたしならひとりで出来るのに、4人がかりで戦ってた。そうしないと勝てないからって、ことか。
「……まぁ、やっちゃったもんはしょうがないから、あとは基本的に攻撃なしで!」
「わ、分かった!」
「……っていうか、あとはもう時間を稼ぐ感じにして欲しい!」
「ん?そうなの?まぁ分かった!」
時間を稼ぐってどういうことだろう?時間が経ったら何かが起きるってこと?
まぁとりあえず、時間を稼ぐって言ったら風魔法の得意分野だと思う。たとえば足元に強風を当てて転ばせてみたりとか。
……っと、危ない。直感で羽根を硬化したら、矢がちょうど飛んできた。反動でちょっと体勢を崩されちゃったけど、ノーダメージ。やっぱりあれって、風魔法で飛ばしてるのかな?
「『空壁』。さぁ、あんたらの逃げ道はもうないけど、どうする?まだやる?」
ナイルちゃんが半透明な壁をドーム状に展開して、残った人間2人を囲い込んだ。あのー、そんな事が出来るなら、最初からそれでよかったのでは……?
「まだ諦めないの?」
人間たちは壁を内側から破ろうと、武器を使って叩いている。
「そんじょそこらの壁だったらそれで破れるかもしれないけど、あたしの言霊はその程度じゃ破れないよ。」
人間たちはおかまいなしで壁を叩き続けている。
「……無視かぁ。中に『狐火』を放ってやってもいいんだけど。そうしたら、壁の中はだんだんと熱くなってあんた達は苦しみながら死に絶える事に……」
ここでわたしはとある可能性に気付いた。
「ねぇナイルちゃん、中に声が聞こえてないんじゃない?現に、中から壁を叩く音も、声も全然聞こえてこないし。」
「え?」
壁を展開したナイルちゃんは全く気付いていなかったみたい。
「……確かに、そうかも。まぁそれはそれでいいか、壁が破れなければどうせ逃げられることはないし。」
ナイルちゃんは人間たちの背後に最初に展開した、火の壁を消した。人間たちはまだ脱出しようと頑張ってる。
「はぁ、どうせ無駄なのにね。精々、足掻くと良いさ。」
しばらくしたら、お城の方向からクロ君が走ってきた。クロ君、あの大きな体で足もけっこう速い。流石、ナイルちゃんに物理だけなら自分より強いと言わしめただけあるなぁ。
「……けっこう急いで来たっすけど、もう終わってるっすね……。そりゃあ、ナイル姉さんが居たら当然か……。」
クロ君には疲れた様子もほとんど見えない。このそこそこの距離を、地面を全力疾走してきたのに。わたしだったら飛べるからそんなに体力使わないけどさ。
「で、何があったんすか?『天火』を使うってことは非常事態だったんすよね?」
ナイルちゃんの使ったあの最初の言霊、爆発でみんなに連絡する為だったんだ!なんであんなすごいものを真上に撃ったのかと思ったら、そういうことか。
「こいつらが、ハルっちに毒を盛った。多分こいつらは、例のあの件にも関わってると思う。」
「毒……!?大丈夫なんすか、ハルさん!」
「え、わたしはなんともないけど……。」
「……どうして何ともないんだろうね。なんで耐性があるの?」
「うーん?わからんっ!いいじゃんわたし無事なんだし!」
何とかなったんだから、結果オーライでいいと思う。ただわたしには反省点があるけどね……。
「まぁそれはいいや、後でライム君にでも聞けばいいし。こいつら、あたしが来た時にも先に手を出さなかったってことは、あたしの事も狙ってたのかねぇ……。」
わたしにすら搦め手を使わないといけないのに、ナイルちゃんを……?見た目で判断すると痛い目を見るっていうあれか……。わたしもナイルちゃんの種族は聞いたことが無かったし、初見だったから分からなかったってのもありそう。
ふと見たら、いつの間にか人間たちは壁を叩くのをやめていた。というか、地面に倒れてる。
「こいつら運ぶの手伝ってよ、ミドリ君。下っ端だとしても、何かしらの情報は持ってると思うんだよね。」
「だから、オレはミドリじゃないっす。それはいいんすけど……」
クロ君は人間たちの方を指さした。
「この人間たち、もう死んでるっすよ。」
「は?」
「いや、ナイル姉は空気が無くても生きられるかもしれないっすけど、オレみたいな大抵の魔物や人間は、呼吸のための空気が無くなったら死ぬんすよ。この壁、隙間がないっすから、ずっと中に居たらそりゃあ……。」
「……マジか。」
つまり、人間たちは、壁を壊すのを諦めたんじゃなくて、空気が足りなくなって動けなくなった……?これはナイルちゃんも想定外だったみたい。
ナイルちゃんは『空壁』を解除した。そして頭を抱える。
「最悪だ、手掛かりになると思ったのに……。」
「ま、こいつらにはピッタリの最期だったと思うっすよ。それに、その件なら魔王様とライムさんがけっこう調査してくれてるんで、もうそろそろオレらの出番が来ると思うっす。」
「……どの件?」
わたしの知らないところで、何かが進んでいるの?わたしにも教えてくれてもいいのに。
「え、ナイル姉さん、ハルさんにまだ伝えてないんすか?」
「……うん。アレについては、ちょっとね……。あたしの裁量じゃあ、ね……。」
「ふーん。オレは馬鹿だから分からないっすけど、先延ばしにしても結果は変わらないと思うんすけどね。」
なんだか、疎外感。ナイルちゃんが隠してるのは、わたしに関する何かなのかな?今までも何度かはぐらかされてて、それが全部同じ件についてだとしたら。
「……ラウ姉か、魔王様がそのうち話すと思うから、ハルっちは待ってて。今は……ごめん。」
「うん、いいよ!気にはなるけど……知らないほうがいいなら。」
「……ごめん。」
なんだか暗い雰囲気になってしまった。雨がパラつき始めた。
「……帰ろう。まぁその前にこれを何とかしないとね。」
これとは、人間たちの死体のことだ。道が血で染まってしまっている。
「『青化』……。」
赤い血が、青い水に変化した。人間たちの死体もゆっくり崩れていった。
「うーん、この言霊は不完全だから、やっぱり使いづらいな。」
「不完全とかあるの?」
ナイルちゃんの言霊は、魔法とはまた別のものらしい。わたしには原理が分からないけど、ナイルちゃんの尻尾はたぶん言霊1個につき2本光ってる。
「言霊には制約があるからね。さっきの『天火』も不完全なやつだし、今のもホントは『浄化』とか『風化』にしたいんだけど、それが出来ないから、しょうがないから『青化』で我慢してるんだよね。ま、説明にも限界があるから、気になるなら魔王城の図書館で本を探すと良いと思う。」
「言霊って、わたしにも出来るのかな?」
魔法とは別の力、言霊。もしわたしにも使えたら、もっと役に立てるかも……。
「出来ないことはないと思うけど、出力はそんなに出ないよ。あとバリエーションも、ハルっちだと1パターンが限界かも。」
「うーん、そうなんだ。とりあえず今は諦めるかぁ……。」
まぁあれだけ強い能力をそう簡単に扱えるわけはないよね……。
「ま、とりあえずさ、今日の件は一件落着したってことで、帰ろうよ。みんな待ってる。」
「たぶん、この件は魔王様から人間の王にも伝わるはずっす。そのうち完全解決もすると思うっす。」
クロ君は隠し事が下手だなぁ。それって、今日のことはただの氷山の一角だって言ってるようなものだよ。
まぁ、それをわざわざ指摘する気はわたしには無いけど。だって、クロ君はわたしの事をおもって、大丈夫って声をかけてくれてるんでしょ?
「……そうだね、ラウネちゃんやみんなが待ってるはず!帰ろう!」
わたしが口を挟む必要はないっ!今は時を待つ!
わたし達はみんなの待ってるお城に帰る!朝ごはんが待っている!なにか大きな困難も迫っている……?
第9話につづく!
tips:「人間」
世界で最も繁栄している知的生命体。人間と区別するために『魔物』という言葉が生まれた。
能力値は全体的に貧弱だが知能が高く、またあらゆる環境に適応でき、繁殖力もそれなりに高い為数が多い。知略と数の攻めで戦うため雑魚と侮ってはいけない。
また、ごく稀に『勇者』など特殊個体が生まれる。特殊個体は非常に強力な能力値を持つ。




